1632577245
復職名人が読む三手先

Advertise on podcast: 復職名人が読む三手先

This podcast has
100 episodes
Language
Japanese
Publisher
Centro Salute
Explicit
No
Date created
2022/07/01
Latest episode
2026/09/14
Average duration
65 min.
Release period
14 days

Description

この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

Unlock 復職名人が読む三手先 podcast Email contact info,
Listeners & Audience details

Email contact information

Direct podcast contact details

Listeners

Audience numbers & engagement insights

Audience details

Podcast Insights

Podcast episodes

Check latest episodes from 復職名人が読む三手先 podcast


第108回|健診受診100%達成に向けて
2026/09/14
今回はいつもの休復職者対応から少し離れ、「健診受診割合100%達成」をテーマに議論しました。 告知 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:久々のアルファロメオネタ 前園:天神に新規オープンしたジュンク堂書店 森:乗鞍ヒルクライムは中止となりました。残念 議論した内容 チャットグループを使った受診勧奨のアイデア 健診時期にLINEやChatworkで10〜20人規模の「健診受診完了グループ」を作り、受診(または予約完了)した人から抜けていく仕組み。督促役の課長は残り続け、残った人にだけ「早く受診してね」を繰り返せばよい。 特定個人を名指しせず集団に向けて言えるため督促する側の心理的負担が下がり、受けていない人をまとめて管理できるため管理側も楽になる。最後に自分一人が残る「見られている感」が受診の後押しになるという両面の効果。 一人だけ残ると名指しと同じになるため、上司の上司や人事が順次グループに加わっていく、あるいは減ってきたグループ同士を合体させて常に10人以上残す、といった発展案も出た。 課単位で100%達成したらインセンティブを付ける正の動機付け案は、未受診者への同僚からの圧力を生むためかえって危ういと発案者自ら撤回する場面も。 是が非でも受けない人は健診以外の業務でも問題を抱えている可能性が高く、他の場面で適切に処置すべきという見方と、こうした小さな逸脱を見逃さないことがモンスター化を防ぐという見方の両方が成り立つ。事案のステージの早い遅いで使い分ける整理となった。 「割合」と「率」 連載原稿のタイトルが「受診率」ではなく「受診割合」である理由の解説。疫学で「率(rate)」は罹患率・死亡率のように分母に時間を含む発生の速度を指し、「割合(proportion)」は分子が分母に含まれる指標(受診割合・喫煙割合など)を指す。 「比率」という言葉は、専門用語である「率比(rate ratio)」と紛らわしく、どの指標も指さないため使わない方がよい。職場で扱う指標のほとんどは割合であり、迷ったら割合と言っておけばほぼ間違いない。 受診命令をめぐる判例と受診義務の射程 健診受診に関する判例は、電電公社帯広局事件と愛知県教育委員会事件くらいしか見当たらないという整理。帯広は頸肩腕症候群をめぐる受診命令の事案で、労働組合運動と絡んだかなり特殊な事案。 愛知県教委事件は一般定期健康診断だが、教職員の健診は学校保健法制・健康増進法系の根拠を持ち、健診を権利的に捉える書きぶりになっているため、通常の企業における健診のイメージとはやや異なるという指摘。 受診義務は労働者を罰するために課されているわけではなく、拒否にどう及ぶかは難しい。正当な理由(妊娠の可能性によるX線検査拒否など)があれば個別項目の拒否で済む話でもある。 同意書と過失相殺当たり屋事案からの類推 未受診を見過ごした労働者が倒れた場合に、過保護的な安全配慮義務の文脈で会社が問われる懸念が残る。対応として、労使協議によるローカルルールや、「自己健康管理を行い健診は受けない」旨の署名を本人に求める案を議論。同意書が有効と認められなくても、過失相殺の材料としては1〜2割は確実に働き、より大きく取ってほしいという期待。 故意に事故を起こす当たり屋事案では過失や因果関係を否定して請求棄却となることからの類推で、「わざと受けない」ケースの整理を試みた。過失相殺が5割を超えるような場合はそもそも因果関係なしとして請求棄却という考え方が語られる一方、実務上は7〜8割の過失相殺例もあり、最後はバランスの取り方の問題。 遺族側からは「真摯な同意ではない」「死ぬことまで同意していない」という主張が当然あり得るという労働者側視点の切り返しも。AI音声動画で最悪の事象まで含めて事前説明しておくという対応案につながった。 コストの偏在と制度の根本矛盾 難渋事例には会社側複数名と産業医が膨大な時間とコストを投じており、その負担は結局、素直に従っている他の労働者に転嫁されているという構造の指摘。医療費で上位1%が全体の約2割を使う構図を職場に持ち込むと、健診を受けない上位1%に産業保健リソースの8〜9割が割かれる逆転が起きており、適正化が必要。 保険でカバーする案はモラルハザードと保険料高騰で成り立ちにくい。受診者に健康増進手当を出す正のインセンティブ案は、99%が受診している健診なら不利益変更にもならず意外と実現しやすいかもしれないが、金額設定が難しい。 健診事後措置の問題が扱いにくいのは、プライバシーを守りたい労働者の立場と、過保護であっても健康管理を行わなければならない会社の立場という、制度の根底にある矛盾した2つの思想に起因する構造的問題であり、表層的な手当てでは細かい問題はなくならない。 編集後記 高尾 「率」はぜひこだわってみてください。 日本語の日常用語での「**率」はほとんど割合です。 一方で、人口動態統計に出てくる人口10万あたりの 年間発生数は、正真正銘「罹患率」であって、 ちゃんと分母が10万人(x年)になってるんですね。 死亡率は本当に、発生の速さとしての「率」の場合もありますが、 一定期間の死亡「risk(リスク)」の場合もありますのでご注意を。 まずまず、わかりやすい解説は以下 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58299?site=nli 前園 中小書店だけでなく巨大書店もどんどん減っている現状を憂いています。 大きな本屋さんは、そこにあるだけで地域の文化レベルを上げると勝手に考えていますし、 自分のように、本屋に行くだけで賢くなった気がなれる人材には不可欠な存在なのです。 リスナーにもそういう方がいらっしゃるかと思います。 そんなあなたには、「ちょっと本屋に行ってくる」をおすすめします。 https://issuance.official.ec/items/61656295 森 健診受診そのものに意味があるとは考えていないものの、一方で義務ではあるので、ストレスチェックと違って、無視するというわけにはいきません。 そのため、いかに労力をかけずに義務を履行するのか、そうした観点から施策を検討している、という背景をご理解いただけたらと思います。
第107回|休職「残ゼロ」問題と安全配慮義務
2026/09/01
今回は、近く予定している安西法律事務所への訪問に向けて、安西先生に聞きたい論点を整理しました。休職期間の通算規定における「残ゼロ」問題と、産業保健サービスの提供が安全配慮義務の履行としてどう評価されるかという2つの大きなテーマについて議論しています。 告知 【9月26日・27日開催の産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:両立支援シミュレーター 前園:634購入しました 森:自転車チェーンの洗浄方法 議論した内容 休職通算規定の「残ゼロ」問題 休職期間満了の翌日に復職した労働者がすぐに再度休み始め、会社が通算規定を適用して自動退職扱いとしたところ、裁判で会社側が敗訴した事例を紹介。 当該会社の就業規則は「休職期間中に復帰した者が再休職した場合」と枕詞を付けていたため、期間満了後に復帰したケースへの類推適用は相当でないと判断された。 背景には、労働者に不利益な処分をするには明文の根拠が必要という、罪刑法定主義に近い法曹界の発想があるという指摘。文言の間を繋いで不利益な扱いをするなら、直接適用できる規定を作っておくべきという発想になる。 通算規定の一般的な書きぶりでは残ゼロのケースが読み込めない可能性はかねて指摘してきた論点であり、残日数ゼロで復職する者の扱いを就業規則に明記した方がよいという結論。 残ゼロ事案は「三段論法」ではなく普通解雇で正面から 残ゼロの状態で休職を命じ、通算規定を適用して自然退職とする組み立ては、実質的に普通解雇を回避する三段論法であり危険という認識。 実際にその事案になれば、休職期間を最大限使って解雇回避努力をした事実を踏まえ、職務遂行が果たされていないことを理由に堂々と普通解雇で臨むべきという整理。自己都合退職の猶予を与えるなら公明正大に行えばよい。 公務員では分限免職の枠組みに相当する話であり、休職開始時点から分限制度全体をニュートラルに説明しておくことが有効。制度説明はAI動画にして全員へ公平に示せば、退職誘導と言われるリスクも減らせるという提案。 分限への理解が浅く、指定医を含む2名の診断書の必要性が伝わらない事案が頻発しているという経験談も共有された。 安全配慮義務と産業保健サービスの位置づけ 医療的アプローチを先行させ労務管理が後手に回ると、予見可能性を高めながら対応が遅れる構図になり、裁判上も致命的になり得るという整理。 一方、弁護士側には「ここまでやっておけば大丈夫」という経験則があり、産業保健サービスの積み上げを一定程度評価する感覚があるのではないかという仮説。医療的アプローチが過失相殺の事由として大きく認められれば、実質的に会社側主張が認められたに等しいケースもある。 産業医への「丸投げ」と、法人として判断した上で正式に業務依頼する形との違いが重要。事例性の改善は会社が然るべき職制を通じて要請しつつ、疾病性の改善を専門家へ費用をかけて正式に注文する形なら、義務を履行せんとする態度として評価され得る。 プランAが駄目ならプランB・Cまでを想定した依頼と費用の支払いを行うなど、判断を委ねず法人側が握る立て付けが鍵という結論。 安西先生への質問テーマの整理 訪問時の優先順位はまずAI音声動画を見てもらい率直な感想を聞くこと。療養開始説明などの実例を共有する予定。 残ゼロ問題は司法判断がどう予想されるかという形で、経験豊富な先生方の見解を聞きたい。 安全配慮義務については、サービスの提供がなぜ義務の履行の一部に転換し得るのか、その要件を掘り下げたい。 両立支援の現状への危機感(主治医マニュアルを含む)についても所感を伺いたい。制度の出始めに研究ベースで関わった医師から、現在の運用には労使の軋轢を生む懸念があるとの意見が出ているという話も紹介された。 編集後記 高尾 医療的健康管理は、結果が悪ければ、安全配慮義務の履行としてはまったく評価されないのか。 それとも、一定の要件を満たすよう、あらかじめ前提を置いた医療的健康管理(産業医や保健職の本人に寄り添った対応)であれば、安全配慮義務の履行の一部、としては評価されうるのか。 非常に興味深い視点です。 前園 軽いは正義といいますが、634の軽さは異様です。 「モックかと思う」という口コミは嘘ではありませんでした。 Macとの棲み分けについてはこれから向き合ってまいります。 森 新品チェーンをしっかりと洗浄してまで臨んだ、乗鞍ヒルクライムですが、雨のため中止となりました・・・ 詳しいことは、次回の近況報告でお話ししたいと思います。
