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大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/28
いよいよモーニングビジネススクールも最終回です。このモーニングビジネススクールの放送の終わりとともに、私自身も来年3月で、九州大学を退職することになります。
そこで、実際に来年の春から本格的に取り組むことでもありますが、「人生100年時代の生き方と社会の活性化」という話をさせていただきます。
「人生100年時代の生き方と社会の活性化」というのは、高齢化が進む中でも社会は活性化していくということです。国連による2023年版の「世界幸福度報告書」によると、日本人の幸福度は世界で47位でした。これでも昨年の54位から7位上がっています。皆さんは、この結果をどう思われますか。低いと思われますか?確かにあまり自分が幸せだなと日々実感するわけではないですが、それにしても世界的に見て、こんなに低いのです。
もちろん統計の取り方や解釈にもよるとは思いますし、感じ方の違いもあるでしょう。ただ、人生100年時代で、私たちが90代までは当たり前に生きることになったとして、「まだまだ時間があるので、やりたいことができるのは楽しみ」とポジティブに考える人と、「長生きするのは良いけれど先々の生活が不安」と考える人と、どちらが多いと思いでしょうか?恐らく不安に感じる人も少なくないでしょう。何年か前に、年金だけでは老後に2千万円足りないという話もありました。実際に日本の9割の企業や組織では、退職年齢は60歳です。そうなると年金が支給される65歳まででさえ、仕事を探して、その間を繋ぐ必要があります。
そして、人生100年と考えると、60歳や65歳の年齢でも、まだ3分の1が残っているということになります。そこに不安を感じると、幸福度が低いのは当然ではないでしょうか。
一方で、少子高齢化で、日本の人口全体だけではなく、生産人口が大幅に減少することになります。そのために社会的な負担が増し、日本の国力も落ちることが心配されています。多くの人たちが退職する中で、人手が足りなくなるという現象です。そうであれば、退職するシニアの能力活用によって、個人の不安と社会の課題の両方の解消に向けて、大きく転換させられないかということになります。
2018年11月号のハーバード・ビジネスレビューに、「シニア世代を競争優位の源泉に変える」という論文がありました。高齢者を一括りにして、組織や社会に負担という先入観を捨てると、シニアの持つ豊富な知識や経験、調整能力は、組織の優位性にも繋がるという、とても心強い論文でした。但し、シニアが働きやすい勤務体制や環境を整えることが、前提になるということです。もちろん現役時代と同じ体力や持久力を期待するわけにはいきませんが、様々な形でその能力を活かすことはできるのではないかということです。労働力としての人材不足の解消だけではなく、適切な仕組みを作ることで、シニアの能力を前向きに活かすことができるということです。
『Life Shift 100年時代の人生戦略』の著者のリンダ・グラットンさんらも書かれていたことですが、今までの生き方が、「教育と就労と引退後」の3つの段階で構成されていたとすれば、これからのモデルは、マルチ・ステージ、複数の段階になっていくとのことです。現在の60歳や65歳は、昔に比べればはるかに健康なのでは
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/27
<計画よりもまず行動>
新規事業を立ち上げる際には、事業計画(書類)を作成しなければならない。ただ、事業が革新的であればあるほど、過去の成功経験が通用しなかったり、必要な情報が手に入らないことも多い。わからないことだらけなのだ。こんな状況で、単に「一見理路整然と、それっぽく書き上げた」書類にはほとんど意味はない。
従って、アイデアを思いついたら、小さくても良いから素早く実行してみて、そこで得られた結果から更に良い方向に進める方法を考えて試す、という試行錯誤のサイクルを速くことにこそ価値がある。
PDCAループは、PではなくDからスタートし、その結果をCheckしてPlanにフィードバックするActionを大切にするループとして回すほうが重要だ。
<自分独自のものの見方や考えを持つ>
