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245 episodes
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JapanesePublisher
Morgan StanleyExplicit
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2024/05/02
Latest episode
2026/10/19
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8 min.
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2 days
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モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
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狭まる成長と安定への道
2026/10/19
金利上昇が経済全体に波及するまでには時間がかかることがあり、その影響の全容を見極めるのは容易ではありません。弊社米国およびグローバル・エコノミストチームのアルニマ・シンハが、次にどこで圧力が表面化する可能性があるのか、そして政策当局者が相反するリスクにどう対処し得るのかを考察します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社米国およびグローバル・エコノミストチームのアルニマ・シンハが、金利上昇が経済活動やインフレ、そして政策の道筋にとって何を意味するのかについてお話しします。
このエピソードは10月19日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月に利上げを行いました。しかし、今後の利上げをめぐる見通しは依然として不安定です。最新の消費者物価指数が発表されてから数時間のうちに、市場は大きく変動した後に元の水準に戻り、10月の利上げ確率は一時五分五分まで高まったものの、その後低下しました。
現在、弊社の基本シナリオの予想と同様に、市場は次の利上げが12月に行われる可能性が最も高いと見ています。しかし、それ以上に重要なのは、米国のイールドカーブのより長い年限での動きです。特に、10年債利回りが変化しました。
ここで一歩引いて考えると、ある疑問が浮かびます。それは、幅広い分野でのインフレの上振れが、インフレ、ひいては成長を押し下げるために、より引き締め的な政策が必要であることを意味するのかについて、どの程度懸念すべきか、という疑問です。それとも、金融環境がそれ自体で十分に引き締まったため、中央銀行がなすべきことは増えるどころか、むしろ減っているのでしょうか。
金融政策の微調整は常に難しいものですが、今やその課題は差し迫ったものになりつつあります。
エコノミストは、金利水準を、経済の自然利子率と比べてどの位置にあるかという観点から捉えようとします。生産性の伸びや投資需要が強まれば、自然利子率は高くなるはずです。そのため、同じ金利水準でも、引き締め効果はより小さくなります。
成長期待や企業収益の見通しが依然として堅調な中で、長期の米国債利回りが上昇していることは、中立金利が実際に高くなっている可能性を示しています。成長見通しの改善によって利回りが上昇する場合、期待リターンが高まり、資本需要も強まります。そうした状況では、金利の上昇は必ずしも景気を抑制するものではありません。
しかし、それほど楽観的ではない、別のシナリオもあります。
利回りが上昇しているのは、インフレが高止まりし、財政懸念が強まり、投資家が長期債を保有することに対してより多くの見返りを求めているためでもあります。ウォーシュFRB議長が投げかけた「金融環境は引き締め的なのか」という問いに対して、これまでとは異なる答えが出始めています。
経済が今後どのように推移するかは、政策の微調整が鍵を握ります。米国では、これまでのところ、直近のインフレの上振れでさえ、エネルギー主導のスタグフレーションではなく、需要の底堅さを示すものでした。簡単に言えば、多くの企業が依然として資本コストを大きく上回るリターンを見込んでいるということです。弊社の米国経済チームによる最近の分析も、こうした見方を裏付けています。
違いが見られる可能性があるのはセクターごとの動向であり、それがより鮮明になりつつあるようです。経済活動がイノベーションや生産性、戦略的投資に牽引されるセクターに集中しているのであれば、経済は過去のサイクルに比べて、金利の影響を受けにくくなっている可能性があります。
こうした相反する力が働く中で政策を微調整するのは、決して容易ではありません。クレジット市場の中でも最も格付けの低い領域でスプレッドの拡大幅が最大になっていること、そして住宅市場の活動が景気後退期並みの水準にあることは、米国において政策と金融環境が引き締め的であることを示すサインの一部です。
金融環境の引き締まりの兆候は、欧州の方がやや顕著に表れています。その一因は、欧州ではAI関連の設備投資がそれほど大きな要因になっていないことです。成長は底堅く推移しているものの、金利上昇によって高まる財政懸念を相殺できるほどではありません。
フランス国債(OAT)の売りは、リスクのバランスがいかに急速に変化するかを示しています。世界的に見ても、金融環境はマクロ経済情勢に、より難しい問いを突きつけています。
つい最近まで、経済が発するメッセージは明確でした。
金利の上昇は一部のセクターを抑制していたものの、景気拡大の軌道を大きく変えるほどではありませんでした。期待リターンが借入コストとともに上昇している限り、利回りは決定的に引き締め的になることなく、高水準を維持できます。しかし、弊社の金利ストラテジーチームの同僚が指摘しているように、インフレ圧力によって押し上げられているのは、ブレークイーブン・インフレ率ではなく、実質金利です。
つまり市場は、成長を抑制し、最終的にインフレを押し下げるために、政策が引き締められつつあることを示しているのです。米国の最新のインフレ指標は、この議論をさらに強めるものです。金融環境は引き締め的なのでしょうか。
第3四半期決算、ハイパースケーラーの設備投資、クレジットスプレッドの拡大、米国の選挙、そして間近に迫ったFRBの会合と、今後いくつものカタリストが控えています。中央銀行が政策の再調整を図る中で、市場は成長リスクの評価へと軸足を移す必要があるでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
AIブーム、利回り上昇という壁に直面
2026/10/16
借入コストの上昇は、AIデータセンターブームをどのように減速させているのか。そして、資金調達の回復を後押しし得る要因は何なのか。弊社の資産担保証券(ABS)ストラテジスト、キャロリン・キャンベルが解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、弊社の資産担保証券(ABS)ストラテジスト、キャロリン・キャンベルが、AIブームが借入コストという思わぬ障害に直面している理由についてお話しします。
このエピソードは10月16日にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
データセンター施設への需要が急拡大しています。しかし、企業が競うように容量の増強を進める一方で、そのための資金調達コストはますます高くなっています。そして、この相容れない状況が、クレジット市場で興味深い展開を生み出しています。
1月以降、5年物米国債の利回りは1パーセントポイント以上上昇し、データセンター資産のスプレッドもそれ以上に拡大しています。2026年初めの時点では、最上位格付けのデータセンター債の利回りは5%を下回っていました。現在では、同様の債券の利回りは7%近くに達しています。数十億ドル規模の施設の資金調達を目指す企業にとって、この利回りの上昇は非常に大きな問題です。
多くの事業者は、資金を調達するために証券化クレジット市場を利用しています。基本的には、自社のデータセンターが生み出す収益を裏付けとした債券を発行するという仕組みです。こうした債券が発行される時点では、データセンターの建設はすでに完了し、電力も確保され、賃料の支払いも始まっています。
つまり、キャッシュフローは安定しているのですが、その一方で落とし穴もあります。こうした施設は、証券化クレジット市場で資金調達を行うよりもかなり前に、長期のリース契約を結んでいることが多いのです。
債券を発行する準備が整う頃には、賃料収入はすでに固定されています。そのため、今年見られたように金利が急上昇し、借入コストが増加しても、収入がそれに追いつくとは限らないのです。
弊社の分析によれば、借入コストが8%に近づくと、現在の資金調達条件の下でこうした債券を発行することは大幅に難しくなります。そして、その影響はすでに市場に表れ始めています。
2026年に入ってから現在までに、データセンター事業者はABS市場で約150億ドル、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)市場で約70億ドルの債券をそれぞれ発行しています。これはおおむね昨年と同じペースですが、今年のデータセンター需要の並外れた伸びを考えると、弊社の予想を下回る水準です。それでも、弊社は供給の減速は一時的なものだと考えています。
弊社の予測では、米国のデータセンターの電力容量は、現在の約60ギガワットから、2028年までに150ギガワットへと拡大する可能性があります。ただし、電力の供給にはいくつかの制約があるため、実際の容量はこの予測を30%から40%下回る可能性もあります。
いずれにしても、今後稼働するリース容量の多くは負債による資金調達を必要としますし、事業者は野心的な成長計画を掲げています。事業者には、こうした高金利環境を乗り切るための選択肢がいくつかあります。
保有物件を担保にした借入額を減らすこともできますし、短期的には投資リターンの低下を受け入れることもできるでしょう。あるいは、より柔軟な資金調達の仕組みを提供する、別の信用調達チャネルを利用することも可能です。