第106回|裁判例の読み方・考え方の続き/両立支援カード
2026/08/05
9月に開催予定の産業医生涯研修会に向けた、2つのテーマの最終打ち合わせとして、前半は第104回で取り上げた「産業医実務に生かす裁判例の読み方・考え方」の検討、後半は両立支援カードについて検討しました。 告知 【9月26日・27日開催の産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:北海道の苫小牧市を訪問。市長公約の項目にメソッドに基づく復職プログラムの導入が盛り込まれていました。 前園:福岡を訪れた知人と、行きつけのもつ鍋店へ行きました。反省したはずなのに・・・https://fukushoku-meijin.com/podcast/sp-2025-02/ 森:深部体温を推定するセンサーを購入し、暑熱順化トレーニングを開始しました。 議論した内容 研修テーマ①「裁判例の読み方・考え方」をどう組み立てるか 第104回|産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方 タイトルは「産業医実務に生かせる裁判例」ではなく「裁判例の読み方・考え方」。論点ごとに裁判例を並べる構成とは意味合いが大きく異なり、ミスリーディングになりかねない。 論点別の裁判例紹介は労働判例誌や労働新聞で足りるとして、判決文そのものの構造を扱う方向で合意。原告・被告それぞれの主張欄を読むことで、会社が認識していた実態が見えてくるという読み方を紹介する。 教材候補として、直近で話題になった任天堂の事件を提示。産業保健職も邪険に扱われることがある立場から、我が事として読める題材になるという評価。ニュートラルに読める点も適している。 もう1つの候補は、NTT東日本の事件(復職過程での作業により体調を崩した事案)。「どうせ負けるのだから王道を行け」というメッセージの題材として適する。争点が多く、抜粋して実際に読んでみる形式が想定される。 綜企画設計事件も候補。所定時間の業務ができなければ時間外の業務も成り立たないはずが、やらせていない以上できないとは言い切れないという判断など、感覚とのズレがある。 「どうせ負ける」から何を引き出すか 産業医に丸投げする対応は負け筋になる。産業医は選択肢を提示するだけであり、法人が何もしていないという評価につながる。 常識論・救済的発想で対応すると後から断罪され、産業医が安請け合いをしても訴訟では負けにくいという、ねじれた構造がある。 結論として「これさえすればよい」という短絡的な答えは示さない。事案が違えば結論も変わり、事前に推定できない部分は残る。 到達した整理は、負けるかどうかを含め、考えても仕方がないことは考慮に入れないということ。従来の裁判例の使われ方は、考えても仕方がないことを考慮に入れ、やるべきことをやらない理由にしてきた。前向きにやるべきことをやるしかない。 関連する問題意識として、労働者や家族から負の感情をぶつけられたときに言うべきことを言えない人事担当者の存在。従来型(医療の話だから自分は話せない)が取り払われてもなお動かない場合、相手に怒られるのが嫌で先送りしているだけの可能性がある。そうした担当者は繰り返し医療の話に戻そうとするため要注意。転勤内示に怒鳴り込んできた従業員にも同様に何も言えていないのではないか。 研修テーマ②両立支援カードへの疑問 2026年自由集会「高尾メソッドと両立支援」 根本的な疑問として、休む話であるはずなのに、なぜ医師が配慮条件を決めるのかという点。 本人が負担の大きい作業にチェックを付け、それについて医師が意見を述べるという作りへの疑問。 文章として書かれた内容を様式に落とし込む際に不整合が生じるという構造的な問題。もとの文章が玉石混淆であるため、形にすると論理一貫性を保てなくなる。 正社員であれば通常勤務の範囲はすべて担うのが前提。それを列挙して医師に評価させれば、空調の効いた診察室にいる医師には想像が及ばず「大変な負荷」と評価されかねない。建設業で暑熱環境を免除せよという意見が出れば対応できない。 本人が負担の大きい作業に丸を付ければ、主治医はそれを免除した方がよいとチェックする以外にない構造。医師に「この業務はやらなくてよいと言ってほしい」と求めているだけの様式になっている。 主治医よりは産業医の方がまだ妥当な判断ができそうだが、産業医のレベルには幅があり、対応できない産業医に聞くのは主治医に任せるのと変わらないという整理。 就業上の措置との決定的な違い 医師の記載欄は、健診事後措置を中心とした就業上の措置に関する意見書を参照した作りになっている。 就業上の措置・配慮は、リスクとして一定期間メディカルコントロールが可能で、解除できるからこそ医師に聞く意味がある。 一方、両立支援は解除できない事柄を扱っている。したがってリスクの問題ではなく、キャパシティとしての契約見直しか、トレランスとしての「賃金を2倍にしてくれるならやる」という話しか残らない。 本来のあり方は、本人がまず「何でもやる・どこでも働く・いつでも働く」という契約内容を理解したうえで、身体的・精神的状況がそれを許さないのはどの部分かを示すこと。 会社と労働者は、10割を前提にやってみて8割だと分かればそれに見合う労働条件に見直すという話し合いを行う。医師に問うべきは「それをやってはいけないほど危険な状態か」という点のみ。 一時的な制限をかけることで医学的にコントロールでき、ワークリストリクションに意味がある項目があれば、産業医・主治医から追加提示してもらうのは歓迎。それを受けて労使で制限内容と待遇を協議する。 完全労務提供版と不完全労務提供版 完全労務提供申出版は、賃金・待遇を変えずにできることを一緒に考えてほしいという申し出。不完全労務提供申出版は、賃金・待遇が下がってもよいという前提で、10割から下げていき止まったところに合わせるもの。 重要なのは、10割から下げていく方向であって、最初からできないかもしれないので低い水準で試すという発想ではないこと。軽減勤務と同じ考え方。 7割の労務提供に対して7割の賃金が支払われるわけではない。値付けは会社が一方的に決めるものであり、労働者の選択肢は10割を10割でやるか、会社が決めた値付けを受け入れるかの二択。労務提供の質ないし量に対して待遇が比例的に決まるものではない。 キャパシティにはカレントアビリティ(現時点で測定される能力)とマキシマムアビリティ(全力を出せばできる水準)の別がある。アスリートと異なり、一般の労働者はマキシマムより手前しか発揮できないため、測定すること自体が労働者に不利にしかならない。 実態としては、周囲がカバーしている状態に医師のお墨付きを与えようとしているに過ぎない場合がある。 立位作業の例では、主治医が時間の見通しを持たないまま「長時間の立位を避ける」と記載し、会社が本人に尋ねて1時間程度と決まる。0から積み上げて限界で止める議論ではなく、10割から下げてどこまでできるかを見る議論であるべき。前者には賃金の話が一切登場しないという構造的な問題がある。 両立支援の出発点と厚生労働省資料への疑問 両立支援コーディネーターのマニュアルは「仕事を辞めずに治療を続けられるよう支援する」という立て付けで、離職を出発点としている。 本来避けるべきは、治療機会が確保できないことによる離職であったはず。ところが主治医向け支援マニュアルでは離職しか示されず、離職を避けるためなら治療機会の確保以外の何をしてもよいかのような構成になっている。 さらに休業の防止まで前提としており、これは無理筋。無理に働かせるくらいなら一度仕切り直した方がよい。しんどければ休んでよいと言えば足りる。 企業・医療機関連携マニュアルには、労働契約の下で一定の労務
第105回|三原則アップデートと上司向け「3ステップ」
2026/07/14
三原則のアップデート、とりわけ第二原則の見直しについて掘り下げました。今回は割と早くスッキリしてしまったので、いつもと比べて短めです。 告知 【産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:風邪が長引いてます。天気予報とにらめっこしながらの(車の)散歩してます。 前園:西鉄の電車内の広告について。 森:身近になってしまったクマ問題。 議論した内容 第二原則のアップデートー「休ませる」から「指摘し続ける」へ 第一原則・第三原則は変更なし。修正の対象は第二原則のみ。 従来の第二原則は「通常勤務ができないなら休ませる」であったが、修正後は「通常勤務ができていない事実(またはその懸念)を何度でも伝え続ける」に軸足を移した。 従来型は運用の担い手を医療職と想定し、共通目標として療養を掲げていたが、メソッドを早期導入した企業では役目を終えつつあるという認識。 無理やり休ませる方向に働くと関係がギクシャクする。難渋事例で法務に相談すれば「休職命令権の濫用が争点になる」と返され、第二原則の運用が阻害されるという構造的問題。 事例性と疾病性の混同も背景にある。疾病性の思い込みから「休ませよう」に飛びがちだが、まずは通常勤務の支障という事例性の指摘を尽くすべき。 休業を命じないのであれば懲戒する覚悟が必要。「様子を見る」「受診させて見守る」という選択肢は取らない。 休職命令と懲戒処分 第二原則は「通常勤務できないなら休職命令」とは述べていない。事実を指摘し、原因が病気にあるなら休むことを強く勧めるという趣旨であり、休職命令権の濫用論に飛びつくのは論理の飛躍という整理。 