なにかの解決策を導き出すときに、物事を論理立てて考える「ロジカル思考(ロジカル・シンキング)」や、ユーザーの隠れた問題を観察して発見し解決する「デザイン思考(デザイン・シンキング)」が知られている。これはこれで重要だが、それらの手法を駆使してもなお答えが見つからないことも多い。結局、答えは「自分の中」にしかなかったりする。
これからの世の中は、ますます多種多様な情報や製品で溢れかえり、単純な正解がない世界が広がっている。だからこそ、自分なりの「ものの見方・考え」を持つ訓練がとても大切になる。近年は、アーチストが持っているユニークなものの見方をヒントに自由に思考する「アート思考」も注目されている。
自分独自のものの見方や考えを持って山を登って初めて、他に誰もいない頂上から自分だけの新しい景色が見える。
<ネガティブ・ケイパビリティを発揮する>
人間は、様々な社会の状況や自然現象、自分の苦悩の理由を分かろうとする「ポジティブ・ケイパビリティ」と、どうにも答えの出ない、対処しようもない事態に耐える「ネガティブ・ケイパビリティ」の両方を持つ。近年はSNSで瞬時に他人の考えや活動を知ることが出来るので、「ポジティブ・ケイパビリティ」に依存してしまい、拙速で安易な答えに飛びついて満足してしまったり、マニュアル思考に陥ってしまったりする。これは問題の本質に辿り着かず、解決した気になるだけなので問題だ。
従って、ネガティブ・ケイパビリティを発揮して、答えが出ない状況に耐える力を持たねばならない。そのためには、好奇心を持ち続けること、怒りや悲しみといった持続性のある感情を大切にすること、少数派であることを厭わないこと、などが重要となる。
忙しい毎日に押し流されず、簡単に答えが出ない状況に耐える力を持ち、時間をかけて粘り強く自分の問題意識に向き合うことに敢えて時間を割いてみてはどうだろうか。
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/26
今日は最初にグローカルという話をします。Think Global、Act Localという言葉です。放っておくと自分の周りしか見ないで、世界の問題を解決しようという人が出てきてしまい、それは良くないです。Think Globalというのは、世界で起こっていることをそれなりに把握しないと、自分だけではなくて自分の会社の従業員やその家族も困ったことになります。世の中で何が起こるか把握しておかないといけません。それをThink Globalと言います。だからといって世界の問題を自分で解決できるわけがない。Act Localというのは、自分はどうしよう、自分の会社をどうしようと、自分が出来るところでなんとかするということです。ということで、最初にThink Global、Act Localでいかないといけないという話をしてから今日のテーマに移ります。
まず一つ目が米中対立の話です。ソ連が崩壊して以降、アメリカが唯一の超大国でした。30数年で中国がどんどん大きくなって購買力平価でアメリカを超えました。そういう意味ではアメリカと中国が二大超大国の時代に入っています。日本はどうするべきかですが、日本は自由民主主義で、どちらかというと中国よりもアメリカの核の傘の下に入っているということもあり、アメリカの味方をするということですが、中国があまりに大きくなってしまったので、日本企業が中国を撤退することは無理です。工場だけでなくて顧客のいる市場になってしまったからです。そういう意味では中国と戦争する、中国から撤退するというのは無理です。
アメリカはデ・カップリングと言っていました。デ・カップリングというのはアメリカのサプライチェーンと中国のサプライチェーンを分離して、中国に関わらないでアメリカとその友人たちのサプライチェーンだけでやっていこうということです。それは日本企業からしてみれば中国から撤退して、アメリカを中心とするサプライチェーンのみに参加してくれという話です。ところが、日本企業は少し嫌で、EUのヨーロッパ企業も嫌で、アメリカの多国籍企業も嫌でした。アメリカに対してなかなか面と向かって嫌だと言いにくかったので、この間EUがデ・カップリングではなくて、デ・リスキリングでしょうと言ってくれたので、日本はラッキーと内心思っていました。デ・リスキングというのは、リスクをできるだけ回避しましょうという意味です。サプライチェーンを分離するというのはもう無理だということを正面から認めて、出来るだけリスクを回避するということで頑張りましょうという話になっています。