では、市場は今後どうなるのでしょうか?弊社は、高金利環境を考慮し、証券化クレジット市場におけるデータセンター関連の発行額について、2026年と2027年の予測を若干下方修正しています。
しかし、2028年に稼働予定のリース容量が非常に大きいため、2028年の予測は据え置いています。全体として、弊社は今後数年間で約1,200~1,500億ドルの供給を見込んでいます。高金利が短期的な課題となっているとはいえ、これは相当な規模の資金調達活動です。
借入コストの上昇によって、当面はデータセンターの資金調達のペースが鈍るかもしれません。しかし、今後予定されている建設の規模を踏まえると、この市場には成長の余地がまだ十分にあると考えられます。また、市場の中には、弊社が有望視している分野もあります。
ここまでは主に、ハイパースケーラー向けのデータセンターについてお話ししてきました。これは、1社または2社のハイパースケーラーにテナントとしてリースされる大規模なキャンパスで、多くの場合、10年または15年のリース契約が結ばれています。
一方で、弊社が現在大きな価値を見出しているのは、市場のもう一つの分野であるコロケーション・データセンター市場です。こちらのキャンパスには、さまざまな業種にわたる多様なタイプのテナントが入居しており、リース期間も比較的短いことが多いのです。
データセンターの賃料が急上昇し、空室率が1%前後となっていることを踏まえると、こうしたデータセンター事業者は、業界で起きている変化をより迅速に収益につなげることができます。
こうした柔軟性は、借入コストが高止まりしている局面で、特に大きな価値を持つ可能性があるでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
中南米の強気シナリオに欠けているピース
2026/10/15
弊社の中南米チーフ株式ストラテジスト、ニコライ・リップマンが、ブラジルの選挙、資本コスト、AI投資、地政学が、中南米全域における新たな成長時代の到来につながる可能性について解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、弊社の中南米チーフ株式ストラテジスト、ニコライ・リップマンが、ブラジルが、弊社が「中南米の春」と呼ぶ動きに欠けているピースとなり得る理由と、それにAIがどう関係するのかについてお話しします。
このエピソードは10月15日にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
ブラジル株は先週、大統領選挙の第1回投票で予想外の結果が出たことを受けて、大幅に上昇しました。フラビオ・ボルソナロ氏がルラ大統領を上回り、今月後半の決選投票に進むことになりました。結果は依然として不透明です。しかし投資家にとっては、より大きな問いがあると考えています。ブラジルは、長年不足してきたもの、すなわち投資を呼び込む政策転換に近づけるのでしょうか。
弊社は以前から、中南米経済が消費主導型から投資主導型のサイクルへ移行しつつあると主張してきました。その背景には、1つ目に地政学の変化、2つ目に投資に友好的な政策、3つ目に金利低下の可能性があります。さらにこれは、世界経済、とりわけ米国経済をけん引するAI設備投資サイクルの枠組みとも合致します。弊社の米国チーフ・エコノミスト、マイク・ゲイペンが指摘しているように、米国経済は消費から設備投資へと移行しています。アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビアでは、すでにこの「中南米の春」の兆しが見られます。ブラジルは、その中で最大の欠けたピースとなる可能性があります。その理由は3つあります。
第1は、資本コストです。ブラジルは依然として、世界で最も投資コストが高い国の1つです。政府債務が大きく、金利も高いことから、株式投資や起業に伴うリスクを取るよりも、債券投資の方が魅力的になってきました。しかし、信頼に足る財政改革が実現すれば、この力学は変わり得ます。政府支出の削減により、借り入れコストが低下し、通貨が強まり、民間投資が促される可能性があります。つまり、債券資産に滞留している資本が、成長のための資金へと振り向けられる可能性があるのです。
第2は、AIです。AIはブラジルの政治とは無関係に思えるかもしれませんが、弊社は重要なつながりがあると見ています。弊社のグローバルな枠組みでは、企業が世界各地でAIインフラを整備するのに伴い、年間設備投資額はおよそ2兆5,000億ドルから、およそ5兆~6兆ドルへ増加する可能性があります。そして中南米は、そこで極めて重要な役割を担います。
データセンターには電力が必要です。電力にはエネルギー・インフラが必要です。そしてインフラには、銅、リチウム、その他の重要鉱物が必要です。中南米全体では、世界のエネルギー供給のおよそ10%を担い、世界のエネルギー埋蔵量のおよそ20%、世界の銅のおよそ30%、そして世界のリチウム資源の60%程度を保有しています。
そこで弊社は、ブラジルとアルゼンチンが、エネルギーと農産物を輸出するという点で、次第にテキサスに似てきていると論じてきました。また政治面では、ブラジルが他の中南米諸国から学び、刺激を受けられ、テキサスからアイデアを得られる可能性があるもう1つの分野として、規制緩和が挙げられます。
ブラジルにとっては、金利が低下し、政策への信頼性が向上すれば、この投資ブームに参加することがかなり容易になる可能性があります。
そして第3の要因が、地政学です。ブラジルは、欧米の資本市場や米国のテクノロジーとの深いつながりを維持しながら、東側との経済関係を強化してきました。より均衡の取れた関係を築くことができれば、資本市場へのアクセスが改善し、長期投資が後押しされる可能性があります。もちろん、選挙結果だけで変化が保証されるわけではありません。財政規律、政策の実行力、世界の資金調達環境は引き続き極めて重要です。特に米国債利回りの上昇は、多額の債務を抱える地域にとって重要なリスクです。
しかし、ほかの国ですでに起きていることを見てみましょう。メキシコはAIのサプライチェーンにハードウェアを供給しています。チリは投資案件のパイプラインを再構築しています。ペルーは鉱業活動の恩恵を受けています。そしてアルゼンチンは、大幅な政策変更を経て資本を呼び込んでいます。
中南米最大の経済国であるブラジルが同じ方向へ進めば、地域全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。それこそが、弊社の「中南米の春」という見方の核心です。つまり、消費から、投資、起業、資本形成へと軸足が移るということです。
道のりはまだ長いですが、ブラジルは、その春が本当に根付くかどうかを見極めるうえで、最も重要な試金石となるかもしれません。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
アジア債券にはより大きな地図が必要
2026/10/13
弊社のアジア・クレジット・ストラテジー責任者、ケルビン・パンが、対象国の拡大や、現地通貨建てクレジット、ドル建て債券など、アジアの債券市場をより幅広く捉えることが、投資家にとってなぜ有益なのかを解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、弊社のアジア・クレジット・ストラテジー責任者、ケルビン・パンが、アジア債券が抱える課題はアジア地域そのものではなく、投資家による従来のその捉え方にある可能性についてお話しします。
このエピソードは10月13日に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
こんな場面を思い浮かべてみてください。スーパーマーケットで買い物をしています。通路を歩いていると、その半分が立ち入り禁止になっていることに気づきます。思いがけない状況です。
アジア債券市場でも、これと似たことが起きています。アジア地域のファンダメンタルズは引き続き良好ですが、従来の投資ユニバースは次第に制約が強まっています。
圧力がかかり始めたのは2023年初めです。当時、米国の政策金利が、世界金融危機前以来初めて、アジアの多くの国や地域の政策金利を上回りました。長年にわたりアジアの債券市場を支えてきた環境が、逆転したのです。
アジアのドル建てクレジットを考えてみましょう。発行体は、より調達コストの低い現地通貨建ての資金調達を選ぶケースが増えており、その結果、ドル建て債券の供給は縮小しています。アジアのドル建てクレジットは現在、純供給が5年連続でマイナスとなる見通しです。同時に、投資適格債のスプレッドは55ベーシスポイントまで縮小しました。このため、アジアの投資適格クレジットは、世界の主要クレジット市場の中で最も割高な水準にあります。
投資家もこの状況に注目しています。アジア・クレジットおよびハイイールド債に特化したファンドの資産は、2021年のピークのおよそ750億ドルから62%減少し、およそ290億ドルとなりました。
しかし弊社は、問題はアジアそのものではないと考えています。実際、アジア太平洋地域の名目GDPは、2025年の41兆ドルから2031年には54兆ドルへ拡大する可能性があります。これは、その期間における世界の名目GDP成長のおよそ3分の1を占めることになります。
そして何より重要なのは、投資も加速していることです。アジアの設備投資は、11兆ドルから2030年までに16兆ドルへ増加する可能性があります。これは、2000年代半ば以来、最も力強い産業サイクルとなります。弊社では、この動きはAIだけでなくその他の分野にも広く普及し、エネルギー、防衛、そして幅広い産業投資がいずれも大きな役割を果たすと考えています。
ここで重要なのは、投資家が従来アジアをどのように捉えてきたかです。要するに、もっと大きな地図が必要なのです。
その広い地図に当たるのが、弊社の言うAPAC債券です。従来のアジア債券は、主に米ドル建てクレジットと、アジア新興国の現地通貨建て国債に焦点を当ててきました。APAC債券では、これに転換社債と現地通貨建て社債が加わります。さらに、日本とオーストラリアも対象に含まれます。
では、この広い地図にはどのような利点があるのでしょうか。これらの各資産は、それぞれ異なる動きをします。転換社債では、株式との連動性を通じて、投資家がアジア地域の成長に参加できます。APACのドル建てクレジットは、その大半が投資適格で米ドル建てという特性から、よりディフェンシブな役割を果たします。現地通貨建て金利商品では、金利、通貨、景気循環へのエクスポージャーを得られます。同時に、現地通貨建て社債は、クレジットとセクターのエクスポージャーを広げます。