休ませれば賃金請求リスクが生じるが、休ませなければ安全配慮義務不履行のリスクを問われる。両者は裏表の関係にある。 懲戒と休職命令を比較考慮すると、懲戒は履歴書の賞罰欄を通じて社外での不利益が大きくなりうる一方、休職命令は履歴書に記載されない。不利益の程度からは休職命令のほうが妥当。 懲戒は刑事処分に類似し、事実の存在と処分の均衡が求められるため無効になりやすい。戒告・譴責は法的不利益がほぼなく、訴えの利益が問題となる余地もあるという論点も提示された。 履歴書の賞罰欄はJIS様式の廃止に伴い減少傾向。賞罰欄の「罰」は一般に刑事罰の有罪歴を指し、軽微な懲戒処分の記載は不要とされるが、面接で問われれば正直に答える必要があるという整理。 懲戒は突然行うものではなく、事前に繰り返し予告した上での最終手段。この前提が伝わらないまま「療養の次は懲戒」と受け取られること自体が問題という指摘。 上司向け「3ステップ」 三原則は人事・産業保健職・法務が全体を見通すための「現場運用の羅針盤」であり、上司に教えるものではないという結論。 上司には「気づきと初期対応の3ステップ」として伝える。第1ステップ=気づきのポイント(従来の第一原則)、第2ステップ=指摘・指導を繰り返す、第3ステップ=人事と連携する。 管理職研修で三原則を紹介すると「どうやって休ませるか」に焦点が集中し、その前段にある指摘が抜け落ちるという実感。 「2.5原則」のように原則を分割すると混乱を招くため採用しない。 ポーカーフェイスができない上司は少なくなく、「休ませる」という結論が本人に見透かされると強い抵抗を招く。本人の状態が真正な事例でも微妙な事例でも同様。 上司に休ませる責任まで負わせると「休ませればあとは何もしなくてよい」という理解に流れる。責任範囲を指摘と人事連携までに限定するほうが機能する。 ラインケアとの住み分け ラインケアは「できる上司」を前提とした内容であり、全管理職に求めるのは非現実的。管理職登用試験でその能力を確認していない以上、全員ができる前提には立てない。 4つのケアの枠組みでは人事が抜け落ち、上司の相談先が直ちに産業医となる構造になっている。上司が向かうべき先は人事であり、健康管理ではない。健康管理は本人が向かう先。 上司向け研修ではラインケアの考え方に軽く触れつつ、「規定はしない、できる人はやってよい、基本はこちらで進める」という立て付けが現実的。 ラインケア研修を受けてきた上司ほど「肩の荷が下りた」と腹落ちする傾向。2019年の自治体研修でも同様の反応が多数寄せられた。 上司の裁量権と安全配慮義務 就業上の措置・配慮とは、本質的に「上司の裁量権に対する制約」。上司は法人から働かせる裁量を与えられているだけで、休ませる権限は与えられていない。 したがって休ませるか否かの検討は人事総務が関与してから行うべきであり、上司の役割は働かせること、部下を育成すること、そして安全配慮義務の担い手であることに整理される。 安全配慮義務の中身は予見可能性と結果回避義務。指摘を続け、その限界を超えそうな段階で人事につなぐという整理で履行と位置づけられる。 業務の加減について、事例性も疾病性もない段階では育成目的の裁量範囲内。事例性ないし疾病性が生じた後は、業務量の加減は上司の裁量ではなく法人の指示に従う領域に移る。 指摘・指導は育成の基本。フィードバックを受けない部下はいつまでも改善しない。 指摘は手間がかかるため、放置すれば「コスパのいい部下しか指導しない」状況に陥る。指摘のシナリオ(読み上げられる指摘文)は会社が用意すべきという提言。 管理職研修と動画活用 森の次回管理職研修の構成案:大原則と2つの健康管理の整理 → 復職プログラムの動画視聴 → 上司としてやってほしいこと(3ステップ)。 高尾が医学部生に動画を見せたところ、AMAガイドライン等の講義内容より動画の印象が強く残った。「寄り添わなくてよいのか」という当初の違和感が、動画を見ることで「こんなものか」と納得に変わる反応が多数。 動画は実践投入済みのツールであり、本物を見せることの説得力が大きい。業務基準の説明や、休職期間満了=解雇扱いとする就業規則の読み上げまで、口頭では言いづらい内容がスムーズに受け入れられる。 「理屈はいいが本番でできるのか」と構えて聞く層に対して、動画が有効に機能するという手応え。 編集後記 高尾 これまでの三原則は、産業医(保健職)・人事総務・法務などの、後方支援メンバーの「見通し」をたてるための指針、一方で、上司のための3STEPは、いままさに目前の対応をするための簡便なルール、というような棲み分けですかね。  その意味では、後方支援が主の産業医等からは、現場対応が主の産業医(保健職)に対しては、3STEPを示すことになるのかもしれません。 前園 メンタル不調者対応における私のテーマのひとつが、「人事や上司・管理職を悩ませない」ということなのですが、まさに今回の議論は学び多き時間でした。  メンタル対応は、どうしても、不調になってしまった方に焦点を当てる議論になるのですが、人事や上司らに焦点を当てることにより、見えてくることもあると思います。  こういった、軸をズラすような考えは、これからもクセとして持っておきたいと思います。 森 動画を用いた上司向け研修をやってきました。動画自体については異論無し、厳しすぎるという意見は全くなく、実践導入に向けて対応していくこととなりました。  興味深かったのは、実際に面接で対応する担当者と、一般の上司とでは、考え方が異なった点です。上司からは、「動画は抑揚がなく、人間味に欠けるので、もっと暖かくしてほしい」という要望が多かったのですが(これはAI音声の設定の都合もあったかもしれません)、担当者の上司からは「矢面に立たされる担当者がこれまで不憫だった。これなら様々な反発を直接受けずに済む
第104回|産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方
2026/07/01
9月の産業医生涯研修で予定するコマ「産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方」の構成を考えました。 告知 【産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:先週の札幌での地方研修に続き盛岡へ移動し、じゃじゃ麺を食べました 前園(アラビアータ):エレベーター内でドアにCM映像と音楽が流れた件への違和感。隙間時間まで広告で埋める風潮への悲しさを吐露。 森:総務省・家計調査の対象世帯に当選。半年間の購入品を逐一記録し、初月は食品の重量まで測る負担を紹介。 議論した内容 裁判例を産業保健に生かす2つの軸 産業医が裁判例を知りたがる背景に、「自分の身を守る(訴訟リスク)」と「企業へのアドバイスに生かす」の2軸があるとの整理。 産業保健で裁判例が生きる分野はメンタル不調者対応・過重労働・ハラスメントに偏り、健診事後措置やストレスチェックでは生かしにくいという指摘。 弁護士を介したリスクの押し付け構造 会社の顧問弁護士が、リスクを産業医に取らせる形で主導権を握ろうとする構図。 軽減勤務からフルタイムに移行できない従業員の面談を突然任され、雇用継続への懸念まで産業医に言わせようとする場面など、「自分が言って大丈夫か」という不安が生じる。 パワハラ裁判の萎縮効果 保健師が産業医からパワハラを受けたとされる事例(判例誌掲載)を題材に、裁判所が職場コミュニケーションの適否にまで踏み込む傾向への懸念。 挨拶の無視といった細部まで本件行為として認定される運用が、現場の萎縮を招くという見方。 法的リスクを考えるべき場面 法的リスクが顕在化するのは基本的に「無理やり辞めさせた時」(休職期間満了退職・原職復帰拒否)であり、休職発令の無効や賃金差額請求として争われる。 原職復帰を前提に延長を1回に限る等、雇用を無理に終了させない運用なら過度に恐れる必要はないという整理。片山組事件と必ずしも一致させる必要はないとの指摘。 裁判例そのものの読み方 判決文の構造(経緯・争いのない事実・争点・原告/被告の主張・裁判所の判断・結論)を解説するレクチャーの価値。 ダイジェストや解説文だけでなく原告・被告の主張欄を対比して読むと双方の「景色」やエピソードが見え、会社側の主張は裁判所にほとんど採用されないといった実感も得られる。 SNS等で断片的に紹介される裁判例を鵜呑みにせず、要約に踊らされない余裕を持つべきという注意喚起。参考文献として労働新聞社の裁判例集や労働法の基本テキストを挙げる案。 産業医賠償責任保険と契約上の手当て 医師賠償責任保険は団体扱いが基本で個人加入しにくく、学校医・産業医活動の特約付帯率は低いと推測。支払い実績が乏しく保険会社に有利な一方、手間ゆえ営業が特約を積極的に付けない現状。 訴訟時の弁護士費用に備え、産業医契約に「業務に関連して第三者から訴訟等を受けた場合の費用は会社が負担する」旨を盛り込む提案。医療過誤で病院が求償するのと同様に、費用を会社へ求償する発想も。 費用負担が担保されるからこそ独立して判断できる、という独立性の捉え直し。 産業医が紛争当事者にされやすい構造と対策 産業医は法人から独立した人格ゆえ矢面に立ちやすく、産業医と会社(人事総務)の温度差・不整合が本人の紛争感を招く。 対策は、個別対応の前に運用ルール(対集団対応)を産業医が主導して整えること。事前ルールなく個別に会社へ足並みを揃えると「会社の犬」に映るという指摘。 主治医と産業医を場外に出し、会社と労働者を当事者として向き合わせる「仲人」的ポジションへの転換。 まとめ:トレードオフから両立へ 「自分の身を守る」と「企業へのアドバイス」は無策だとトレードオフだが、会社に言うべきことを言ってもらい、事前に定めた集団的方針を個別事例に当てはめる(シナリオも活用)メソッドを取れば両立するという結論。 研修当日は今回の議論を原稿化し、ブロックごとに紹介しつつ質疑応答で補う進め方とする方針。 編集後記 高尾 (盛岡)じゃじゃ麺は、平打ちのうどん麺。ジャージャー麺は、中華麺、というのが一番の違いみたいですね。 前園 私が「人類はこのまま隙間を埋め尽くしてどこに行くのだろう」と考え出したのは、コロナ禍でWeb会議が普及し、「移動時間がなくなってWeb会議が1日20件入ってる」みたいなエピソードを聞いた辺りからです。エレベーターの中まで広告が流れるとなると、次はどこでしょう。 森 家計調査の報奨金は6ヶ月で21,000円。。。まったく割にあいません。国の大事な調査なのでもちろんご協力しますが、もう少し何か良い方法はないかなと思うところです。
第103回|パワハラ対応と産業医面談
2026/06/21
