1795167903
渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

Advertise on podcast: 渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

Categories
Country
United States
This podcast has
91 episodes
Language
Japanese
Explicit
No
Date created
2025/02/08
Latest episode
2026/10/11
Average duration
25 min.
Release period
7 days

Description

Audibleで数々の文学作品を朗読してきたナレーター 渡部龍朗(わたなべたつお) が、宮沢賢治作品の朗読全集の完成を目指し、一編ずつ心を込めてお届けするポッドキャスト。 ▼ 朗読音声とテキストがリアルタイムで同期する新体験オーディオブックアプリ「渡部龍朗の宮沢賢治朗読集」iOS版 / Android版 公開中 ▼ 【iOS】https://apps.apple.com/ja/app/id6746703721 【Android】https://play.google.com/store/apps/details?id=info.watasei.tatsuonomiyazawakenjiroudokushu 幻想的で美しい宮沢賢治の言葉を、耳で楽しむひとときを。 物語の息遣いを感じながら、声に乗せて広がる世界をお楽しみください。

Unlock 渡部龍朗の宮沢賢治朗読集 podcast Email contact info,
Listeners & Audience details

Email contact information

Direct podcast contact details

Listeners

Audience numbers & engagement insights

Audience details

Podcast Insights

Podcast episodes

Check latest episodes from 渡部龍朗の宮沢賢治朗読集 podcast


十六日
2026/10/11
📖『十六日』朗読 – 谷川の音と日の光にみちた、夫婦の盆の休み☀️🏞️ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『十六日』。 盆の十六日は、鉱山ではたらく嘉吉と、おみちの夫婦にとって、年に二日だけの休みの日です。おみちは朝のうちに、ごちそうをすっかりこしらえてしまいます。 嘉吉がそれを食べはじめたところへ、若い学生がひとり、ものをたずねにやって来ます。たずねられたことに答えるうちに、嘉吉は、おみちの見ている前で、もっと話をしてみせたくなります。そこで学生を引きとめて、いっしょに食べていくようにすすめます。 この一日を、夫婦は、子どもにかえったようにして過ごします。小屋の外には日の光がしずかに降り、谷川の音までが、きょうはたのしく聞こえます。 おみちは、嘉吉が親たちを説きふせてもらった娘で、いっしょになって三年になります。その顔は、ぱっと赤くなったり、ぼんやりしたりして、この日のうちに何べんも変わります。嘉吉は、その顔をじっと見ています。 盆の十六日、小屋に過ぎていく夫婦の一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #衝動 #方言
紫紺染について
2026/10/04
📖『紫紺染について』朗読 – 山男を待つ町の夕暮れと、酒のまわる九月の宴🌇🍶 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『紫紺染について』。 工芸学校の先生が、紫紺染のつくり方をさがしています。草の根をつかうこの古い染めものは、いちどすたれてしまい、もう知っている人がいないのです。むかしの記録を調べるうちに、先生は、紫紺の根を町へ売りに来て、酒を買って帰った山男のことを見つけます。 たずねられる相手は、もう山男のほかにいない。先生は町の人たちと相談して、山男に手紙を出し、食事の席に招くことにしました。九月の夕暮れ、みんなは、ほんとうに来てくれるのかどうかを案じながら待っています。 町の人たちと山男とが、ひと晩だけ、同じ食卓をかこみます。山男は、黄金いろの眼をした大きな男です。むかえる人たちがならんで頭を下げると、山男のほうでも、ていねいに礼を返します。 思いがけないもてなしを、山男はたいそうよろこんで、いくらでもお酒を呑みます。席はにぎやかになり、夜の更けるまでつづきます。 ひとつの染めものがよみがえるまでの、苦心のひとこま。山男をむかえた町の一夜を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #山男