これらを組み合わせることで、経済環境の変化に応じて、より柔軟にリスクを組み合わせることができます。例えば、成長率とインフレ率が同時に上昇する局面では、転換社債は株式との連動性から恩恵を受ける可能性があります。景気後退局面では、為替ヘッジ付きの現地通貨建て債券は、為替リスクを抑えながら、金利低下の恩恵を受けることができます。スタグフレーションの局面では、ドル建てクレジットがよりディフェンシブな特性を発揮する可能性があります。
2023年以降の弊社のポートフォリオ分析によると、分散投資したAPAC債券ポートフォリオは、配分上の制約によって異なるものの、およそ4%のボラティリティで7.5%のリターンを目標にできる可能性があります。ドルのサイクルが変化する中、投資家は為替エクスポージャーを管理する必要性が一段と高まっています。
長年にわたり、投資家は比較的限られた手段でアジアの債券市場に対応することができました。しかし現在の市場では、より高い柔軟性が求められています。アジアにおける投資機会が消えたわけではありません。むしろ問うべきなのは、投資家がアジアの投資機会を十分に広く見ているかどうかかもしれません。
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AIを支える電力をめぐる政治
2026/10/12
エネルギーコストは選挙の主要争点となっており、AIデータセンターが議論をさらに活発にしています。弊社の米国公共政策ストラテジスト、アリアナ・サルバトーレが、米国の次なるテクノロジー・ブームを支える電力をどのように確保するかを左右し得る、ワシントンでの政策協議について解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、弊社の米国公共政策ストラテジスト、アリアナ・サルバトーレが、米国で拡大するAIの電力需要と、それに対して政府が取り得る対応についてお話しします。
このエピソードは10月12日にニューヨークにて収録されたものです。
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市場と政策当局者は、11月の選挙後に重要な議論が行われる可能性に備えています。焦点となるのは、米国のエネルギーインフラの将来です。そして、その議論の中心には、次第に緊急性を増している問いがあります。米国が、一般家庭の電力利用者にコストを転嫁することなく、AI投資サイクルを支えるのに十分な電力インフラを、どのように整備できるかということです。
先月下旬、連邦議会の議員らは、超党派の「米国負担軽減・雇用法案」を提出しました。この法案は、連邦政府の許認可制度を改革するための重要な取り組みです。さらに重要なのは、データセンターに対し、そのプロジェクトに伴う送電コストの負担を求める条項も盛り込まれていることです。
弊社は、これは注目すべき進展だと考えています。特に、11月の選挙後の立法課題を考えるうえで重要です。もちろん、政策面で大きな隔たりがあり、選挙後の議会日程も限られているため、今後の道筋はなお不透明です。
では、これはなぜ市場にとって重要なのでしょうか。
まず、エネルギー面の課題がどれほど大きいかを考える必要があります。弊社のスティーブン・バードとそのチームは最近、米国のデータセンター向け電力不足の予測を更新しました。現在、2028年までに57ギガワットの不足が生じる可能性があるとみています。しかも、これは電力へのアクセスを加速し得る新たな解決策を織り込む前の数字です。従来の予測は38ギガワットでした。
だからこそ、許認可制度の改革案が非常に重要なのです。ここでは、2つの点に注目したいと思います。
1つ目は、インフラ整備を加速させる取り組みです。この法案は、連邦政府による環境審査を改革し、すでに承認を得たプロジェクトの確実性を高めるものです。弊社は、これにより新規エネルギープロジェクトをめぐる遅延や不確実性を抑えられると考えています。ただし、許認可制度の改革だけでは、設備、労働力、送電網の容量に関する制約は解消できません。
2つ目は、インフラ費用を誰が負担するのかという点への関心が高まっていることです。この提案は、実際には既存の政策イニシアチブを土台としています。今年初め、複数のハイパースケーラーが「電力料金負担者保護誓約」に署名しました。
これは自主的な合意で、企業はデータセンターに必要な電力を確保し、関連する電力インフラの改修費用を、家庭の電力利用者に転嫁するのではなく、自ら負担することを約束します。その後、この誓約は拡大され、より幅広い電力会社、開発事業者、州の参加者も署名しています。
今回の許認可制度改革法案が従来と異なるのは、自主的な約束から連邦政府の要件へと移行する可能性がある点です。具体的には、この提案はデータセンターに対し、関連する送電コストの負担を求めるものです。
エネルギー政策全体へのアプローチでは意見が分かれるとしても、電力料金の手頃さについては、両党の政策当局者が懸念を共有しているように弊社はみています。
選挙後を見据えると、投資家が注目すべき、相互に関連する2つの政策上のきっかけが生まれると弊社は考えています。
1つ目は、エネルギーインフラの建設加速につながる許認可制度改革について、連邦議会が合意に達することができるかどうかです。2つ目は、議員らがデータセンターに対して、より正式な費用分担要件の設定に動くかどうかです。
最終的な政策の組み合わせは、新規プロジェクトの時期と採算性の両方に影響を与える可能性があると弊社は考えています。承認が早まれば、一部の投資はより魅力的になるでしょう。一方で、開発事業者に追加の送電コストを負担させれば、プロジェクトの建設場所や、採用する電力ソリューションが変わる可能性もあります。政策の枠組みが変化すれば、代替策の重要性が一段と高まる可能性もあります。
もちろん、法案が成立する保証はまったくありません。選挙結果は、こうした協議が続く政治環境を左右します。また、最終的な合意内容は、現在の提案と大きく異なる可能性があります。
ただ、一歩引いて考えると、より大きな示唆があると思います。
AI投資サイクルの大半では、技術革新のスピードと設備投資に関心が集まってきました。しかし今後はますます、電力インフラ、許認可、料金の手頃さをめぐる政策判断も、その投資がどれだけ早く実際の稼働能力につながるかを決めるうえで、同じくらい重要になる可能性があります。
今回の許認可法案は、選挙後にワシントンがこうした課題へどう取り組む可能性があるかを示す初期の兆候です。そして投資家にとって中心的な問いは、企業がAIにいくら投じる意思があるかということよりも、AIを支えるのに必要な電力を、どれだけ早く、どの程度のコストで確保できるかということなのかもしれません。
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高金利で市場の底堅さに亀裂が入ることになるのか
2026/10/09
金利が長期にわたって高止まりするとの見通しにもかかわらず、市場は底堅さを維持しています。弊社の債券リサーチ・グローバル責任者、アンドリュー・シーツが、水面下で高まりつつあるリスクについて考察します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、弊社の債券リサーチ・グローバル責任者、アンドリュー・シーツが登場します。誰もが気になっていると思われる問い、つまり、金利がどの水準まで上昇すると市場にとって問題になるのかについて、さらに掘り下げて考察します。
このエピソードは10月9日にロンドンにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
弊社は先日、ここロンドンで第9回年次欧州クレジット・カンファレンスを開催しました。企業50社と、投資家1,000人以上が参加し、ひとつの問題でもちきりだったとある程度言える展開になりました。
今年の市場は目を見張るほど底堅く推移してきました。しかし、利回りが上昇するなか、この状況はどの時点で変わるのでしょうか。
この問いを考えるうえで、適切な出発点となるのは、現在の金利水準は明らかに間違っているのか否か、ということだと思います。そして私は、間違っていることが明らかになっているとは考えてません。米国、欧州、アジアの成長は意外なほど底堅く、今年の大半を通じてその状態が続いています。一方、各地域のインフレ率は、総じて言えば、中央銀行の目標をまだ上回っています。
つまり、インフレ率は高すぎる状態にあり、経済環境は、冷え込みすぎというよりは過熱している可能性のほうが高そうです。これは、金利水準が間違っているときに示唆される状況とは正反対です。もし金利が高すぎるのであれば経済活動は抑制され、インフレ率は目標より低い水準まで押し下げられるはずだからです。
AI関連支出の規模が大きいこと、そしてその支出が金利の水準からほとんど影響を受けていないことなどのために、金利上昇によって経済活動やインフレが押し下げられる状況は、まだ見られていません。
イールドカーブも、金利水準は今のところ妥当だという見方を裏付けていると思います。中央銀行が政策金利を引き上げすぎたと市場が考える局面では、イールドカーブがいわゆる逆イールドになることがよくあります。現在の金利は高すぎるため、将来、景気が悪くなった時に引き下げる必要が出てくるとの見方から、短期金利が長期金利を上回る状態になるのです。
しかし、現在はそうなっていません。これはかなり重要な指標だと思います。
少し細かい話になりますが、この問いの前提となっている市場の「底堅さ」についても考える必要があると思います。確かに、ある側面では、今年、利回りが大幅に上昇したにもかかわらず、市場は目を見張るほど堅調に推移してきました。米国株と欧州株は、2桁の上昇率を記録しています。リスク・プレミアムの指標であるクレジット・スプレッドは、数十年ぶりの低水準付近にあります。
しかし、表面を一枚めくってみると、その底堅さはそれほど明白ではありません。最も格付けの低い、いわゆるトリプルC格のクレジットのスプレッドは、今年、米国と欧州の両方で大幅に拡大しています。また、低格付けのプライベート・クレジットをポートフォリオに組み入れている上場BDC(ビジネス・デベロップメント・カンパニー)は、帳簿価額を割り込んだ価格で取引されており、その割り込み幅も拡大傾向にあります。