次回の研修会で予定しているパワハラのグループワークに向けて、事前議論を行いました。 告知 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:台湾旅行で台湾ウイスキー(カバラン)を購入。試験管入りの定番セットはキャップの出来が悪く液漏れした一方、国内未発売の新ラベルを免税店で割安に入手した。 前園:産業衛生学会に参加。大阪生まれ大阪育ちの立場から、川沿いを綺麗に整備し文化的に活用する大阪と、そうした発想が薄い福岡の街づくりの違いを実感したという話。 森:学会で「復職名人聞いてます」と多数の声をもらった。社名とブランド名の不一致に悩んだものの、ネームカードにシールを貼る対応で決着。セカンドライン番組も準備中。 議論した内容 パワハラ対応の大原則は「切り分け」 パワハラを理由に療養した本人が「上司を変えてくれれば復職できる」と主張するケースを素材に、復職の手続きとパワハラ認定の手続きは分けるべきという基本原則を確認。 切り分けないと、本人の関心が復帰基準の達成ではなく加害者の処遇やパワハラ認定の行方に集中し、時間だけが経過して復帰が遠のくという指摘。 実務で本当に困るのは明白なパワハラではなく、グレーやパワハラ未満の主張事案。会社側がまともに取り合いすぎると、本人が「要求は通って当然」という誤った方向に思い込みやすくなる。 休職を取引材料にさせない、安全配慮義務を一身に投げさせない、という観点でも切り分けが有効。 産業医面談の限界と「原因/結果」の切り分け 産業医は面談で本人の話しか聞けないため、客観的にパワハラ有無を判断できない。主治医が本人の話だけで上司を悪者と判断してしまう構図と同じという指摘。 「原因(本人がパワハラと考えるもの)」と「結果(精神的不調)」を切り分け、医療職は後者の相談・助言にのみ関わるという整理。 慣れていない産業医・産業保健師がこの領域に踏み込むと事態を悪化させるため、安易に触らせたくないという立場も示された。 「さよなら産業医面談」—何でも面談への問題提起 ノープラン・ノー情報で何でも聞く「いきなり面談」は時代に合わないという問題提起(高尾先生の連載構想)。 臨床の問診も構造化・標準化が進み、思いつきで取る情報が決定打になる場面は減ったとの見立て。産業保健でも質問紙等で必要な情報を体系的に収集する流れにあるとした。 パワハラ相談はそもそも産業医・産業保健師がワンストップで受け止めるべきではなく、通報窓口へ案内すべきという整理。 カリスマ産業医とエントリー産業医 法律知識・人事との連携・本人の協力を兼ね備えた万能型(カリスマ)産業医なら、本人ヒアリング→会社確認→異動を含む調整→復職、という交渉ごとをこなせる。ただし非弁活動に近づく面もあると指摘。 一方で、嘱託産業医がそこまで時間をかけるのは物理的・時間的に非現実的。カリスマは「ここまでなら会社が動く」という交渉枠を経験的に持っている=時短交渉をする弁護士に近いという整理。 多くの産業医には、社外相談窓口の初動のように「判断はせず事実だけ確認する」という割り切った役割の方が現実的という結論。 ワンフレーズから「構造化(パーツ化)」へ 設定されてしまった面談では、冒頭で「この場はパワハラの有無を判定・調査する機関ではない」と立場を説明し、調査希望ならパワハラ窓口へ案内する切り返しが有効。 ただし会社側が「パワハラは曖昧なまま、この人を異動させたい」といった忖度系の依頼を産業医に持ち込む構造もあり、巻き込まれるリスクに注意。本人の前で人事面接へ引き渡すシナリオ(産業医の顔をあえて軽く潰す芝居)も紹介。 ワンフレーズでしのぐのは過去の手法。新しいしのぎ方は、伝えるべきこと(中立の立場説明・聞く範囲の限定)を配置し、自由に聞く部分の射程を自分でコントロールする「パーツ(構造)」化。 質問が決まっている構造化面接とは異なり、こちらは「言いたいこと」を起点に自由発話の射程を制限する点が肝。両立支援カードの「自由なキャンバスに見えて絵柄は決まっている」発想とも通じる。 イメージは「交通整理」。本人のお困り事を預からず、緩やかに本人へ返すキャッチボールにたとえた。整理の軸は「原因側・結果側・交絡要因」の3つに絞ると伝わりやすいという案も示された。 編集後記 高尾 産業医が前置きなしで、パワハラの相談を受けてあげると、従業員は、「中立的(=医学的?)であるはずの産業医が共感的に意見を述べてくれたということは、すなわち「私は正しい!(真にパワハラを受けている)」という考えの強化に関与してしまっているんじゃないですかね。。。 前園 パワハラの問題については、パワハラとはなんぞやという啓発の第1フェーズがうまくいかないまま、「パワハラという言葉が走ることで萎縮効果が生じる」という第2フェーズに入っている印象があります。  さすがに最近は、第1フェーズの研修を新規で依頼するような会社は減っているかとは思いますが、第2フェーズにおける有効な対策を考えていくのが、今年の課題だと思います。  教育なのか、仕組みなのか、両方なのか。仮にそれらでやるとしても、本当に実務で活きるやり方は何なのか。  産業保健に携わるみなさんと議論を深めていきたいです。 森 パワハラのネガティブリスト(やっちゃダメリスト)方式の問題は、最近少し話題になっていた不適切保育ガイドラインの問題にも通じる気がしました。例えば「お口チャック」はダメと示されているのですが、じゃあなんて指導したら良いのかはわからず、現場では大変苦労されているようです。
特別編|高尾メソッドと両立支援
2026/06/10
労務管理と産業保健研究会の自由集会として、高尾メソッドの立場から仕事と治療の両立支援をあらためて整理した特別編です。 森からの問題提起に対し、高尾先生が賃金のグラデーション制度という具体策を提示し、前園先生が安全配慮義務の法的リスクを補足したうえで、会場との質疑応答で論点を深めました。 告知 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 労働契約の本質と「仕事と治療」の主従関係 職場はあくまで働く場所であり、労働契約に基づく労務提供が前提。あえて「治療と仕事」ではなく「仕事と治療」の順で呼び、留意すべきは病気による労務提供能力の低下の許容ではなく治療機会の確保だと整理した。 育児・介護の両立支援は基本的に「時間(時短等)」の調整であり、本人の職務遂行能力自体は低下していない点が決定的に異なるという指摘。復帰後の体制づくり(保育園探し、ケアプラン策定)は本来労働者が主体的に行うものであり、仕事と治療も同様に本人の主体性が問われるとした。 職務無限定性と個別配慮の不整合 問題の根幹は、正社員の職務無限定性(いつでも・どこでも・何でも)と、個別配慮・特別扱いとの矛盾にあるとの分析。ジョブ型雇用なら「週4日勤務に契約変更」といった交渉で解決し得るが、無限定性ゆえに難しくなる。 「どこで働くか・いつ働くか」は労働契約の本質的部分であり、賃金が労働時間に対して支払われる以上、安易に踏み込むべきでないという補足。会社側から契約変更を持ちかけるのは現実的に難しいとした。 安全配慮義務をめぐる誤解 今回の指針が安衛法68条等を「安易に就業禁止をせず可能な限り措置を講じる」根拠として持ち出しているが、同条は感染性疾患等の就業制限を定めるもので、解釈としては無理筋との指摘。 中途半端な業務軽減での就労は、かえって予見可能性を高め、結果回避義務の不履行の履歴を作り出しかねない。指針を守っていても、いざ訴訟になれば実際に起きた結果が優先され、守ってくれるとは限らないと懸念を示した。 負担の所在と国の役割 育児時短では減額分の一部が雇用保険から補助される一方、傷病については傷病手当金(休業時)のみで、就労継続中の負担構造が不明確。会社が業務量・売上の低下を許容しない限り、しわ寄せは同僚に向かい、企業が不当に利益を得る構図になりかねないとの問題提起があった。 主治医連携と両立支援カードの使い方 会社としての主治医連携は最小限にすべきとの立場。連携すべきは「本人が主治医の説明を理解し、自分で会社に伝えること」であり、治療スケジュール程度は本人が確認・申告すれば足りるとした。 両立支援カードは、本人が労働契約内容(労働時間・異動可能性・使える制度)を自ら書き込み主体性を促す道具として活用する。会社ができる支援内容に選択肢を絞った様式をあらかじめ準備し、衛生委員会等で「自社ではここまで」と整理しておく運用を提案した。事前に会社と本人で配慮内容を合意し、主治医にはチェックのみを依頼すれば主治医の負担も軽減できるとした。 高尾メソッドの答え:賃金のグラデーション制度 マクロの視点(生産量だけでなく労働生産性の向上)を忘れないことが起点。「治療と就業の支援」は労働生産性低下と周囲負担を招く「貧国弱民の策」だと位置づけ、本来の「仕事と治療の両立支援」=富国強兵的な発想との対比を示した。 ミクロではノーワークノーペイから「ワークペイバランス」へ。職務無限定性を放棄すると4掛けになるため、10割〜5割のレンジでグラデーションを作る「プースカフェスタイル/ミルフィーユ構造」の賃金制度を提案。職務限定・勤務地・労働時間などの制約に応じて1割ずつ減額し、最大5割減まで設計する案を提示した。 国の負担として、最大7割まで雇用保険で補填する案、頻回受診には「有給休暇の無給前借り制度」という案も提示。前園先生からは、就業規則・賃金規定で合理性と必要性を備えれば例外的に減額制度は設計可能で、基本給を低めにして職務無限定手当等を上乗せする設計があり得るとの補足があった。 「やってみなはれ」方式と本人の主体性 復職や就業の前に「たられば」で空想的対立をするから、会社は健康リスクを過大に見積もり、労働者・主治医側は念のためと配慮を最大要求する。まず働いてもらい、評価して賃金を合わせるべきという考え方を示した。 賃金減額は本人合意を要件にできないため、育児時短と同様に評価後に一方的に下げる前提で制度化する。両立支援カードは労働者の働く意思の表示と位置づけ、完全労務提供希望/不完全労務提供申し出の2パターンで運用する構想が語られた。 安全配慮義務リスクのマネジメント(前園補足) 安全配慮義務違反のリスクはゼロにできないとの結論。NTT東日本事件(家族性高コレステロール血症・心筋梗塞既往の労働者が連続出張研修後に死亡)を例に、産業医への情報提供不足が義務違反と認定され、過失相殺7割でも3割の限度で敗訴した事案を紹介した。後付けで「こうすれば助かった」と主張される構造的問題があるとした。 リスクは「なくす」ものではなく「マネージする」もの。具体策として、主治医・産業医の意見担保、本人の申し出で始める(訴える土壌を作らない)、家族の早期関与、ストップ要件の強化による早期の療養導入、健康状態の自己申告(就業に支障のある症状の有無・定期通院・服薬のみを確認)が挙げられた。 質疑応答で深めた論点 病状悪化の損害は因果関係の立証が難しく、適切にリスク認識を共有していれば大きな賠償リスクにはなりにくい。死亡・後遺障害と異なり相場も立ちにくいとの見立て。 