台川
2026/09/27
📖『台川』朗読 – 水にゆれる光の網と、青葉の谷をさかのぼる明るい半日🌿✨ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『台川』。 生徒たちを引率して、釜淵まで行く朝です。さあ出かけましょうと声をかけても、まだ姿を見せない者がいます。もう二十分も待ったのだから仕方ない。来たい者だけを連れ、みちばたの草に腰をおろした校長を残して、おれは歩きだします。 乾いた粘土のみちの両側は、小松と若い林ばかりです。向うの崖に黒い岩が突き出ているのを見つけると、おれはさっそくそれがどうしてそこに在るのかを説明します。言いおわってから、かえって混ぜかえしただけだと思いなおし、言葉をあらためてもう一度云う。けれども生徒たちは黙って歩いているばかりでした。 坂がひどくなり、下の方で水の鳴る音がしはじめます。急な崖を木につかまって下りきっても、目あての瀑にはまだ届きません。おれは靴をぬぎ、水の中の石を動かして、みんなの渡れる足がかりをこさえてやることにしました。 生徒たちに向かって云う言葉のうしろでは、おれの独りごとがひとときも止まりません。いまの説明はどうだったか、云わずにおけばよかったのではないか。この石は何というのかと方言で問いかけてくる声も、そこへまぎれこんできます。 水の中を歩いていくと、足もとでは日の光が網になってゆれつづけています。それは歩きだしたときから、木の間にも生徒たちの足なみにも、おなじようにゆれていたものです。鉄槌を大きく振って川をあるくのは、もう何年ぶりかわかりません。 青葉の谷を水づたいにさかのぼる、引率の教師の半日を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #少年 #方言
車
2026/09/20
📖『車』朗読 – 松脂かおる松林の道と、木洩れ日ゆれる夏の一日🌲☀️ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『車』。 籠を頭にのせて町角に立っていたハーシュは、その日の午前中、仕事にありつけずにいました。弁当を食べはじめたところへ赤い髭の男がせかせかとやって来て、兵営の普請に使うテレピン油を工場まで取りに行ってくれと頼みます。渡された名刺と、よぼよぼの車を引いて、ハーシュは道を歩きだします。 楊の並木を過ぎ、白い杭のところで道を折れると、松脂の匂いのする松林にさしかかります。そこで水色の服を着た小さな男の子に呼びとめられ、車に乗せてほしいとせがまれます。乗せてやると、車はがたがたと揺れ、狭くなっていく道をハーシュはゆっくりと引いていきます。 そのうちに車輪のくさびが一本ぬけているのに気づき、ハーシュは近くの百姓家で縄を借りようとしますが、おかみさんにきつく断られてしまいます。腹を立てるのはもっともだと思い直したハーシュは、来た道を戻ってくさびを探しあて、車をなおして再び歩きだします。小さな川を渡ると、まもなく松林のはずれにテレピン油の工場が見えてきます。 仕事のなかった朝のうめ合わせに、こんなにも愉快な道のりが待っていようとは、ハーシュ自身思いもよらないことでした。 松の香りと木洩れ日に満ちた、ひとりの男とひとりの子どもの小さな旅を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #兵隊 #冒険
氷と後光
2026/09/13
📖『氷と後光』朗読 – 雪と月あかりを走る夜汽車と、氷にきらめく朝の光🌙❄️ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『氷と後光』。 雪と月に照らされた夜の中を、汽車が北へと進んでいきます。赤い頭巾をかぶった幼い子どもは毛布にくるまれ、窓ぎわでぐっすりと眠ったまま。網棚に積まれたりんごの香りが車室いっぱいに満ちるなか、若い父と母は、山の上に見える白いものが雲か凍った雪煙かと言葉を交わしながら、次々に流れていく電信柱を眺めています。夜中を過ぎるころ、車室を暖めていたスティームが急に止まって冷えこみ、窓は氷でくもります。父と母は風邪をひかせまいと子どもに毛布を着せなおし、汽車が峠の頂上を越えて下りにかかると、明かりも暖かさももとに戻って、二人はまどろみながらかわるがわる子どもの寝顔をのぞきこみます。 夜が明けるころ盛岡に着くと、霜で真っ白になった毛皮や襟巻をまとった人たちが乗りこんできます。窓にはらんの葉のような形の氷の結晶がびっしりと広がり、そのすきまから東の空にほのかな琥珀色がのぞきはじめます。目を覚ました子どもに母が乳をふくませるころには、車室のまわりはしだいに明るさを増していきます。 氷にとざされた車室の中を、汽車はゆっくりと夜から朝へ運ばれていきます。窓をおおう氷の色も車内の温度も、そのつど移り変わっていきます。 そのあいだ、父と母はただ静かに子どものそばに寄り添いつづけます。眠っては目を覚ます子どもをはさんで過ごす、汽車の中だけの時間です。 氷の結晶にいろどられた夜汽車の一夜を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #鉄道 #月 #柱