そして、力強い米国株式市場でさえ、弊社の同僚マイク・ウィルソンと米国株式ストラテジー・チームによると、時価総額上位3,000銘柄の半数以上が、6月以降、少なくとも20%下落しています。6月と言えば、ちょうど利回りが上昇し始めた月にあたります。
2026年は、世界経済全体の成長が、当初予想ほどには高金利の影響を受けないことを示しているのかもしれません。米国、欧州、アジアの大規模な財政赤字と、AIへの巨額の支出が、その理由の2つかもしれません。成長が力強く、インフレ率もなお高すぎるなかで、金利は、経済全体の均衡を保つことになると市場が考える水準を、探っているだけなのかもしれません。
しかし、テクノロジー投資と支出のブームを均衡させるのに役立つ金利水準は、規模が小さい、基盤が弱い、あるいは債務負担の大きい企業にとって望ましい金利水準と同じではありません。仮に、経済全体の均衡を保つために高金利が必要だとしても、市場の裾野にあたる弱い部分は、なお打撃を受ける可能性があります。
こうした状況は過去にも見られました。特に2005年がそうでした。
当時は、米国の大規模な財政赤字、中国の設備投資ブーム、そして米国の住宅資産の大幅な増加が、いずれも金利上昇の一因となりました。経済全体はその後も数年間持ちこたえました。しかし、クレジット市場の弱い部分は、そうした金利によって、より早く厳しい状況に直面しました。
弊社は、現在も同じことが起きているのかもしれないと考えており、そのため、より質の高い資産を選好しています。また、ローンよりもハイイールド債を選好しており、クレジット指数では、銘柄間のスプレッド格差が拡大する「ディコンプレッション」と呼ばれる展開を見込んでいます。
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中間選挙はAI投資サイクルの試金石となるか
2026/10/07
AI投資ブームは、市場を方向づける大きな原動力となっています。弊社の米国公共政策リサーチ責任者アリアナ・サルバトーレが、米国の中間選挙によって、AI投資ブームを支える支出や政策が変化する可能性について考察します。
このエピソードを英語で聴く。
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回のエピソードでは、弊社の米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、中間選挙がAI投資サイクルにどのような意味を持ち得るのかについて解説します。
このエピソードは10月7日にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
私は以前、このポッドキャストで中間選挙がもたらす幅広い影響についてお話ししました。
今回は、中間選挙が特にAIに対する市場心理にどのような意味を持ち得るのか、もう少し掘り下げてお話ししたいと思います。
弊社では、これを2つの異なる経路に分けて考えています。1つ目はデータセンター建設に対する反対の動きで、選挙が重要なきっかけになり得るとみています。2つ目は、より広い意味でのAIの安全性と規制です。こちらについては、選挙結果の重要性は1つ目よりもはるかに低いと考えています。
この区別は重要です。つまり、中間選挙によってAIをめぐるルールが根本から書き換えられるというよりも、AIインフラ投資のペースや持続性に対する投資家の信頼感が左右される可能性の方が高いということです。
まずは、データセンターから見ていきましょう。弊社の基本シナリオは、引き続き条件付きで建設が進むというものです。AIインフラへの大規模な投資は今後も続くとみていますが、電力コスト、送電網への投資、立地、許認可、水の使用、地域社会への影響といった条件にますます左右されるようになると考えています。データセンター開発が連邦レベルで広く一時停止されるとはみていません。
AIの計算処理能力は、特に中国との競争を考えると、米国政府では戦略的インフラとみなされる傾向が強まっています。そのため、国家安全保障という観点からは、今後もインフラ建設が後押しされると弊社は考えています。
しかし、今回の選挙について重要なことは次の点です。実際にプロジェクトの遅れにつながる政策手段の多くは、連邦政府よりも下のレベルにあります。たとえば、電力系統への接続承認、大口電力需要家向けの電気料金、土地利用規制、水利用の許可、税制上の優遇措置などです。これらは一般に、州政府、公益事業委員会、地方自治体が管轄しています。
したがって、AIインフラに関しては、特定の上院議席をどの党が獲得するかよりも、最終的には州知事、州議会、公益事業委員会の方が重要になる可能性があると、弊社は考えています。
そして、ここから市場心理の話につながります。
連邦レベルでは、AIインフラに対する市場心理として、最も前向きに受け止められる可能性が高いのは、共和党が上下両院を制した場合とみています。これは、投資家が今後の規制上の制約が少なくなると予想する可能性が高いためです。また、許認可制度の改革、発電能力の増強、連邦所有地での開発が積極的に支援される可能性も高まると考えられます。
ねじれ議会となる場合は、現状維持に近い展開になると弊社は考えています。インフラ建設の持続性をめぐる不透明感は残りますが、連邦レベルの政策決定が行き詰まることで、実質的な判断の多くは引き続き州や地方レベルに委ねられることになります。
最後に、民主党が上下両院を制した場合は、市場にとって最も前向きに受け止めにくい展開になるとみています。ただし重要なのは、先ほど述べたように、データセンター建設が全米で一時停止されると予想しているわけではないという点です。むしろ投資家は、民主党が予想以上に議席を伸ばした場合、短期的には地方レベルの規制が強化される可能性が高まり、さらに次回の2028年選挙後には連邦レベルの監視が大幅に強まる可能性があると受け止めるかもしれません。
ここまではインフラ面についてお話ししました。では、より広い意味でのAI規制についてはどうでしょうか。こちらについては、中間選挙の影響は実際にははるかに小さいと考えています。包括的な新しい連邦規制の枠組みが導入されるのではなく、段階的かつ細分化された規制が進むというのが、引き続き弊社の見方です。
AIの安全性、データガバナンス、最先端モデルの監督については、対象を絞った対応が取られる可能性は十分にあると弊社はみています。ただし、社会的な注目を集めるほど重大な安全上またはセキュリティ上の事案が起きない限り、議会の構成そのものが、包括的な法制化の引き金になる可能性は低いと考えています。テクノロジーに関する制限やAIモデルへのアクセスについては、今後も行政機関がより重要な役割を担う可能性が高いでしょう。
ここから、投資家にとっての主なポイントが見えてきます。中間選挙によって、AI投資サイクルが続くかどうかが決まる可能性は低いでしょう。米国の計算処理能力を拡大する戦略的な意義は、引き続き変わらないと弊社は考えています。
一方で、中間選挙が影響を及ぼし得るのは、インフラ建設をめぐる問題です。プロジェクトがどこに建設されるのか、どれほど迅速に承認されるのか、誰がコストを負担するのか、そして最終的に、AI関連の設備投資が持続するとの見方に投資家がどれほど確信を持てるのか、という点です。
したがって、11月の選挙をAIという観点から考える際には、弊社は連邦レベルの動向を注視します。しかし、多くの場合、より重要なシグナルは、州知事選、公益事業委員会、地方選挙から得られる可能性があります。AIをめぐる政治が、実際にインフラを建設するうえでの物理的な制約と関わる場所は、まさにそこだからです。
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日本の銀行業界、新時代へ
2026/10/06
弊社の日本の金融業界担当アナリスト、長坂美亜が、30年に一度の設備投資サイクルが法人金融の姿をどのように変え、日本の銀行に新たな成長の章を切り開く可能性があるのかを解説します。
トランスクリプト
市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
私は、モルガン・スタンレーMUFG証券の日本金融セクター調査責任者、長坂美亜と申します。30年に一度の投資サイクルが、投資家の日本の銀行に対する見方を変えつつあります。
東京では、10月6日(火)午前10時です。
日本では企業が投資機会よりも手元資金を多く抱えていた数十年を得て、こうした資金調達ニーズがますます重要になってきています。そしてこれは日本の銀行にとって、新たな章の始まりを告げるものだと考えております。
銀行株の回復の第一段階は、主に金利が焦点となりました。 日本がマイナス金利政策から脱却するにつれ、貸出利回りの上昇が銀行の利ざやと収益を押し上げてきました。
次の段階では、企業の投資拡大や資金需要の拡大を原動力として、銀行事業そのものが成長していくことになります。 実際、ここ約30年ぶりの本格的な設備投資サイクルに入ろうとしていると我々は考えています。
省力化技術から老朽化した設備の更新に至るまで、投資ニーズは広がりを見せています。 また、企業は、より高いリターンが見込める事業へ資本を再配分する動きを活発化させています。
銀行にとって、最も直接的なビジネスチャンスは貸出です。 日本の国内ローン市場は、2026年3月期には約588兆円(約3.7兆米ドル)であったものが、2031年3月期までには約712兆円(約4.5兆米ドル)に拡大すると弊社は見込んでいます。
投資サイクルの初期段階では、貸出残高の伸び率は年率約5%程度となる可能性がありますが、その後は3~4%程度に落ち着くと弊社は見ています。 また、資金調達の機会は貸出だけにはとどまりません。
例えば、企業が社債を発行して資金を調達する日本の債務資本市場を例に挙げたいと思います 。 2031年3月までに、その規模は約52兆円(およそ3,310億ドル)から63兆円(およそ4,010億ドル)へ 拡大すると弊社はみています。
また、同期間において、M&A市場規模は23兆円(約1,460億ドル)から32兆円(約2,040億ドル)へと拡大すると予測しています。 大規模なプロジェクトでは、多くの場合、複数の資金調達手段が必要となるため、貸出を行うことで、引受手数料やアドバイザリー手数料の獲得につながる可能性もあるかと思います 。
これにより、銀行は収益を上げるための手段をさらに増やすことができるかと思います。 初期段階においては、銀行は主に融資やプロジェクトファイナンスを通じて利益を得ることができます。