治療を怠った結果の病状悪化については、定期通院・服薬は本人の役割であると明示しておくべき。過保護な日本の文脈では「言っていないことは知らない」となりがちなため、自己申告に組み込む案が示された。 「0を5にする」という表現は無理やり働かせる印象を与えるため、「10が4に落ちるのを9・8・7・6・5で踏み止まる」と捉えるべきとの整理。見せ方も「ミルフィーユを剥がす」ではなく「4掛けから上乗せする」と表現すべきとした。 産業保健職が配慮を引き出すことへの懐疑に対し、両立支援は医療問題ではなく労務問題だと言い切る姿勢を示した。疾病別の細やかな医療化は、最終的に対象者の特例子会社化(隔離政策)につながりかねないとの危惧から、中小企業でも回せる労務管理の枠組みを重視した。 柔軟な働き方は日本の文脈ゆえに健康によいと見えるだけで、社会疫学の知見では職位の低い層にとって「中抜き」的な働かせ方になり得るとの留保。熱中症リスク等についても、ガイドライン遵守と体制づくりで「訴えさせない土壌」を作ることが重要だとした。 在宅勤務はむしろ体調確認を難しくする面があり、両立支援の文脈では安易に認めない(勤務地制限として扱うか、業務委託に切り替える)という逆説的な論点も提示された。 賃金制度の本格運用は、地域や賃金制度にとどまらず雇用制度全体(正社員かそれ以外か)の整理を要する大きな改革であり、本来は社会保障を含む抜本的改革を伴うべきものを医療側に押し付けている構図だと総括した。両立支援は産業保健ではなく労務管理の分野。 編集後記 高尾 言い忘れてましたが、職能性のもとでの賃金は、簡単には下げられないことはいつも言及しているとおりですが、「●●手当」については、その手当の金額と内容が見合っているものであれば、これを無くすことは、それほど難しくありません(管理職手当、とか)。  それゆえ、職務限定性手当1(軽)みたいなものであれば、職務に限定を加えるならば、これを支給しない対応はできるだろう、ということです。 前園 何を隠そう私は大阪生まれ大阪育ちであり、もともとの勤務先が中之島に面するビルだったので、今回の学会は感慨深いものがありました。仕事に
第102回|てんかんと業務上の運転制限をどう設計するか
2026/05/19
今回は、療養中・就業中にてんかんなどの疾病で運転業務に制限が生じた場合の復職判定や処遇のあり方について議論しました。なお、収録の不手際により、本エピソードは議論の途中からの開始となっており、近況報告は含まれていません。ご了承ください。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 療養期間におけるてんかんの特殊性 通常の原因不明の失神であれば、車内運転は6ヶ月程度のみそぎ期間で再開可能というのが一般的な感覚 検査により疾病が特定されれば、通常は就業制限期間が短くなる方向に働くが、てんかんは2年の実績期間が必要で、特定されると逆に期間が長くなるというデメリットが生じる 失神原因として注意すべきはてんかん・不整脈・血糖値の急激な低下の3つ。不整脈の検出にはホルター心電図が想定されるが、発作の捕捉自体が課題となる リスクベースとリスクトレランスの整理 法的・医学的には運転可能だが、会社として「命じない」バッファー期間が発生する構造 自治体の災害対応のように、いつ命じられるか分からない状態は周囲の納得を得にくい 会社のレピテーションリスクと運用のバランスが論点 就業中に発覚した場合の処遇 復帰時のように一律で休ませる対応はやりづらい 解除期間と、解除はされているが命じない期間を会社側と本人で折半する考え方が示された ケースをマトリックスで整理し、原則とバリエーションを明確化する必要性が指摘された 事故・発作の累積による期間延長ロジック 1回ごとに6ヶ月・1年を独立に当てはめるのではなく、累積で2年など長期に振る運用が必要 累積が2年を超えた時点でキャパシティ問題と捉え、雇用終了や職務限定への切り替えも視野に入る 一方で、無事故期間をクリアした場合は職務無限定に戻す余地を残しておく設計 真に病気で運転回避が必要か、業務回避の意図かの切り分け リスクトレランスとリスクベースの混在をどう切り分けるか、理屈を社内に作る必要がある 治療・自己健康管理への取り組み態度が判断材料となる 接客で問題を起こす人事評価のマイナスとセットで業務から外す運用と類似の構造で整理できる 病気のコントロールと自己健康管理の組み合わせ 糖尿病・高血圧はメディカルコントロールと自己健康管理が揃えばほぼ発作が起きず、就業制限の解除も速やかに可能 てんかんは両方を徹底しても一定頻度で発作が起きるため、2年の実績期間が避けられない 就業制限の解除と現実の配置は別問題で、リスクヘッジ期間は企業規模により変動するが、社内で一定のルールを設けることが必要 運転手当による処遇調整案 「運転するかもしれない手当」を給与に組み込み、制限が生じた際に取り上げる設計案 夜勤手当と同様の構造で、本人へのペナルティを金銭面で吸収する形に整理できる 金額は月1〜2万円程度から、業務の必要性に応じて設定する 解雇や利用延長といった強烈な対応に至らずに調整可能な枠組みを準備できる 社内でのルール設計の重要性 明快な答えは出なくとも、社内で議論し合意形成してルール化することが重要 「めんどくさいから運転させない」で済ませる対応が最も避けるべき結論 議論の過程を同僚にも共有することで、運転免除に対する周囲の納得感も得られる 編集後記 高尾 ひょっとして、職務無限定手当1、手当2とかをあらかじめ組み込んでおいて、通常の復職時、すなわち1ヶ月間以内ならば、これを支給するが、1ヶ月を超えた場合は、支給しなければ、うまくいく? 例えば制約がひとつだけなら、手当1は支給。二つ以上ならいずれも支給しない。 本当は絶対額ではなく、それぞれ基本給の2割くらいに設定できるといいのでしようけれど。 前園 親知らずを人生で初めて抜歯しました。 「詰め物が取れたので歯医者に行ったら、抜歯をすすめられる」という展開が、抜歯あるあるのようです。 よく考えたら、産業保健の界隈でも歯の話題は当然ありますが、法的論点として触れたことはないですね…。 歯のところは、弁護士との連携がしにくい分野かもしれませんね(笑) 森 今回は録音ミスをやってしまいました・・・ いつもは指差し確認をしっかりやって、録音と録画を確認していたのですが、完全に忘れておりました。
第101回|産業医・弁護士・社労士の三職種連携をどう一般化するか
2026/05/12
第99回日本産業衛生学会でのポスター発表に向け、産業医・弁護士・社労士の3職種連携の特徴を一般化・整理することを目的に議論を行いました。平時連携と有事連携の違い、共通言語の重要性、不可侵領域とオーバーラップ部分の見極め、シナリオによる同床異夢の最小化など、連携の本質的要素を多角的に整理しています。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾 産業医科大学基本講座の受講者激励会に行ってきました。 前園 労働新聞にて単独連載がスタートしました。この機会に労働新聞をぜひ購読してください。 森 作業環境測定士の取得に向け、第一種衛生管理者保有者向けの免除講習を受講してきました。 議論した内容 ポスター発表の狙い 産業医・弁護士・社労士という3職種連携の特殊性を踏まえつつ、産業保健職と人事・経営層との連携など、より広い場面に応用可能な一般化を目指す方向で整理。 平時連携と有事連携 連携には「個別ケース対応の有事連携」と「考え方や仕組みを整理する平時連携」の2層が存在し、3人の関係は当初から平時連携を並行して行ってきた点が特徴。 平時連携が積み重なることで、有事と感じる事案を平時連携の延長で捌けるようになり、結果として「有事ならない」状態が生まれる。 必要性ベースの関係は必要性が消えれば終わってしまうため、必要性のない時間の確保と中期的なリソース交換が連携継続の鍵。 連携を支える共通言語と考え方の共有 メソッドという共通言語を持っていることが、3職種連携の再現性を支える基盤。 「あの先生はこう言っている」という答えだけでなく、「なぜそう考えるか」という導出プロセスを共有することが連携を機能させる上で重要との指摘。 不可侵領域とオーバーラップ部分 職種が異なるからこそ、不可侵領域を明確にしつつ、医学・法律以外の業務的アプローチで重なるオーバーラップ部分を厚くしておくことが連携の持続条件。 リング上で議論する範囲(共通領域)と、リングを降りて持ち帰る範囲(医学・法律的判断)を明確に区別する運用を確認。 勉強会・飲み会形式との比較 勉強会形式は教える側と教えられる側が固定されやすく、平時連携の代替にはなりにくい。 飲み会の質と種類によっては議論が深まらず、文書に相互に手を入れる作業こそが連携の本質的な深化を生むとの整理。 病名ごとの対応検討の可能性 当初から病名を問わない一般化を貫いてきたことが連携継続の要因であり、初期に病名検討から入っていれば連携は続かなかったと振り返り。 成熟した現状であれば、病名ごとの対応をオプション的に取り扱う検討にも意義があり、メソッドのメリット・デメリットが病名により異なる点を整理する余地あり。 両立支援との接点 病名ごとの検討は両立支援との当てはめの議論と相当オーバーラップする可能性があり、メンタルより先にがん等の身体疾患領域から検討を進める方向性。 個別ケースの主治医意見に右往左往するのではなく、再現性のある対応を構築することが企業活動に適合。 文書理解力・作成能力の重要性 自治体関係者との連携が機能している背景には、文書の理解力と作成能力という基礎能力の存在。 医療職は総じて文章作成能力が高くないため、議論の土台を揃える「掃除」のような作業が必要であり、内容に入る前段階の素養を整える重要性を指摘。 同床異夢の最小化とシナリオの役割 連携が形骸化する最大の要因は同床異夢であり、これを最小化するためのコストを払う関係性が不可欠。 面接シナリオは「誰が何という言葉で伝えるか」まで落とし込むツールであり、同床異夢を構造的に減らす効果。 手順や様式だけでは運用がばらつくのに対し、シナリオを共有することで完成度を90%程度まで引き上げ、残る部分にのみマージンを残す運用が可能。 録音共有との対比 面談録音の相互共有は理論上可能でも、リカバリを含む面談全体のアートを損なう懸念や、聞き返す手間の重さから現実的ではない。 事前のシナリオ文書は曖昧さがなくクリアであり、議論を突き詰めやすいというメリットを再確認。 編集後記 高尾 従来型の対応は、経験からの帰納的な内容に、近年では手引きを中心とした要領のようなものからの演繹的な内容を、追加的にハイブリッドにしたものではないでしょうか。一方で、メソッドは要領(労働契約・就業規則+大原則・三原則)からの演繹的内容だけで構成されます。  もっとも、今回言及したように、いかに演繹的に構成しても、運用マニュアル(+様式)だと30%くらいしか(50%未満)制御できなかったところ(すなわち要領と乖離が生じる)、シナリオで90%くらい制御できるようになった気がします。(また連載か、別の原稿にまとめます) 前園 「共通言語」という言葉を、森先生が指摘してくれました。我々専門家は、弁護士であれ産業医であれ、本来いつも「難しい専門用語ばかり使わない」と意識しているはずですよね。でもメンタル不調者対応の相談場面では、専門家の人事・上司に対するアドバイスがわかりやすいかという話とは別に「人事・上司が労働者に対してどういう言葉を使うのか」という意味のレベルまで、共通言語化できているかどうかが、重要だということだと思います。  我々が早口で話す内容が、一言一句のレベルまでメモできるはずもないですので(笑)、私としても、この点はもっと意識していきたいと思います。 森 本編では直接取り上げられませんでしたが、3人がお互いに紹介した本をお互いに読むことが非常に多いのも、何か良い連携のヒントのように思いました。