二人の役人
2026/09/06
📖『二人の役人』朗読 – 萱の穂の光る九月の野原と、きのこをさがす日曜の朝🌾🍄 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『二人の役人』。 九月の野原は、草の穂と小さな林とでいっぱいでした。私は藤原慶次郎といっしょに、毎日そこへきのこや栗をとりに出かけます。ある日曜の朝、いつもの入口まで来ると、白い立札が一本立っていて、きょうはえらい人が来るから中へ入ってはいけない、と書いてありました。 それでも二人は、そのえらい人の顔を見てやろうと、野原でいちばん奇麗な林まで走って行き、草のなかにかくれます。待っていても人の来る気配はなく、こわさはいつのまにか薄れて、二人はきのこをさがしはじめました。そこへ慶次郎が耳もとで、来たよ、と云うのです。草の間からすかして見ると、二人の役人が、みちを外れてこちらへまっすぐ近づいて来るところでした。 つかまるものと覚悟した二人は、とったきのこをそっと棄てます。ところが役人たちは、子どもらのいることに気づきもしないで林の前に立ちどまり、かかえてきた袋の口を解きはじめるのでした。 草のなかにひそんでいるあいだ、聞こえてくるのは大人たちの声ばかりです。息もつまるようだった時間は、その声とともにだんだんほどけていきます。はんのきの下には日ざしが点々と落ちて、九月の光はどこまでも明るいのです。 いまその野原は、畑や練兵場になっています。それよりもっと立派だったころの、青い萱と栗の木の林にみたされた九月の一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #少年 #冒険
耕耘部の時計
2026/08/30
📖『耕耘部の時計』朗読 – 雪あかりの白い農夫室と、暮れて雪になる冬の一日❄️✨ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『耕耘部の時計』。 雪の照りかえしで白びかりのいっぱいな、冬の農場の農夫室。まん中の大きな釜からは湯気が盛んにたち、農夫たちは脚絆を巻いたり藁沓をはいたり、はたらきに出る支度をしています。そこへ俄かに戸があいて、赤い毛布でこさえたシャツを着た若い男が、きょうからこちらで働くようにと云われて参りましたと告げてはいって来ました。みんなの仕度ができるのを待つあいだ、男はふと、室の正面にかかった円い柱時計を見あげます。青じろくてつるつる光る、どこでも見たことのないような盤面です。 自分の腕時計とくらべて、あいつは十五分進んでいるな、と男が竜頭を引いて針を直そうとしたとき、そばで見ていた子供の百姓がくすりと笑いました。するとどう云うわけかみんなも一斉に、その青じろい美しい盤面を見あげながら、どっと笑ったのです。玉蜀黍の脱穀がひとくぎりついた昼どきにも、午の食事がすんだあとにも、男はこっそり自分の腕時計に目を落とします。時計はそのたびにちがう顔をしていて、そのたびに、農夫室には気のよさそうな笑い声が起こるのでした。 窓ガラスの向うでは、うるんだ白い雲が、額もかっと痛いようなまっ青なそらをあてなく流れていきます。炉を囲んで、郷里はどこだ、いつまでこっちに居るつもりだい、と低いやりとりがつづき、今夜は一尺は積るな、帝釈の湯でまた熊が捕れたそうだ、と話は移っていきます。雪を渡ってカランカランと鐘の音がとどけば、そりを牽いて来た馬が、きれいに歩調を踏んで厩の方へ歩き出すのです。 日暮れからはすっかり雪になりました。農夫室には電燈が明るく点き、火はまっ赤に熾って、外ではちらちらと雪が降っています。停車場まで酒を呑みに出掛けた人たちも、もう行くのはやめたろうと思われるような降りかたです。 湯気と炭火と、降りつむ雪。冬の農場に過ぎていく一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #柱
さいかち淵
2026/08/23