プロジェクトが成熟するにつれて、資本市場やM&Aといった手数料収入を基盤とする事業が、より大きな貢献を果たせるようになるかと思います。
このことから、この機会は一時的な融資ブームというよりは、むしろ複数 段階にわたる資金調達サイクルのように見えます。 注目すべき主要指標は自己資本利益率(ROE)であり、これは銀行が株主資本をどれほど効率的に利益に転換しているかを示すものです。
現在、日本のメガバンクは、ROEがおよそ10~11%を記録していますが、 中期的には、約15%に達すると弊社はみています。 企業による資金調達需要の構造的な増加だけでも、約1~1.5パーセントポイントの押し上げ要因となる可能性があります。
つまり、より重要な点は、単に金利が上昇したということだけではありません。 日本は、貯蓄過剰と投資不足が特徴だった経済から、企業が成長のために資本を必要とする経済へと移行しつつあるのかもしれないということです。
その変化が続けば、銀行はバランスシートを活用する上で、はるかに生産性の高い機会を得られる可能性があります。
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株式と債券の緊張関係
2026/10/02
弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、金利上昇が株式のバリュエーション、企業利益、投資家の投資意欲にとって何を意味し得るかを解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、債券利回りが上昇する中での株式の底堅さについてお話します。
このエピソードは10月2日にロンドンで収録されたものです。
このエピソードを英語で聴くには、エピソードの説明欄にあるリンクをクリックしてください。
指標となる10年米国債利回りは今年、およそ100ベーシスポイント上昇しました。同時に、世界の株式は13%程度上昇しています。そして、この2つの事実の間には居心地の悪い緊張関係があります。
そもそも、債券利回りの上昇は、他の投資先でより高いリターンを得る選択肢を投資家に与えるとともに、将来の企業利益の現在価値も低下させるため、理論上は株価を押し下げるはずです。
しかし、ここには見落とされがちな点があります。
そのバリュエーション理論には、実際には2つの変動要素があります。ここで弊社が言っているのは、配当割引モデル、またはゴードン成長モデルと呼ばれるものであり、企業の現在価値は、配当の価値を、要求収益率と成長率の差で割ったものとなります。
金利上昇によって押し上げられる要求収益率が高いほど、株式のバリュエーションにはマイナスとなります。分母が大きくなるためです。しかし、成長率の上昇は逆方向に作用します。分母が小さくなり、企業価値が高まるのです。
これは直感的に理解できるはずです。企業がより高いリターンのハードルを満たさなければならない場合、その現在価値は低下します。他の条件がすべて同じならば、企業の成長が速いほど、その価値は高くなります。そして弊社は、この点が現在の市場で実際に起きていることを説明するのに大きく役立つと考えます。企業利益が急速に増加しているためです。
過去1年間で、S&P 500指数構成企業の利益はおよそ30%増加しており、企業の利益成長率の中央値も依然として10%台半ばです。欧州、アジア、新興国市場の成長率も、歴史的に見て力強い水準にあります。
実際、1月1日の時点で、S&P 500が13%程度上昇すると同時に、米国債利回りがおよそ100ベーシスポイント上昇すると告げられていたならば、弊社はおそらく、株式は債券と比べてより割高に見えるだろうと、それなりの確信をもって答えていたはずです。
しかし、実際にはそうなっていません。利回りが上昇する中、株式市場のバリュエーションである株価収益率(PER)は大幅に低下しました。それでも、利益がそれをはるかに上回るペースで増加したため、株価はなお上昇しています。また、いわゆる株式リスクプレミアム、すなわち株式益回りと債券利回りの差は、年初来でかなり安定しています。
さて、利回り上昇が株式市場に悪影響を及ぼし得る経路はもう1つあります。人々が単純に株式を売却し、より利回りの高い債券を購入する可能性です。しかし今のところ、そうした動きを示す証拠は見られていません。弊社が追跡している資金フローは引き続き、株式と債券の双方に資金が流入していることを示しています。
また、2つの市場は日々同じ方向に動いています。両市場は正の相関を示しており、これは人々が一方から他方へ資金を移している場合に予想される結果ではありません。
この議論において、企業が発言権を持つ興味深い側面もあります。投資家は日々市場を見て、利回りが購入したいほど十分に高いかどうかを判断します。しかし企業は同じ利回りを見て、「我々が売りたいと思うほど十分に低いか」と問います。これは、特にAIインフラ整備の資金を調達している企業、すなわち多額のAI投資を行う必要がある大手テクノロジー企業に当てはまります。そうした企業の多くは、利回りが上昇した現在でも、この水準は起債に魅力的であり、例えば株式の追加発行よりも有利だと判断しています。
株式と債券の間、または実際にはあらゆる資産クラス間の長期的なバリュエーションを議論する際に、常に念頭に置くべきもう1つの重要な要因は、バリュエーションがゆっくりと作用する力であるという点です。バリュエーションは、今後6カ月、さらには12カ月の動きを予測するうえで、多くの場合、それほど有効ではありません。実際、株式市場の益回り、すなわちPERの逆数と、債券市場の利回りとの差を考えてみると、その差が翌月の株式と債券のリターンの差を説明する割合はおよそ10%にすぎません。
もっとも、バリュエーションは、時間軸を長くするほど有効性が高まります。そこで、その時間軸を今後3年間に延ばすと、債券と株式の間のバリュエーション格差は、3年間の結果のおよそ半分を説明します。
市場は、四半期に一度解かれる方程式ではありません。市場とは、将来を巡る継続的な議論です。そして成長が力強いとき、投資家は成長とその将来の潜在力をより好意的に評価しようとします。
弊社は、この点が、米国債利回りが5%を大きく上回っているにもかかわらず株式市場が底堅い理由を説明するうえで大きく役立つと考えます。しかし同時に、求められるハードルも上がります。
利回りの上昇は、利益が期待を下回る余地を単純に小さくします。そうした利益は、急速に成長し続ける必要があります。
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中間選挙を前に注目すべき4つの市場シグナル
2026/09/30
投資家が米国の中間選挙に目を向けるなか、最大の焦点は、何が変わり得るのかという点です。弊社の米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、注目すべきシグナルについて解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社の米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、来たる2026年の中間選挙について解説します。
このエピソードは9月30日にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
選挙が徐々に近づくなか、投資家からは、どのような影響が生じ得るのかという質問が増えています。弊社はこのほど、見通しを詳しく分析したレポートを発表し、そこから4つの重要なポイントを導き出しました。
第1に、中間選挙によって、行政府主導の政策課題の根幹が変わる可能性は低いとみています。弊社が以前から指摘しているように、2025年初め以降、市場が直面してきた政策の不確実性の多くは、実際には議会ではなく行政府から生じています。
関税、通商政策、規制緩和、移民政策、輸出規制はいずれも、選挙後も引き続きホワイトハウスの権限の下にある政策要因です。そのため、たとえ議会の多数派が変わっても、こうした政策課題がそのまま消えると投資家が考えるべきではないと弊社はみています。一方、議会がより大きな役割を果たすのは財政政策です。ただし、そこでも想定される結果の幅は比較的限られています。
選挙結果によって主に違いが出るのは、予定されている補足的栄養支援プログラムのSNAPとメディケイドの削減時期、国防支出、そして今後の政府資金の確保や債務上限をめぐる交渉がどのように進展するか、という点にあります。
以上が第1のポイントです。中間選挙によって統治の進め方は変わり得ますが、行政府の政策課題の大きな方向性までは、おそらく変わりません。つまり、少なくとも今お話しした政策分野では、不確実性の高い状態が続く可能性があります。
第2のポイントですが、中間選挙を2028年の大統領選挙に直結するシグナルとして捉えることには、慎重であるべきです。過去を振り返ると、中間選挙で中心となった争点が、必ずしも次の大統領選挙でも中心の論点になるとは限りません。
1994年以降の6回の中間選挙から大統領選挙までのサイクルを見ると、最重要とされた争点は、そのうち5回で変わっています。また、大統領選挙で最終的に決定的となった争点が、中間選挙の時点ですでに表面化していたのは、6回のうち2回にすぎません。ただし、選挙からは、政策をめぐる対立軸がどこで形成され始めているかを読み取ることができます。
この観点から、弊社は特に4つの議論に注目しています。財政と社会保障をめぐる議論、個人課税をめぐる状況、データセンター開発への規制、そしてヘルスケアです。弊社の見方では、これらの論点から得られる有用なシグナルは、単にどの政党がより多くの議席を獲得するかではありません。重要なのは、これらの政策のどのような形が、有権者や各政党内で支持を集め始めているかです。
ここから第3のポイントにつながります。AIは中間選挙の影響を受け得る分野の一つですが、その影響は幅広いAI規制というより、主にデータセンター政策を通じて表れるとみています。
この2つの論点は分けて考えることが重要です。まずデータセンターについて、弊社は中間選挙が変化のきっかけになるとみています。なぜなら、最も重要な政策手段の多くが州・地方レベルにあるからです。具体的には、許認可、立地、電力網への接続、大口需要家向け電気料金、税制優遇措置などです。つまり、議会そのものよりも、州知事、公益事業委員会、州議会のほうが、開発のペースや立地に対して、実際にはるかに直接的な影響を及ぼし得るということです。