第100回|100回記念〜リスナーからのお便り企画〜
2026/05/06
第100回記念として合宿先からのライブ配信を実施。事前に寄せられた10通超のお便り・ご質問に対し、番組の在り方からメソッド運用上の具体的な実務論点まで幅広く議論しました。リスナーとの双方向の交流を通じ、メソッドの普及や運用上の課題を改めて整理する回となりました。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 100回記念ライブ配信とお便り企画 100回記念企画として、事前に寄せられた10通超のお便り・質問を読み上げ、コメントしながら進行する形式を採用しました。 来年の合宿に合わせて再度募集する案や、節目の50回ごとに実施する定番企画化の構想も話題に上りました。 番組の聞き方と近況報告の効果 公開収録の現地参加と通常配信、ノーカット版(有料会員向け)を組み合わせて聞いてくださっているリスナーの存在に対し、感謝が示されました。 近況報告は人柄を伝える機能があり、初対面でも知り合いに感じられる効果(単純接触効果に類するもの)があるとの指摘が紹介されました。 出演者の声質と音声編集 3名の声質が明確に異なるため、音声コンテンツとして識別性が高いというリスナーからの指摘を取り上げました。 機材選定と編集は森が担当しており、録音環境(反響音、エアコン音等)に応じた音響調整を行っていることが説明されました。 メソッドの間口の広げ方とセカンドライン構想 「ポッドキャストの内容がコアな信者向けになっている」というリスナーからの指摘に対し、初心者向けの「セカンドライン」配信や、よくある質問シリーズの可能性を議論しました。 「職場は働く場所である」という大原則が、20年以上経った今も新鮮に受け取られる現実への驚きが共有されました。 仕事と治療の両立支援における事業者方針表明 努力義務化された両立支援において、事業者の方針声明(A4・2枚程度の様式)の重要性を指摘しました。 厚労省雛形の声明をそのまま発出すると、人事の方向性がそちらに固定化される懸念があり、独自の方針表明が望ましい旨が述べられました。 福利厚生の文脈で実施できる体力のある会社か、否かでアプローチを分ける必要性も論じられました。 宗教上の断食中の従業員への対応 イスラム教徒のラマダン期間中の勤務に関する質問について、「日本の社会通念上、断食による業務支障は許容されない」という方針を明示すべきとの見解を示しました。 「水分補給の啓発」のような中途半端な対応ではなく、「健康管理を本人責任で行ったうえで通常勤務するか、休暇を取得するか」を選択させる枠組みが提案されました。 建設業など事故リスクの高い業務では、より厳格な運用が必要との指摘も加えられました。 シナリオ・受領書作成のスキルアップ方法 スキルアップにはチームでの相互添削が有効であり、3人以上で同じ事例にコメントし合うことが推奨されました。 「場数をこなせ」という助言が紹介され、実践量とフィードバックの両輪が重要であると整理されました。 AIによるシナリオ添削チャットボット構想は、文体・言い回しの修正は可能でも、背景知識を要するパラグラフ追加には課題があると共有されました。 中小企業(短い休職期間)でのメソッド導入 休職期間が3ヶ月程度の中小企業では、療養開始から1週間以内に初回面接を実施するなど、対応の早期化が必須となります。 「うちの会社の休職期間は3ヶ月しかありません」と、入社時から繰り返し本人に伝えておくことが最大の備えであるとの指摘が示されました。 休職期間の短さを補うのではなく、日頃の労務管理をメソッドで強化することが本質的な解決策である旨を強調しました。 週1報告が止まった従業員への対応と「刺激」という曖昧語 「刺激しない方がよいかと思って指摘していない」という相談に対し、「刺激」という言葉が「相手を怒らせて面倒になりたくない」という回避を正当化していると指摘しました。 週1報告(療養復帰準備報告書)は復職意思の存在証明であり、提出停止は休職を法人として認めるか否かに関わる重大な事象として、明確に通知すべきです。 給与・金銭関連の連絡窓口とエールサポート(復職支援サポート窓口)をワンストップ化し、家族同席の要請も「求めます→要請します→命じます」と段階的に強める運用が提案されました。 産業医・保健職へのメソッド導入と組織構造 産業医や保健職にメソッドを浸透させるアイデアとして、健康管理部門と安全衛生部門を組織的に分け、安全衛生側に産業保健職を配置することで、自由裁量を構造的に制限する方法が紹介されました。 様式や運用面で機能的に主治医・産業医の暴走を抑える従来の対応に加え、組織構造そのものを変更することで何も起きない状態を作る発想が示されました。 神経痛で短期休職を繰り返す社員への対応 残業免除の就業制限では改善せず、短期休職を繰り返している社員のケースについて、療養期間を3ヶ月→4.5ヶ月→6ヶ月と段階的に長くしていく運用が提案されました。 頸椎症や腰椎ヘルニア等の手術判断は本人の意思に委ねるべきであり、会社からは労務提供が不完全であることを明示し、療養に専念させることが助言として有効です。 過重労働の閾値(時間外80時間以上等)の運用や、業務の属人化解消が組織課題として残ること、合理的配慮や両立支援で勤務時間・日数の調整に踏み込む場合は原契約の見直しが必要となる可能性についても議論されました。 編集後記 高尾 セカンド・ライン、いいですね。名称もおおよそ決まったみたいですし。私も楽しみにしています! 前園 ここまでポッドキャストが続いたのも、ひとえにリスナーの皆様のおかげです。 いつもリアルでオンラインで、ありがとうございます。 内容面では、話題が細かすぎるなどの課題はあるのかもしれませんが、とにかく「続ける」ということは大事なだなぁと思います。 この100回まで、よほどのことがない限り収録のキャンセルはしてこなかったです。 とはいえ、聴いてくれる方が減っていくのは意味がないので、今後も真摯に取り組んでまいります。 どうか引き続きよろしくお願いします! 森 100回を記念して、ポッドキャストのカバーアートを新調いたしました! 猪戸どしさんというイラストレーターの方に作成してもらいました。 https://coconala.com/users/4728081?ref=service_main_column
第99回|弁護士勉強会の事例から読み解くメンタルヘルス不調者対応の論点
2026/05/05
合宿2日目の収録です。とある勉強会で取り上げられた「メンタルヘルス不調者への対応」をテーマとする事例検討資料を題材に、ラインケアの限界、業務軽減措置の誤解、受診命令、復職判定、休職満了対応など、現場で頻出する論点を多角的に議論しました。問いの立て方そのものを疑い、業務的アプローチを起点として整理し直す視点を提示しています。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾・前園:シェリー樽熟成の焼酎を中心に7〜8種類を試飲。観光では猿岩など期待を超えた一方、小島神社はモンサンミッシェルというには、やや期待外れ。ウニ飯定食に生ウニ、巨大なアジフライを堪能した。 森:前回に引き続き、自宅からの参加となった。 議論した内容 弁護士勉強会の事例設定への違和感 弁護士の勉強会の題材としては、社労士向けの内容に留まり、厚労省の4つのケアを紹介する解説に終始している印象。 文字資料はサマリーであり、会場ではより踏み込んだ実践的な議論がなされている可能性はあるが、表に出る範囲では当たり障りのない内容となっている。 弁護士に相談が来るのは、他の専門家が的確な助言をしないことの裏返しでもある。 ラインケアと「不調を見つける」問いの誤り 「管理職がどうすれば不調者を見つけられるか」という問いの立て方自体が誤っており、見つけられたとしてその後の対応が担保されない以上、議論の前提を疑う必要がある。 安全配慮義務(部下の健康管理)とプライバシー保護というダブルバインドを与えられた現場は思考停止しやすく、専門家は優先順位を明確に示す助言をすべきである。 4つのケアを参照した瞬間に医療に思考が引っ張られ、職場で素人が予備軍を見つけるという妄想的な議論に陥る危険がある。 業務軽減措置という曖昧な助言の弊害 安全配慮義務の文脈で「業務軽減措置」を助言すると、現場では誤った運用に流れやすい。 専門家の現場助言は「休ませる一択」が原則であり、業務軽減措置は休業命令発令までの過程で必然的に生じるものに過ぎない。 受診命令と受診拒否への対応 「受診させるためにどう対応するか」という問い自体が方向を誤っており、業務的アプローチと医療的アプローチを並行して進めるべきである。 問題行動には事実に基づく指摘・指導(必要に応じて懲戒検討)を進めつつ、産業医・保健職経由で受診勧奨を行う構えが現実的である。 指定医3名を選択させ協議に応じる姿勢を示す裁判例ベースの対応は、実質的には1択でも家族の理解を得て進められる場面が多い。 業務上の支障(事例性)の言語化 「業務上の支障はどこにあるのか」というメタ認知的な視点が、相談者にもAIにも抜け落ちやすい。 能力不足解雇が難しいのは、仕事ができていないという事実を具体的なシーンや行動レベルで言語化できていないため。 「常識」で片付けず、なぜそれが業務上問題なのかを丁寧に説明する力(フィードバック)が現場に求められる。 即答にこだわらず、「会社としての見解を書面で返す」という選択肢を持つことが有効である。 復職判定と主治医意見への対応 弁護士に相談が来る場面は、療養中の週1報告などの労務管理を行わずに突然診断書が出てくるケースがほとんどである。 主治医に職場の状況を積極的に情報提供し具体的な見解を確かめるという対応は、主治医意見の証拠価値を相対化する訴訟戦略の側面を持つ。 