📖『さいかち淵』朗読 – ぎらぎら光る河原と、川に明け暮れる夏休みの眩しい日々☀️🌊 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『さいかち淵』。 夏のあいだ、村の子どもらは毎日のようにさいかち淵へ通います。「ぼく」と、いちばん仲のいいしゅっこも、きょうもいっしょに出かけて行きました。河原は白く焼けて、木も草も日ざしにぐったりし、淵の水だけが深くつめたく澱んでいます。そこへ、発破をかけて魚をとる大人たちがやって来ました。真先に気づいたしゅっこは、みんなを下流へさがらせて、何も知らないふりをして遊んでいろと云いつけます。やがて川の底から重い音がひびいて、淵の水がもちあがりました。 魚を囲っておいたところへ、見なれない身なりの人が通りかかります。子どもらの魚をかきまわし、そのまま浅瀬を行ったり来たりしてなかなか去らないので、木の上にならんだ子どもらは、しゅっこの合図で声をそろえて文句を云いました。その人は困ったような顔をして、崖をのぼって畑のほうへ消えてしまいます。あとには、なんだか気の毒なような、がらんとした心もちが残りました。 次の日、しゅっこは、もっといいことをして見せると云って、小さな子どもらまで残らずさそって歩きます。蝉の声のふりしきる林を抜け、匂いのむっとする河原を通って、みんなで淵へ急ぐ。東の空には雲の峰が高く湧きあがり、遠くの山がぎらぎら青く光っていました。しゅっこの手には、紙に包んだ青い石があります。それを卑怯だと思った「ぼく」は、そのさそいには乗りませんでした。 川べりは、いつもこどもらの声でいっぱいです。呼び名も、はやし立てる声も、水音と日ざしのなかに混ざって、どこまでも眩しい。日が高くなるほど石は焼けて、水はいよいよ冷たく、そのまん中には、底の知れない淵がしずかにたたえられているのです。 光る河原と、まっ青な空と、深い水。さいかち淵で過ごされた八月の二日を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #少年 #冒険
茨海小学校
2026/08/16
📖『茨海小学校』朗読 – 野ばらの垣根のむこうで、午后の課業がはじまります🌾🦊 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『茨海小学校』。 私が茨海の野原へ行ったのは、手頃な火山弾の標本を採るためと、あそこに野生の浜茄が生えているという噂を確かめるためでした。浜茄はとうとう見附からず、きらきらの白いうろこ雲で一杯の空の下、そろそろパンを食べてしまおうと立ちどまったとき、ずうっと向うの方でベルの鳴る音が聞えてきます。この野原に学校なんかあるわけはない。それでも、子供らのがやがや云う声は、風のたびにはっきりして来たり遠くなったりしながら、たしかに届いてくるのです。 たまらなくなって走り出した私は、草にからまってどたっと倒れ、白や茶いろの狐の子どもらにわあわあはやされます。やがて黒のフロックを着た先生がしずかにやって来て、ご参観でいらっしゃいますか、と尋ねる。垣根だとばかり思っていた野ばらは玄関で、その奥には、屋根と窓のないほかは私たちの小学校とすっかり同じ校舎が、ばらの木でしきられて続いているのです。 案内されるのは、午后の三時間です。修身と護身、狩猟術、食品化学。黒板に書きつけられる格言、ガラス戸棚から運ばれてくる標本、数字のそろった分析表。狐の生徒たちは白い机にきちんとこしかけ、耳を尖らせて聞き、一斉にペンをとって書きとります。 狐たちはどこまでも丁寧です。玄関では叮寧な口上があり、校長室では紅茶が出て、ふいの客はきちんともてなされます。屋根のない室の上を白い雲が光って過ぎて行くなかで、ひとつの学校が行儀よく成り立っているのです。 白いうろこ雲の下にひろがる、茨とすすきの一杯生えた野原。そこで過ごしたひるすぎのひとときを、朗読でじっくりとお楽しみください。 #狐 #人と動物
花壇工作
2026/08/09
📖『花壇工作』朗読 – 病院の中庭に、花で音楽を描くつもりでした🌷📐 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『花壇工作』。 おれは設計図を持たず、仕事着のまま病院の中庭へ出かけて行きます。二つの棟にはさまれた緑いろの庭にテープを持って立っていると、そこにいた人たちが面白がって手伝いに来て、まっ白な杭がたちまちできあがります。窓のむこうには見物の顔がならびました。おれには自分の創造力に充分な自信があります。音楽を図形に直すのは自由なのだから、この庭に花で Beethoven の Fantasy を描くこともできる。そう考えていたのです。 建物の影の落ちる限界を屋根まで見上げて計り、庭に二本の対角線を引かせて、その中心に杭を一本立てたところで、窓に院長が立ちます。どんな花を植えるのですか。花の名をいくつか答えるうちに、院長はとうとうこらえ兼ねて、靴をはいて中庭へ下りて来るのでした。 おれの胸のうちには、まだ地面に置かれていない模様があります。日がまわるたびに青く移る、練瓦のジグザグな影。けれども中庭をとりかこむ窓には、たくさんの顔がならんでいるのです。 四月の光の落ちる、緑いろの中庭。ひとりの園芸家のたった数時間を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #芸術 #怒り
サガレンと八月
2026/08/02