こうした観点から、弊社の基本シナリオは引き続き「条件付きの設備拡大」です。つまり、想定される水準のAI設備投資は継続すると考えられますが、今後は、電力コスト、インフラ、水資源、地域社会への影響といった懸念に開発事業者が対応できる地域へ、投資が一段と集中していく可能性が高いということです。
一方、より広範なAI安全規制は事情が異なります。こちらについては、政権や議会の構成は実際にはさほど重要ではないと弊社はみています。大きな注目を集める出来事や事故がない限り、近い将来に包括的な連邦法が成立する可能性はかなり低いと考えられるからです。したがって、議会をどの党が掌握するかが、必ずしも主要な決定要因になるわけではありません。
最後に第4のポイントですが、市場への影響は、マクロ面よりもミクロ面で多く表れるとみています。株式市場では、議会多数派の構成と結束の度合いが、個別セクターに影響する可能性があります。たとえば、予定されているSNAPやメディケイドの削減について、変更を交渉できる議会であれば、消費関連企業やヘルスケア企業に影響が及ぶ可能性があります。
AI関連セクターも、データセンター規制をめぐる見通しや投資家心理の変化に反応する可能性があります。金利については、選挙結果が、予想される財政赤字を大きく変えるような財政政策につながるかどうかが焦点です。
財政調整措置を今後も政策実現の手段として活用できる余地が残るのは、共和党が上下両院の多数派を維持する場合のみです。一方、ねじれ議会となれば、新たな法案を成立させる余地は狭まり、予算措置や債務上限をめぐる交渉の重要性が一段と高まるでしょう。また、ドルについては、弊社のストラテジストは、選挙そのものよりも、主に米国債利回りや米国の成長見通しを通じて影響が波及するとみています。
結論として、2026年の中間選挙によって、政策環境やマクロ経済の状況が全面的に変わる可能性は低いと考えています。ただし、選挙に至るまでの過程から得られる重要な示唆は数多くあるでしょう。
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中国の製造業高度化を支える12兆ドルの投資
2026/09/29
弊社の中国インダストリアルズ・アナリスト、シェン・ジョンが、AI、ロボティクス、そして大規模な投資サイクルによって、中国の製造基盤と、グローバル・サプライチェーンにおける中国の役割がどのように変わり得るのかを解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、弊社の中国インダストリアルズ・アナリスト、シェン・ジョンが登場します。AIと自動化が中国の工場をどのように変えつつあるのか、そしてそれが世界の製造業にとって何を意味し得るのかをお話しします。
このエピソードは9月29日に香港にて収録されたものです。
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何十年もの間、「メイド・イン・チャイナ」と言えば、規模、スピード、そして低コスト製造の代名詞でした。しかし今、中国の製造業は、より野心的な方向へと転換しつつあります。テクノロジー、生産性、そして産業のノウハウを活用し、何を作るかだけでなく、どのように作るかまで変えようとしているのです。
弊社は、この移行を「インダストリー5.0」と呼んでいます。インダストリー4.0は、機械と機械をつなぎ合わせ、生産をデジタル化する取り組みでした。インダストリー5.0はこれをさらに一歩進め、AIを活用して、工場の生産計画、品質管理、設備保全の方法を改善しようというものです。
中国は、すでに圧倒的な規模の製造基盤を有しています。世界の製造業付加価値のおよそ28%を占め、国連が定義する666の産業小分類をすべて網羅しています。すでに基礎レベルのスマート工場が3万カ所以上あり、ネットワークにつながった産業機器は1億台を超えています。
こうした産業基盤は、ロボティクスにおいても中国に強固な土台をもたらします。従来の産業用ロボットは、あらかじめ設定された特定の作業を繰り返すのが一般的です。一方、身体性AIを導入すれば、ソフトウェアやモデルの更新を通じて新たな能力を獲得できるようになり、機械の柔軟性が高まる可能性があります。つまり、一部の肉体労働を、ソフトウェアによって機能を更新できる資本へと転換できる可能性があるのです。
そして、それに関連する数字を見ていくと、これがどれほど急速に拡大し得るかが分かります。中国のロボット年間販売台数は、2025年の約800万台から、2030年には2,900万台、2035年には7,600万台に増える可能性があります。わずか10年間で、年間販売台数がおよそ9倍になる計算です。
これほど大規模な製造基盤全体にロボティクスとAIを広げるには、多額の資本が必要になります。弊社では、インダストリー5.0によって、2026年から2035年にかけて、中国で約12兆ドルの追加的な産業投資がなされる可能性があると推計しています。このうち約5兆5,000億ドルは、ロボティクス、スマート機器、ソフトウェアなどの工場高度化に向けられ、約6兆ドルは新たな生産能力の整備に向けられる見通しです。
ただし、この投資サイクルは段階的に進む可能性が高そうです。産業設備投資の伸び率は、2026年と2027年には年率約4~5%となり、その後、余剰生産能力が吸収され、技術上のボトルネックが緩和し、工場全体でAIの導入が広がるにつれて、2028年以降は6~7%程度へ加速すると弊社は予想しています。
こうした投資が生産性の向上につながれば、経済への影響は大きなものになり得ます。2035年までに、中国の産業部門の利益率は、現在のおよそ5%から8%へ拡大する可能性があります。インダストリー5.0によって、中国の潜在GDPの水準は約3.5%押し上げられ、高齢化による下押し圧力の一部を和らげることが期待されます。また、世界の製造業付加価値に占める中国の比率も、約28%から30%へ上昇する可能性があるでしょう。
そして、こうした変化は中国国内にはとどまりません。最終組立の拠点は別の場所へ移すことができますが、それを支えるサプライヤーのネットワーク、機械、生産ノウハウを再現するのははるかに困難です。弊社の推計では、中国から米国への輸出のうち、容易に代替できるのは約40%にすぎません。
つまり、中国の役割は、完成品の輸出にとどまらず、ほかの国で完成品を作るために使われる設備、部品、産業システムを供給することへと、ますます広がっていく可能性があるのです。これは、「メイド・イン・チャイナ」から「メイド・バイ・チャイナ」への移行にほかなりません。
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株式市場のすそ野の悪化
2026/09/28
2026年の株式市場の上昇をけん引する企業の数が、以前よりも少なくなっています。弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、年末に向かうなかで上昇相場のすそ野が狭まっていることを、投資家はどう受け止めるべきか解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストであるマイク・ウィルソンが、株式市場のすそ野の悪化について解説します。
このエピソードは9月28日にニューヨークにて収録されたものです。
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今年、株式市場は上昇しています。これは良いニュースです。ただ、この6週間は、どうしても気になる現象がひとつ見られました。今回の上昇相場を支える銘柄の数が、次第に減っているのです。
ラッセル3000指数の構成銘柄の半数以上が、6月につけた高値を少なくとも20%下回っています。また、S&P500指数の予想株価収益率は19倍にまで低下しており、年初来で最も低い水準に近づいています。その一方で、S&P500指数では構成銘柄の利益成長率の中央値が依然として10%台半ばにあり、業績予想の上方修正の動きも広がって今回のサイクルのピークに近づいています。
これは、市場が楽観に傾きすぎているということではありません。むしろ、エネルギーコストの上昇、金融引き締め姿勢を強めるFRB、AIによる事業環境の変化、投下資本利益率をめぐる懸念、そして地政学リスクを織り込むために、市場はすでに相当な調整を進めてきました。
先週のポッドキャストで申し上げたように、これは典型的な景気サイクル中盤の動きです。利益の伸びがバリュエーション低下の影響を吸収し、相場の主役が、景気サイクル初期に上昇した銘柄からクオリティ銘柄へと移りつつあります。
ローリング・リセッションの底から力強く相場をけん引してきた自動車、半導体、短期循環型の資本財といった業種が、最近では特に弱い分野となっています。
景気サイクルが成熟し、FRBの姿勢が市場にとって以前ほど追い風ではなくなると、こうしたことが起こりやすくなります。市場は高ベータ銘柄に高い評価を与えなくなります。そして、フリーキャッシュフロー、安定した利益率、事業運営の効率性、さらに業績予想がなお上方修正されている企業を評価し始めます。だからこそ弊社は、引き続き大型優良株を選好しています。なかでも、資産をあまり多く持たず、サービスを中心に提供し、手数料収入を基盤とする企業に注目しています。
とはいえ、まだ解消すべき問題が一つあります。夏の大半を通じて、原油価格と債券利回りが上昇するなかでも、市場のすそ野は良くなっていました。しかし、ジャクソンホール会議の後にこれが悪化に転じました。FRBのよりタカ派的な反応関数を市場が織り込み始めたのが、ちょうどこの時期にあたります。株価が200日移動平均線を上回るS&P500指数構成銘柄の割合は、およそ75%から50%未満へと低下しました。しかし指数そのものは、それよりもはるかに底堅く推移しました。
この乖離がいつまでも続くことはありません。市場のすそ野の広がりが指数の水準に追いつくか、あるいは指数が下落して市場のすそ野の広がりに近づくかのどちらかです。債券市場のボラティリティが早期に落ち着かなければ、その影響が株式市場のボラティリティにも波及し、S&P500指数が5~10%ほど下落する可能性があるでしょう。
率直に言えば、弊社はそうした下落を歓迎します。指数全体がついに調整するに至り、それによって水面下で数カ月続いてきた調整局面が終わることも多いためです。