主治医が職場業務を踏まえて噛み合った意見を示してくれば、それは強力な味方となる。 「根本的解決」の捉え方と休職という暫定着地点 解説資料が「根本的解決」を雇用終了と暗黙に定義していることへの違和感。 休職は誰にも直接的被害を与えない暫定的な解決であり、考える時間を稼ぐ手段として極めて有効である。 就業規則上の休職期間満了による自動退職の規定は、当初から本人に明示すべき情報である。 会社が当事者であることの再確認 弁護士、主治医、産業医に順番に聞き、会社自身が判断を回避するたらい回し構造が現場の混乱を招いている。 弁護士は「あなた方で基準を作って考えていい」と会社の主体性を取り戻す助言をすべきである。 問題を「メンタル不調者対応」と一括りにせず、「SNSで意味不明な発信をする従業員への対応」「会社の名誉を毀損する行為への対応」など、就業規則上の懲戒検討から議論を始める枠組みに置き換えるべきである。 編集後記 高尾 私たちにとっての「根本解決」は、再び支障なく業務が遂行できるようにすることで、そのためには、たいていの場合、体制を立て直すためにも療養をはさむのが、ほぼ解というのが経験の教えるところなんでしょうね。 (そして体制を立て直す必要があるのは、本人だけではなく、企業側も同様であるということも) 前園 リスナーの皆様も、弁護士がされているポッドキャスト、弁護士セミナーなどぜひ受講頂いて、そのご感想等をお聞かせ頂ければ嬉しいです。弁護士と産業医の共同セミナーなどもあるようです。 専門家同士の連携については、産業衛生学会のポスター発表でも議論する予定です! 森 ウニ丼・アジフライ(あとはお刺身や壱岐牛など)食べたかったです。。。
第98回|次の100回に向けて
2026/05/01
今回は100回を目前に控えた節目の合宿特別編です。森が体調不良により急遽オンライン参加となる中、第200回(2030年予定)に向けた番組の方向性、産業保健領域における今後の重点テーマ、そして3人それぞれの問題意識を率直に語り合いました。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 森:合宿の2日前に発熱し、現地への参加を断念。自宅から療養しながらオンラインで参加しました。 高尾:博多港からの高速船で大きく揺られ、上陸時点で既に満身創痍。フェリーターミナルにタクシーがおらず、電話で呼び寄せる事態となりました。 前園:同じく船酔いに苦しみ、AIで対処法を検索しながら現地入り。ローテーブルとソファで収録に臨んでいます。 議論した内容 第200回(2030年)に向けたロードマップ ポッドキャストは2022年7月開始、約4年弱で100回到達。同じペースなら2030年に200回を迎える計算です。 両立支援メソッドは番組内ではある程度整理が進んでいるものの、世の中への浸透にはまだ丁寧な議論が必要との認識を共有しました。 高齢労働者と労働力確保 日本は高齢者の労災予防など「リスク低減」の議論が中心で、フィンランドのように国策として「健康に働ける年齢を上げる」発想には踏み込めていません。 定年後の賃金低下に明確な根拠がない一方、職務限定とも異なる曖昧な運用が続いている現状を整理しました。 1日8時間・週5日労働の根拠の薄さや、ワークライフバランスと労働力確保のトレードオフについても言及しました。 健康管理・労働契約・金融の「リテラシー教育」 日本の労働者は過保護な健康管理に慣れ、自己健康管理能力が育っていないとの問題意識を共有。小中高6+6年の教育課程で「健康管理は自分でやるもの」と植え付ける可能性を議論しました。 労働契約リテラシーも同様に教育の対象になり得るとし、研修医の働き方の変化を例に教育介入の効果に言及しました。 iDeCoに象徴されるように、国は「過保護に守った後で本人に投げ返す」傾向があり、職場の健康管理も同じ経路をたどる可能性があるとの指摘がありました。 健康管理・労働契約・金融リテラシーは有機的に繋がるテーマとして整理されました。 産業保健職向け「労務管理」研修シリーズ構想 産業保健職向けに「労働契約とは何か」「労務管理とは何か」をパッケージで伝える研修シリーズの構想が提示されました。 自治体の産業保健は人事のグリップが弱く保健師主導になりがちで、外注化を含めた抜本的な見直しが必要との議論がありました。 産業保健法学会との違いとして、「ホーム」が後ろ向きになりがちなのに対し、本番組は前向きな「労務」の議論を志向していることを再確認しました。 メソッド普及とAIの活用 メソッドのシナリオ化・動画化は一定の到達点に達しており、次は企業への浸透フェーズに入ります。 AIによる「ミニ高尾先生」が完成度を高めており、仲間の産業医がAIを使ってメソッドを企業に普及させるステージが見えてきたとの展望が示されました。 弁護士助言の課題 紛争専門の弁護士の助言が、結果的に「揉めさせる方向」に作用してしまうケースがあり、訴訟リスク低減を目指して逆に紛争化リスクを高める構図を指摘しました。 「最終決定は会社」と逃げるのではなく、シナリオレベルで「全面採用してよい」助言を作り上げる必要性を議論しました。 弁護士はそもそも目の前の従業員に直接アプローチする経験が乏しいため、労務管理の実務感覚が育ちにくい構造的な問題にも触れました。 メンタルヘルス不調者対応における「寄り添い」一辺倒のアプローチが、結果的に紛糾を招く危険性についても言及しました。 公開収録・自治体訪問・ゲスト招聘 合宿の道中で自治体の人事課を訪問し、公開収録や無料相談会を行う構想が提示されました。 地域・職域連携の観点から、商工会議所などとの連携も視野に入れた議論がありました。 ゲスト招聘については、上松先生回(第59〜60回付近)のような形式に加え、現場で両立支援に悩む当事者を顔・声を加工して招くアイデアも出ました。 会員限定コンテンツとして、より突っ込んだ議論や両立支援などの繊細なテーマを扱う方向性も検討しました。 4人目のメンバー候補 番組メンバー拡充の可能性として、ヘッジファンド関係者、企業経営者、労働組合委員長、労働者側弁護士などが候補として挙がりました。 労働者側弁護士との対話は、争うためのスタイルではなく議論を深めるスタイルへの転換が必要であり、現状は議論が一旦止まっている状態であることを共有しました。 模擬裁判と今後の準備 2028年札幌の全国協議会に向けて、産業医・産業保健職向けの労務ホームセミナーシリーズを準備していく方針を確認しました。 番組のセルフプロデュースの難しさに触れ、外部プロデューサーを単発で迎える可能性についても言及しました。 編集後記 高尾 中日にはレンタカーを借りて、島の中を、かなり行ったり来たりしました。 満タン返しで、ガソリン代が600円に満たず。 ホンマか?と思いましたが、考えてみれば、信号がほとんどないので、ストップ&ゴーがなく、移動の予測時間と距離が感覚を超えてましたので、確かに燃費もいいのだと理解しました。 前園 昔から乗り物酔いグセが非常に強く、今回は船酔いでしたが、基本的に車、特に閉鎖的なバスなどはダメです。 船は高速船がダメで、外に出れるフェリーならok。電車は大丈夫。新幹線はときどきダメ。 誰か根本的な改善策をご存知の方いらっしゃれば、ご一報ください…。 森 とてもとても楽しみにしていた合宿だったので、行けなくて大変残念です。。。
第97回|50人未満事業場のストレスチェック実施モデル
2026/04/02
今回は、令和7年の安衛法改正により、ストレスチェックの実施が50人未満の事業場にも義務付けられることを受け、小規模事業場特有のリスク(結果の漏洩、コスト、実施者の確保)を踏まえた独自の実施スキームを議論しました。ベンダーへの外注ではなく、企業内労働組合・互助会に委託するモデルを提案しています。 告知 【リスナーからの声を募集中!】 第100回に向けて、リスナーの皆様からのご意見・ご感想・ご質問を募集しています。いただいたお便りについては、4月17日(金)の夜に実施予定の100回記念ライブ配信にて、すべて取り上げる予定です!どしどし応募ください。 https://forms.gle/DH7MFRKid5Hj5QW29 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)  前園:「パン作ったことある?」「たい焼き食べたことある?」 森:父の退任記念祝賀会に参加しました。 議論した内容 小規模事業場におけるストレスチェックの課題 50人未満の事業場では、監督署への報告義務はないものの、実施義務は生じる。報告義務がないことを理由に実施しない、という対応は取るべきではない。 小規模事業場では社長や社長の配偶者が総務を兼ねていることも多く、結果が事業者に漏洩するリスクが極めて高い。 厚労省マニュアルは「原則外注」としているが、外注先がこうしたリスクを十分に理解しているとは限らず、コストも割高になりやすい。 労働組合・互助会への委託モデルの提案 ベンダーではなく、企業内の労働組合・互助会にストレスチェックの実施業務を委託する方法を提案。組合には従業員の不利益情報を事業者に漏らす動機がなく、むしろ守る側の立場にある。 事業者は委託契約を結んだ後、実施方法の詳細は一切関知しないという建前を貫くことで、結果の漏洩リスクを構造的に排除する。 組合・互助会から各従業員に実施を依頼し、本人が自分で57項目のうちB領域(ストレス反応)29項目を記入・自己採点して高ストレス判定を行う。 実施者の位置づけと実務上の運用 実施者(医師等)は制度上必要だが、本スキームでは結果を見ない実施者として機能する。判定基準の設定と承認のみを行い、実際の採点は本人が行う。 実施事務従事者は置かない。封筒を集める組合担当者は中身を知らないため、実施事務従事者に該当しない。 当面3年間は高尾先生が実施者を引き受け、その後は地産保の登録産業医に引き継ぐ想定。 高ストレス者の面接指導の流れ 面接指導を希望する従業員は、事業者ではなく組合・互助会に申し出る。組合から地産保の登録産業医につなぎ、事業者を介さずに面接指導が実現する仕組み。 措置の申し入れがあった場合のみ事業者が関与し、時間外労働の制限など具体的な措置を講じる。 検査実施に相当する時間分の賃金は事業者が従業員に支払い、就業時間外での実施による金銭的不利益を補填する。 法令上の論点 安衛法第66条の10、施行令、安衛則第52条の10と政令省令委任の構造をたどる必要がある。「実施者」という用語は安衛則のタイトルに出てくるが、条文本文中には明確に定義されていない。 互助会(法人格なき社団)が委託契約の当事者となれるかなど、契約関係の法的整理は今後の検討課題として残った。 編集後記 高尾 ゾノ先生の指摘を受けて、さすがに、「判定」そのものを労働者自身にやらせるは言い過ぎなので、労働者には、「足し算作業」をやってもらって、判定は、以下のツールで「実施者」が行う建付けとするといいなと気づきました。 https://forms.gle/WkH3tePEoG6WerMJ6 もっとも、この複雑なスキームを音声コンテンツで理解することは困難だと思いますので、また連載で文字で確認ください! 前園 日本語は多義的ですが、読みやすい文章はリズムがいいという話も耳にします。 とはいえ聞き手のリズム感と書き手のリズム感が一致するとも限らず、普遍的な正解があるのかないのか。 法曹界隈には一応の型のようなものはありますが、一般のリズム感とは異なる感じがしています。 とりあえずドラムでも叩いてみてから考えた方がいいのでしょうか。 森 編集をしながらふと思ったのですが、私たちが考えているような、小規模事業場向けのWebで実施できるストレスチェックサービスであれば、Claude Codeで簡単に作れそうです。Claudeとチャットしてみた感じ、おそらく保守費用も年間数万円程度になるのかと。暇な時(私というよりは、Claudeの使用量に余裕があるとき)取り組んでみようと思います。