📖『サガレンと八月』朗読 – 北の海の風と波が、しきりに何かを訊いてくる🌊🐚 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『サガレンと八月』。 オホーツク海のなぎさに立つ「私」に、西の山地から吹いて来たまだ少しつめたい風が、「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの」と、上着をぱたぱたかすめながら何べんも通って行きます。標本を集めに来たんだいと威張って答えてみても、その風はもう海の青い暗い波の上に行っていて、こちらの返事は一語ずつ切れ切れに持って行かれてしまうのです。やがて波までが音を強くして、拾ったばかりの貝殻のことで「私」に食ってかかってきます。 話はいつのまにか、前の草はらで鮭の皮を継ぎ合せて上着をこさえるおっかさんと、指をくわえてはだしで小屋を出るタネリのところへ移ります。浜に落ちている寒天みたいなすきとおったものを拾ってはいけない、それで物をすかして見てはいけない。おっかさんはそう言いふくめますが、渚に下りたタネリは、それをつまみ上げて、すかして見たくてたまらなくなってしまうのです。 なぎさで聴いたことが、しっかりしたつかまえどこのあるものなのか、それとも風や波といっしょに次から次と移って消えて行くものなのか、「私」にはわかりません。ただ、そこにある風や草穂のいい性質が聴く人のこころにうつって見えたなら、どんなにうれしいかしれません。 乾いて飛んで来る砂と、はまなすのいい匂い。孔雀石いろと暗い藍いろに縞になった海。北の島の八月のなぎさに吹く、風のきれぎれのものがたりを、朗読でじっくりとお楽しみください。 #冒険 #衝動 #少年
林の底
2026/07/26
📖『林の底』朗読 – はじめ鳥はみな白かった、月夜に梟が語る色のはなし🌙🦉 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『林の底』。 風もないしずかな晩、西のそらに古びた黄金の鎌がかかるころ、林の中の低い松の枝から、一羽のとしよりの梟が「私」に話しかけてきます。鳥の先祖が天から降って来たときは、どいつもこいつもみな白かったのだ、と。ところが「私」は、いつも頬をふくらせて尤もらしい顔をする梟を、あまり信用していません。この用のない晩に、大きな梟がどんなことを云い出すか、ぼろを出さずに辻褄をあわせて語れるものかどうか、なるべくまじめな顔でゆっくり聴いてみることにします。 みな白かった鳥たちは、うしろから声をかけても振り向くのが別の鳥だったりして、ずいぶん間ちがいが多かったのだそうです。そこで手の長いとんびが、川岸の赤土の崖の下に染屋を出しました。鳥たちはよろこんで、大きいのも小さいのも、めいめい注文をつけては染めて貰いに出掛けて行きます。どうしてめじろは眼のまわりが、頬白は両方の頬が、白いまま残っているのか。「肺が小さくて息がつづかないからです」と大まじめに説く梟に、「私」は、両方おなじ形におなじ場所に残っているのは工合がよすぎるではないか、と口をはさみます。すると梟はしばらく眼をつむり、また別の理くつをひねり出すのです。 とぼけた聞き手と、機嫌をよくしたり悪くしたりしながら語りつづける梟。話に調子を合わせたかと思えば、ふと心を別のことへ遊ばせる「私」。鉛のように重く青い月光に満ちた月夜の林で、二人のかわすふしぎな問答を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #人と動物 #月
蜘蛛となめくじと狸
2026/07/19
📖『蜘蛛となめくじと狸』朗読 – 立派な選手だった三人の、それはそれは本気の競争🕷️🐌🦝 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『蜘蛛となめくじと狸』。 蜘蛛と、銀色のなめくじと、それから顔を洗ったことのない狸。三人はみんな立派な選手で、それはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。けれども、一体何の競争だったのか、語り手の「私」はよく知りません。胸に「ナンペ」と書いた蜘蛛文字のマーク、銀いろのゴムの靴、少しこわれた運動シャッポ。そんな三人の伝記が、ひとりずつ順にひもとかれていきます。 ある晩ふっと風に飛ばされて、森の入口の楢の木にひっかかった赤い手長の蜘蛛は、ひもじいのを我慢して「うんとこせうんとこせ」と、二銭銅貨位の小さな網をかけはじめます。銀色のなめくじは、林の中では一番親切だという評判で、立派なおうちを訪ねてくるものに「あなたと私とは云わば兄弟。ハッハハ」と、ふきのつゆやたべ物をふるまいます。そして顔をわざと洗わない狸は、きもののえりを掻き合せて、「なまねこ、なまねこ」と山猫大明神へのありがたい念猫をとなえています。 かげろうが哀れな声で歌う遺言のうた、「もう一ぺんやりましょう。ハッハハ。」とくりかえされる相撲、ポンポコポンポンとひびくはらつづみ。訪ねてくる小さなものたちとのやりとりを重ねながら、三人はそれぞれのやり方で、だんだん大きく立派になっていきます。そして楢の木の上の蜘蛛のところへは、時おり下の方から、へらへらした声や太い声で、からかいの歌が聞えてくるのです。 とぼけた語り手の口ぶりと、ふしぎな歌と、ハッハハという笑い声。にぎやかな声にみちた三人の選手の伝記を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #動物が主人公 #伝記 #蛙