FRBが先日、利上げ方向へ転換じたことに、大きな関心が集まっています。しかし、2年国債利回りはすでに、FRBの見通しが示唆する水準を上回っています。弊社には、債券市場が当面の展開についてタカ派に傾きすぎているように見えます。
それより大きな不確実性は、新しいFRB議長が流動性とバランスシートにどう向き合っていくかです。新議長は前任者たちよりもマネタリスト的な考え方を持っており、それが実務上何を意味するのかを、市場はまだ見極めようとしている最中です。
弊社では、金融環境が過度に引き締まれば、FRBは最終的に流動性を供給するとみています。ただ、市場はその前に、FRBが本当にそうするか否かを試そうとするかもしれません。注目すべきシグナルは、債券市場のボラティリティ、資金調達面のストレス、そして株式市場のボラティリティがそれに追随するかどうかです。こうした圧力が弱まれば、市場のすそ野の広がりが指数に追いつき、相場をさらに押し上げる可能性があります。圧力が緩和されなければ、指数が調整する余地もおそらく大きくなるでしょう。
投資家にとっては、もう一つ新たな前向きなテーマも生まれています。それは、AIの導入が、期待の段階から実践の段階へ移りつつあることです。AIの導入が進んでいる企業では、利益率と業績の傾向がより力強くなっていますが、市場のコンセンサス予想はまだ、そうした効果の多くが数年先には薄れると見込んでいます。
弊社では、その見方は保守的すぎると考えています。生産性の向上はすぐに消えるのではなく、積み重なっていくことが多いものです。利益の勢いは、AIを実現する側の企業からAIを導入する側の企業へと広がっています。一方で、AIを導入する側の企業のバリュエーションは調整し、より魅力的な水準になっています。こうした状況で後押しされるのは、両方を組み合わせるバーベル型の投資戦略です。つまり、利益の持続性によって割高な評価が正当化できる一部のAIを支える企業を保有しつつ、ファンダメンタルズの改善が市場予想にまだ十分織り込まれていないAI導入企業の保有を増やしていく、という考え方です。
まとめましょう。市場はリスクを無視しているわけではありません。それどころか、バリュエーションの低下、市場のすそ野の広がりの悪化、そして主役の大幅な交代を通じて、リスクを織り込んできています。解消されていないのは、底堅い指数と、それよりはるかに弱い平均的な銘柄との間にあるギャップなのです。
結論としては、株価指数が史上最高値へ一気に上昇する前に、おそらく市場のすそ野が改善し、指数水準もいったん下落する可能性が高いとみています。だからこそ弊社は、引き続き大型優良株をオーバーウェイトしたいと考えていますが、10月に相場が弱含む局面では、よりリスクの高い銘柄を買い増す方針です。
市場には、もう一度、不愉快な調整が必要なのかもしれません。ただ、それこそが年末に向けての、より力強い相場展開の土台になるかもしれないのです。今後も市場を読み解くヒントをお届けします。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回の内容が、皆さまにとって有益でお役に立つものであれば幸いです。よろしければ、レビューをお寄せいただき、ご感想をお聞かせください。また、「市場の風を読む」Thoughts on the Marketに価値を感じていただけましたら、ぜひご友人や同僚の方にも番組をご紹介ください。
AIの安全性がもたらす意外な投資機会
2026/09/23
AIの安全性に関する要件が強化されれば、AI投資のペースが変わる可能性があります。アリアナ・サルバトーレが、そうした支出がなぜ縮小ではなく、より多くのコンピュートへ向かう可能性があるのかを掘り下げます。
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市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社米国公共政策リサーチ責任者であるアリアナ・サルバトーレが、弊社グローバルリサーチ副責任者であるマイケル・ゼザスと対談しました。テーマはAIの安全性と規制です。これからお聞きいただくのは、その対談の抜粋です。
このエピソードは9月23日にニューヨークにて収録されたものです。
英語版のエピソード全編をお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
弊社は先週、AIのフロンティアモデルの能力向上と、それに伴う安全上のリスクについてのレポートを発表しました。
これはここ数週間、注目を集めており、政府による規制が今後どのような道筋をたどるのかについて、数多くの質問をいただいています。
そこで今日は、マイクと私で、最近の新たな展開と、弊社が今後の方向性をどう見ているか、そして中間選挙がその道筋にどのような影響を及ぼし得るのかについてお話しします。
弊社は、今後の展開について、5つのシナリオがあると見ています。業界による自主規制を含むものもあれば、政府のより強い介入を見込むものもあります。ただ、そのいずれにおいても、先ほどお話ししたように、コンピュート支出とより広い設備投資の大きな追い風になると考えています。
その理由は、AI企業がより高度なセキュリティ監視インフラを組み込むにつれて、こうした支出は加速する一方だと思われるためです。大規模言語モデルの能力が非線形に高まるなかでは、なおさらです。同様に規制面でも、大規模で包括的なAI規制法案の成立を妨げる要因がいくつかあると見ています。
そうした法案が実現するには、大きく3つの主要な障害があると思われます。
1つ目は政治です。実際、大統領自身が何らかの大規模な規制には反対だと述べています。2つ目は手続きです。仕組み上、この種の規制の土台となる法的な受け皿が必要ですが、すぐに整備できるとは考えにくいでしょう。そして3つ目は前例です。
過去の例を見ると、通常、規制は何らかの注目度の高い出来事をきっかけに進みます。ですから、政府の反応に関する弊社の枠組みは、その出来事の注目度と、政策手段の利用可能性という2つがカギとなります。政策手段の利用可能性とは、政府がこの方向で活用できる手段をすでにどの程度持っているかです。
これが今後についての弊社の考えです。これは、政策対応の可能性が全くないという意味ではありません。ただ、今後数年にわたり、設備投資とコンピュート支出が増加するという弊社の見方を支えるものです。
弊社は、近いうちに包括的なAI規制当局が設けられるとは予想していません。重要なのは、オープンウェイトモデルに対する広範な規制も予想していないという点です。その理由は3つあります。まず、弊社の見たところ、米国は中国との間で管理された安定的な関係を維持したいと考えているためです。
弊社は米中首脳会談を巡る見通しについても書いています。これは微妙なバランスであり、今後も続く可能性が高いと見ています。そのため、オープンウェイトモデルを過度に制限すると、弊社が想定しているその均衡がやや崩れる可能性があります。これが1つ目の理由です。
2つ目の理由は普及です。弊社は、米政権がオープンウェイトモデルの広がりを望んでいると考えています。企業がオープンウェイトとクローズドウェイトを何らかの形で組み合わせて使っていることも分かっています。したがって、こうしたモデルを禁止することで導入が遅れるのであれば、それは政権の利益にはならないと考えています。
3つ目の理由は、純粋に実務上の問題です。このような制限の実施は非常に困難です。モデルウェイトがいったんオンラインで公開されると、それがどこの誰に渡るのかを厳密に統制するのは非常に難しくなります。
当然ながら、企業はそれらをダウンロードできるし、カスタマイズなどもできます。ですから、実施面でも非常に困難です。とはいえ、行政府が継続的に関与し、規制面で段階的な調整や変更を行うことはあり得ます。ただし、それは現在議会で見られる一部の提案ほど厳しいものにはならない可能性が高いでしょう。キルスイッチ法などは、基本的に、一定の基準を超えた場合に、企業が即座にAIを停止できることを義務付けるものです。
こうしたものが実現する可能性は低いと見ています。ただし、安全基準やガードレールの設定などは、政権による取り組みが近いうちに行われる可能性があるでしょう。
このため、弊社チームのテーマ別の推奨は維持されています。つまり、今までの話はすべてが設備投資とコンピュート供給への追い風になるという見方です。
その流れのなかで、弊社は引き続き、推論コンピュートのボトルネックに投資機会があると考えています。供給を上回る需要があるためです。こうした状況は、ほとんどの政策シナリオにかかわらず続くと見ています。
また、先ほど申し上げたように、サイバーセキュリティのリーダー企業にも投資機会があると考えています。オープンウェイトモデルの能力が大幅に高まるにつれて、支出が増加するためです。そして3つ目として、AI導入企業にも投資機会があると見ています。AIモデルはすでに大きな生産性向上をもたらす能力があり、その能力は今後も向上していくと思われます。
最後に触れておきたいのは、このポッドキャストではあまり取り上げませんでしたが、こうした対談では通常、AI主権や、米中間の制限についても話題にしています。
その観点では、米中間の技術移転規制の強化から悪影響を受けるエクスポージャーは避けるべきでしょう。各国政府がより積極的な役割を果たすようになり、その可能性は高まっていると思われます。そしてそれが、グローバル市場の二極化を促すと見ています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
各国中銀が再び利上げに動く理由
2026/09/22
インフレリスクが高まる中、各国中央銀行はタカ派姿勢を強めています。弊社グローバル・チーフ・エコノミスト兼マクロ・リサーチ責任者のセス・カーペンターが、これがFRB、ECB、日本銀行にとって何を意味するのかを解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社グローバル・チーフ・エコノミスト兼マクロ・リサーチ責任者のセス・カーペンターが、各国中央銀行に見られる動きと、それによって弊社の見通しがどのように変化しているのかについてお話しします。
このエピソードは9月22日にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
この2週間で、弊社のエコノミストは、FRB、ECB、日銀に関する見通しを修正し、予想利上げ回数を増やしました。