第96回|よくある質問シリーズ Part1「不調に気づいたとき、まず何をすべきか」
2026/03/16
新企画「よくある質問シリーズ」の第1回として、メンタルヘルス不調が疑われる従業員への初動対応に関する4つの質問を取り上げました。大原則と三原則に照らせば、個別事情に左右されず標準的な対応が導けることを、具体的な事例を通じて示しています。 よくある質問シリーズは、今後不定期に収録予定です。 告知 【リスナーからの声を募集中!】 第100回に向けて、リスナーの皆様からのご意見・ご感想・ご質問を募集しています。いただいたお便りについては、4月17日(金)の夜に実施予定の100回記念ライブ配信にて、すべて取り上げる予定です!どしどし応募ください。 https://forms.gle/DH7MFRKid5Hj5QW29 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:神栖産業医トレーニングセンターを訪問しました。 前園:「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」(西林克彦著・光文社新書) 森:東京出張の帰りに雪による航空ダイヤの乱れに遭遇しました。 議論した内容 Q1:パニック障害の社員に業務を限定して与える義務はあるか 「客先訪問はできないが社内作業なら可能」と本人が主張し、「主治医も環境限定で就業可」との意見だが、これは三原則に照らせば、通常勤務ができていない以上、まず療養導入を進めるのが基本的な対応。 安全配慮義務を果たすために軽減業務を認めると、配慮がエスカレートし、結果的に義務違反を問われるリスクがある。 Geminiに同じ質問をすると「合理的配慮の提供義務がある」と回答。事前知識なく汎用AIに頼ることの危険性が浮き彫りになった。 Q2:適応障害気味の部下について、会社はどこまで情報収集すべきか 上司が親身に病状や通院状況を聞き出そうとしているが、疾病に関する情報収集は不要。 会社として把握すべきは勤怠状況と職務遂行状況であり、これらは適正な労務管理の中で自然に得られるはずの情報。 進捗遅延を指摘し、背景に体調不良があるなら療養か通常勤務かの二択を提示するのが適切。 コーチングの弊害について(詳細は第61回を参照) Q3:自殺をほのめかす優秀な社員への対応 業務成績や性格など枝葉の情報を削ぎ落とせば、「従業員が死にたいと言った」という事実のみ。速やかに療養導入を進め、家族にも連絡する。 本人が「大丈夫」と撤回した場合は、2ステップ受診(まず主治医に通常勤務可の意見書を求め、その上で改めて療養を検討)で対応する。 Q4:休職を拒むマネージャーへの対応 ミスの連発に対してまず事例性の指摘と改善要求を行い、改善しなければプロジェクトからの配置変更や懲戒手続きも視野に入る。 病気欠勤は申請制であるため、まず就業規則上の選択肢を説明し、本人に選択させるプロセスが重要。 療養導入は命令ではなく、本人と家族に先の見通し(最悪のケースを含む)を示した上で、本人の選択として進めるのが実務上のポイント。 メソッドAIアドバイザーとの比較 高尾メソッドに特化したAIチャットボットは、上記の質問に対して大原則・三原則に基づく的確な回答を生成した。 一方、汎用AI(Gemini等)は安全配慮義務や合理的配慮を前提とした労働者保護的な回答を返す傾向がある。 質問の枝葉を削ぎ落として100文字以内にまとめるプロセス自体が、問題の本質を見極めるトレーニングになる可能性がある。 編集後記 高尾 何度も言及してましたが、「(メンタル不調者の)希望をきく」ということは医療的アプローチでもあり、近年のコーチングのような意味合いともリンクしやすく、結果として、本来あるべき労務管理を上司なり人事が行うことなく、相手の希望通りにする、そのための変な言い訳として安全配慮義務などが「利用」されているように感じました。  昔?のように、黙っていても自身で気づき、労働者として望ましい方向に回帰してくれる時代は終わったと考えると、「言わなくてもわかるでしょう」ではなく、明確に(誰がきいてもそうわかるように)伝えることの重要性がますます高まっているように思います。 前園 高尾メソッドを習得する最も良い方法は、「事例相談に対して回答する」という機会をもつことと考えています。  聴いてわかったつもり、読んでわかったつもりになっていても、いざ生の事例の相談を受けてみると、病名などに「引っ張られて」しまいがちです。  最近でしたらAIに架空の質問を作ってもらうのも良いかもしれないですね。 森 AIは、ナレッジそのものもそうですが、よく言われるようにプロンプトが重要です。僕が作った(Claude Codeに作ってもらった)AIアドバイザーは、事前プロンプトにコア概念を全部入れているようで、精度が高く出ているようです。
第95回|週1報告の「月1提出」モデルと、専属産業医の兼務要件
2026/03/09
今回は2つのテーマを取り上げました。1つ目は、週1報告の記載頻度は維持しつつ、提出を月1回にまとめる簡易運用モデルの提案、2つ目は、専属産業医が他社の嘱託産業医を兼務することの可否について、法令・通達をたどりながら議論しました。 告知 【リスナーからの声を募集中!】 第100回に向けて、リスナーの皆様からのご意見・ご感想・ご質問を募集しています。いただいたお便りについては、4月に実施予定の100回記念ライブ配信にて、すべて取り上げる予定です!どしどし応募ください。 https://forms.gle/DH7MFRKid5Hj5QW29 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:アバルト595が納車されました。 前園:「連絡は産業医に限る」とワコール事件。 森:ウイスキーの飲み方を、ストレートからトワイスアップに切り替えました。 議論した内容 週1報告の「月1提出」モデル 休職者が多い大規模企業では、週1報告の受領・処理の事務負荷が導入の障壁になっている。 本人には週1回の報告書記載を継続させつつ、4枚まとめて月1回提出させることで、会社側の事務作業量を大幅に軽減できる。 記載頻度を週1に維持する意義は、療養中の感慨と増悪の波を捉えるため。月1回のまとめ書きでは、良い時期だけ・悪い時期だけを選んで書くバイアスが生じやすい。 まとめて書いたかどうかは報告書の内容やペンの変化から概ね判別可能だが、仮にまとめ書きであっても、4週分を正確に再現できる能力自体が一定の回復を示している。 復帰準備期後半に入ったら、提出頻度を隔週→週1に戻し、復帰タイミングの遅れを防ぐアレンジが必要。 生活記録表との比較 生活記録表は「何時に起きたか」「何をしたか」という医療的アプローチであり、復帰準備に必要な「業務遂行能力の回復」を読み取ることができない。 週1報告は業務的アプローチであり、事務担当者でも内容を理解でき、復帰基準の充足度を確認できる点で優れている。 生活記録表を週1報告とセットで求めるハイブリッド運用は、本人にとって「会社のためなのか自分のためなのか」が曖昧になり、不信感を招くリスクがある。 生活記録に基づく支援を行うなら、復帰準備期に本人の希望を確認した上で、週1報告とは明確に分けて運用すべき。 専属産業医の兼務要件 「専属産業医が嘱託産業医を兼務することを禁止する規定はあるか」という質問が多いが、禁止規定がないからやっていいという解釈は法の趣旨に反する。 専属産業医の根拠規定は、安衛法第13条→施行令第5条→安衛則第13条第1項第3号と、政令省令委任の構造をたどる必要がある。 「専属」の定義は法令上明文化されていないが、行政解釈では衛生管理者の規定に準じ、「その事業場のみに所属し、もっぱらその業務に従事する」と解されている。 通達(基発)により、グループ企業の嘱託産業医を兼務できる例外要件として、地理的近接性、合同安全衛生委員会等の設置、労働態様の類似性、対象労働者総数3,000人以内が定められている。 禁止されていないからやってよいのではなく、制度の趣旨を踏まえて自ら判断できることが、専門家としての産業医に求められるスキルである。 編集後記 高尾 「岩盤規制(新潮新書)」を引用して、法令の定めに対して、通達で例外を設けることのイレギュラーさを説明する研修も作成していますが、専属産業医の兼務問題も同じ面がありますね。 通達は以下が最新でしょう。地理的要件は削除されたけど、(1)労働衛生協議組織、(2)業態の類似性、などを勘案するとほとんどの兼務は正当化されないでしょう。 https://naras.johas.go.jp/wp-content/uploads/2021/04/aaaa.pdf 前園 お医者さん界隈も、「常勤」「専任」などの言葉が飛び交う複雑な業界ですね。あまり弁護士とクライアントとの関係では聴かないかもしれません。 一方で、弁護士には、利益相反関係には非常に厳しい規制がありますので、この点については皆、とても慎重です。 元請と下請の代理人を兼ねたりすることも控えることも多いですが、もし兼ねるとしても、事前説明や同意、いざとなったときの辞任など、適切な対応が求められています。 森 AIチャットボットは、今のところAPI料金も跳ね上がることなく済んでいますので、どんどんお使いくださいませ。 https://fukushoku-meijin.com/ai-advisor/

Podcast reviews

Read 復職名人が読む三手先 podcast reviews


0 out of 5
0 reviews

Podcast sponsorship advertising

Start advertising on 復職名人が読む三手先 relevant audience podcasts


What do you want to promote?