洞熊学校を卒業した三人
2026/07/12
📖『洞熊学校を卒業した三人』朗読 – いちばん大きく、いちばんえらく🕷️🐌🦝 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『洞熊学校を卒業した三人』。 赤い手の長い蜘蛛と、銀いろのなめくぢと、顔を洗ったことのない狸。この三人がいっしょに洞熊学校にはいり、洞熊先生のもとで学びます。そこで教わったのは、大きいものがいちばん立派だということ。三人はみんな一番になろうと競い合い、やがて学校を卒業して、それぞれ自分のうちへ帰っていきます。 表向きは仲よさそうに見えても、腹のなかで思うのは「これから誰がいちばん大きくえらくなるか」ということばかり。かたくりの花が咲き、眼の碧い蜂たちがぶんぶんと飛び交う春の入口に、三人それぞれの暮らしが始まります。森の入口に網をかける蜘蛛、林中で評判の高いなめくぢ、お寺でありがたいお経をとなえる狸。習ったことを「じぶんでほんたうにやる」ために、三人はそれぞれのやり方で、自分より小さなものたちと向き合っていきます。 訪ねてくるかげろうやかたつむり、兎とのやりとり。そのひとつひとつを重ねながら、「いまに見ろ」と大きくなることを目指す三人。ハッハハと笑う声、なまねこととなえる声——それぞれの声色のなかに、一番になろうとするものたちの姿が立ちのぼります。 春から夏、秋、そして冬へ。物語の折々には、眼の碧い蜂の群れがあらわれ、かたくり、つめくさ、蕎麦の花から蜜を集め、六角形の巣を築いています。競い合う三人のかたわらで、季節は静かにめぐっていきます。移りゆく野原の情景とともに紡がれるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #蛙 #動物が主人公
マリヴロンと少女
2026/07/05
📖『マリヴロンと少女』朗読 – 秋の城あとにかかる虹と、才ある人へ捧げるおもい🌈🎼 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『マリヴロンと少女』。 秋も深まった城あとに、銀のすすきの穂が一面に風で波立っています。まん中の小さな山の上には、めくらぶどうのやぶが実をつけ、そのそばで、ひとりの少女が楽譜をもってためいきをつきながら草にすわっています。かすかな日照り雨が降っては霽れ、草はきらきらと光り、もずが銀のすすきの穂に一度にとまります。やがて東の山脈の上を風が通り、大きな虹が、明るい夢の橋のようにやさしく空へあらわれます。 そこへ、今夜市庁のホールでうたうというマリヴロン女史が、ライラックいろのもすそをひいて、みんなをのがれてやって来ます。少女は化石のようにすわったまま、この天の才ある人へ、ただ一言でも自分のおもいを伝えたいと願います。やがて、透きとおる声もどこかへ行って、しわがれた声を風に半分とられながら、少女はマリヴロンに呼びかけます。 どうか私の尊敬を受けとってほしい、あなたがもっと立派におなりになる為なら私は百ぺんでも死にます——そう訴える少女に、マリヴロンは静かにことばを返します。正しく清くはたらくひとは、時間のうしろにひとつの世界をつくるのだと。青いそらをとんでゆく一羽の鵠が、うしろにそのあとをもつように。 秋の城あとの風景と、そこに立ちのぼる一すじの虹。楽譜をもった少女と、うたい手であるマリヴロンとが、みじかいひとときだけことばをかわします。銀のすすき、めくらぶどうの雫、東へ飛び立つもず、空にかかる虹。詩的な情景のなかで、ふたりの声が静かに響きあいます。 秋の光と虹に満ちた城あとのひととき。少女とマリヴロンのみじかい対話を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #鼠 #芸術 #衝動

Podcast reviews

Read 渡部龍朗の宮沢賢治朗読集 podcast reviews


0 out of 5
0 reviews

Podcast sponsorship advertising

Start advertising on 渡部龍朗の宮沢賢治朗読集 relevant audience podcasts


What do you want to promote?