それぞれの経済が直面している課題は異なりますが、3つの中央銀行はいずれも、おおむね同じ結論にたどり着いています。世界経済にさまざまなショックが及ぶ中でも成長は驚くほど底堅く、エネルギー価格の上昇圧力が再び強まったことで、インフレが従来の想定よりも長引くリスクが高まっている、ということです。
最も分かりやすい例であり、弊社が今回最も大きく見通しを修正したのが、FRBです。
今年の大半の期間、弊社は実のところ、FRBが利上げをまったく行わない可能性もあると考えていました。しかし、今回9月のFOMC会合で実施された利上げに加えて、弊社では現在、12月と3月にさらに2回の利上げが行われると予想しています。これにより、最終到達点となる政策金利は4.25%から4.5%のレンジに引き上げられる見通しです。
ウォーシュ議長は、エネルギー価格や商品価格の上昇がインフレに及ぼす影響を強調してきましたが、私にとってより重要なシグナルは、政策が十分に引き締め的ではないという評価でした。
つまり弊社の見方では、FRBはインフレ見通しだけでなく、インフレ率を持続的に目標へ戻すためにどの程度の引き締めが必要なのかについても、再評価しているように見えます。
とはいえ、それでも弊社は今回の変化について、FRBの政策が根本的に転換したというよりは、政策の再調整に近いものと見ています。ですので、市場は、残された利上げ幅を、もしかすると、ほんの少し過大評価しているのかもしれません。
しかし、この変化には市場への明確かつ重要なインプリケーションがあります。
弊社の金利ストラテジストは、投資家が当面、追加引き締め予想を前倒しで織り込む一方で、成長が鈍化し始める前に、政策金利をどの程度長く引き締め的な水準に維持できるのかを、ますます疑問視するようになると予想しています。
ただ、より広く見れば、FRBはエネルギー主導のインフレ圧力にこれまでよりもやや敏感になっているようであり、それがドル高を見込む根拠を強めています。
ここ数カ月、エネルギー価格の上昇はユーロを支えてきました。投資家は、ECBがFRBよりも積極的に対応していると受け止めてきたためです。しかし、かつてのそうした非対称性は変わりつつあるのかもしれません。
そのため、弊社の為替ストラテジストは引き続きドル高を選好しており、とりわけ円に対してドルが強含むと見ています。
欧州も、FRBと同様のインフレ課題に直面しています。ただし、そのメカニズムは異なります。
天然ガスやその他のエネルギー価格が再び上昇したことで、弊社のエコノミストはインフレ見通しを大幅に引き上げ、その結果、12月にECBがもう一度利上げを行うとの見方を追加しました。
ただし、見通しを変えた要因はエネルギー価格そのものだけではない、という点を覚えておく必要があります。
ユーロ圏の経済活動も、弊社の予想を大きく上回る底堅さを示しています。そのため、小幅な追加引き締めが成長の腰を折るのではないかという懸念は和らいでいます。
これらを総合すると、ECBは、エネルギーコストの上昇がより広範なインフレ動向に波及するのを防ぐことに、ますます重点を置いていると言えます。
一方、日本は違って見えるかもしれませんが、根底にあるストーリーは驚くほど似ています。
何十年もの間、日銀にとっての課題はインフレを生み出すことでした。しかし現在、政策当局者は、インフレ率が目標を上回る可能性をますます懸念するようになっています。
先週の日銀の利上げを受けて、弊社では、日銀が12月に政策金利を1.5%に引き上げ、その後3月にはさらに1.75%程度まで引き上げると予想しています。
FRBやECBと同様に、日銀も、金融環境の引き締まりを予想以上にうまく吸収してきた経済と向き合っています。
もっとも、FRBやECBとは異なり、弊社のストラテジストは、市場が最終的な政策金利の到達点を織り込むうえで、積極的になり過ぎていると考えています。そのため、時間の経過とともに、予想が下方修正される余地があります。
その結果、日本の金利は緩やかな上昇を続ける可能性がある一方で、弊社の為替ストラテジストはなお、一時的なポジショニング要因が薄れれば、より広い意味で円安トレンドが現れると予想しています。
ここまでお話しした3つの中央銀行に共通しているのは、エネルギーショックがインフレをめぐる議論を変えた一方で、成長の底堅さが、政策をめぐる議論をさらに変えたという点です。
したがって投資家にとって、来年は年初に市場が想定していたよりも、政策金利が高く、ドル高の年になる可能性が高いでしょう。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
市場の底堅さは楽観の表れではない
2026/09/21
弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストであるマイク・ウィルソンが、質の高い銘柄、力強い企業業績、株価モメンタムが、強気相場はなお続いているという自身の見方を裏付けている理由について解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日のエピソードでは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、現在進行している景気サイクル半ばへの移行についてお話しします。
このエピソードは9月21日にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
S&P500は過去最高値に近い水準にあります。エネルギー価格が上昇し、2つの紛争が同時に起きており、AIの安全性を巡る懸念が再び大きく取り上げられているにもかかわらずです。一方で、各国中央銀行は金融引き締めを進めています。理論上では、投資家が不安を感じる理由は数多くあります。では、投資家は単に楽観に傾きすぎているのでしょうか。私はそうは考えていません。
ラッセル3000指数構成銘柄の40%超は6月以降、20%以上下落しています。一方、S&P500の予想PERは再び19倍まで低下しており、これは1年前よりも20%近く低い水準です。同時に、中央値で見た企業の利益成長率は15%前後で推移しており、業績予想の修正の広がりも、このサイクルの高水準に近いところまで戻っています。力強い利益成長と同時にバリュエーションが低下していることは、楽観の表れではありません。これは典型的な景気サイクル半ばへの移行そのものです。
この違いは重要です。景気サイクル半ばの相場は、ほとんどの投資家にとって扱いにくいものになりがちだからです。指数は底堅さを保つ一方で、市場の多くの部分は調整することがあります。利益が強さを維持する一方で、バリュエーションは低下することがあります。そして、強気相場が終わらなくても、主導役は入れ替わることがあるのです。
先週のFRB会合は、まさにこの枠組みに当てはまります。25ベーシスポイントの利上げはおおむね織り込み済みでしたので、実際に重要だったのは、ウォーシュ議長がインフレと戦うという自身のコミットメントを実行する意思を示したことでした。直近のコア・インフレ指標は予想より強めでしたが、内訳は一様に予想以上のインフレ加速を示していたわけではありません。
上振れの一部は少数のカテゴリーに集中しており、住居費はなお軟調でした。また、関税転嫁の影響も薄れつつあるように見えます。これにより、FRBは、2022年型の引き締め局面に再び向かっていると不本意ながら投資家に想定させることなく、行動する余地を得たと言えます。
私の見方では、今回の利上げは信認を高める可能性があります。投資家が、FRBはインフレを抑え込むのに十分早い段階で行動していると考えれば、政策金利の引き上げは、長期の資金調達コストを自動的に押し上げるのではなく、不確実性やタームプレミアムを低下させる可能性があります。
しかし、私が懸念しているのは利上げそのものではありません。利益が力強さを保つなら、今後1年で数回追加利上げが行われたとしても、この強気相場が終わる可能性は低いと考えています。より大きな不確実要因は、ウォーシュ氏が率いるFRBが、バランスシート、マネーサプライ、信用の伸びにどのように対応するかです。ウォーシュ氏の考え方は従来、過去のFRB議長と比べて、よりマネタリスト寄りでした。ただし、同氏がそれをどの程度積極的に適用するのか、また委員会の他のメンバーに対してどれほどの影響力を持つのかは、まだ分かりません。これが重要なのは、民間経済がより多くの資本を使用しており、流動性に対して過度に制約的なアプローチを取れば、政策金利そのものよりも大きな意味を持つ可能性があるためです。
これが、私が引き続き質の高い大型株を選好している理由の一つです。高いフリーキャッシュフロー利回り、低い会計発生高、業務効率のファクターが主導しており、従業員一人当たり売上高が高いというファクターも、最近最も強いパフォーマンスを示しているものの一つです。これは、AIの実現を支える企業よりも、AIを導入する企業を選好するという弊社の見方とも、非常に合致しています。
株価モメンタムが消えつつあるわけではありません。ただし、その中身は、質が高く、サービス志向で、資産をあまり持たず、手数料収入を基盤とするビジネスへと変化しています。これは、景気サイクル半ばへの移行期にまさに起こるべきことです。
目先の変動要因としては、エネルギー価格が引き続き重要です。原油や石油製品の価格がさらに大きく上昇すれば、予想される政策金利の経路、長期債利回り、債券のボラティリティに、不健全な形で上昇圧力がかかることになります。また、そのような動きは、中間選挙の季節性により指数が5%から10%調整することが多い時期に起こることにもなります。
目先の最悪シナリオでは、S&P500は7,100付近で取引される可能性がありますが、私はそれを強気相場の中での戦術的な調整と捉えます。弊社のファンダメンタルズに関する見方が変わったということではありません。いずれにしても、私は年末の目標値である8,000に引き続き確信を持っています。
結論として、この相場は、景気サイクル半ばの相場が本来示すべき動きをまさに示しています。バリュエーションは低下し、企業利益が相場を支え、主導役は質の高い銘柄へと移っています。指数だけを見ると落ち着いているように見えるかもしれませんが、個別銘柄のレベルでは、すでにかなりの懸念が織り込まれています。
間違いとなるのは、底堅さを楽観と取り違え、目の前で進んでいるローテーションを見逃してしまうことです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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