次に、AIや生成AIの話です。今、ホワイトカラーがやる仕事が段々減ってきて、生成AIで更に仕事をとられてしまうのが加速するということが起こりつつあります。今まで日本の企業では個人主義というのはあまりありませんでした。共同体で稟議制で意思決定しましょうというものでした。誰かが稟議を書いて皆で意思決定をするということで、実行するのは他の国と比べてもすごく信頼がおけるといういいところはありますが、なんだか遅い、誰が決めて責任をとらないといけないのかわからないという面もあります。生成AIでかなりの人がこれから仕事を失うということがおき始めていて、そうすると人間が仕事をし続けるためにはどうしたらい
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/25
今回は、「大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか」というトークテーマをいただいています。このテーマについて専門分野の視点からお話しすることになっている訳ですが、正直に申し上げると、非常にテーマが大きいために、何をお話ししたものか考えあぐねていました。しかし、ともかく、このテーマに表れている問いに対する私自身の違和感から話し始めてみようと思います。
まず「私たちは大きな転換期を迎えている」という認識は、今に始まったものではなく、おそらく歴史上のどの時点でも、その時代を生きた人々に持たれていたのではないかということです。どの時代にも、その時代なりの困難というものがあり、その困難さを強く意識する人々によって、今こそこれまでの生き方、働き方を変えなければならない「転換期」を迎えているのだと認識されてきたのではないかと思います。それぞれの時代の困難には、他の時代状況とは異なる固有性が認められるでしょうが、一方では、その質において互いに類似した性質を持つ時代を見出すこともできる筈です。そう考えると、自分たちの直面している困難の重大さを特権化して、今こそが大きな転換期であるとする意識は薄れてくるのではないでしょうか。
私が、こういうトークテーマに水を差すようなことを言うのは、現状の困難さを誇大に宣伝して危機感を煽るようなことは、学者が最も慎むべき行為だと思っているからです。無論、自然現象であれ社会現象であれ、学者は自らの研究対象に何らかの重大な変化の兆候を発見することがあれば、それをいち早く社会の構成メンバーに伝えて、必要な行動を促すべきです。しかし、それが重要な義務であればこそ、さしたる根拠もなく徒に社会的な注目を集めるような言辞を弄んではならないと思うのです。そうでなければ、学者が本当に重大な危機の兆候に気づいた時に警鐘を鳴らしても、社会に信用してもらえなくなるでしょう。
例えば、近年の状況を、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとって「VUCAの時代」と呼ぶ人たちがいます。VUCAという語は1990年代に米国で生まれた軍事用語として知られていますが、それが近年ではビジネスを取り巻く予測困難な状況を表す言葉として使われている訳です。実際、このような言葉は、新型コロナウィルス、激甚災害の多発、ロシアのウクライナ侵攻といった予測困難な要因が経営環境を変動させてきた状況を経験した企業にとって受け入れ易いのかも知れません。しかし、こうした環境変化を「VUCAの時代」などと呼んでみたところで、困難の本質が見えてくるわけでもありませんし、せいぜい情報収集能力を高め、迅速な意思決定を行うことがこれまで以上に重要だという程度の凡庸な結論が導き出されるだけでしょう。
ただ、実際に現在、自らの関わっている企業経営が何らかの事情で転換期を迎えていると認識されている経営者やビジネスパーソンはおられる訳です。そうした認識をお持ちの方々のご参考に供するためは、今日の日本企業が直面している一般的な経営課題とその解決策についてお話しすると良いのかも知れませんが、既に私は最近の放送の中で、日本的経営を
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/21
今日は私が考える「私たちは、これからの未来をどう生き抜くか。」についてお話ししてみたいと思います。私のキーワードは、「自分らしさ」です。
リスナーの皆さんの「自分らしさ」って、何でしょうか?すぐに答えが出る方もいらっしゃると思いますが、「ちょっと待てよ。そんなこと急に言われても」と戸惑う方も少なくないのではないかと思います。この質問を企業に勤めるビジネスパーソンにお聞きすると、実は口ごもる人が少なくありません。なぜでしょうか。
実は、会社組織では「自分らしさ」を発揮することが求められていないからです。「自分らしさ」を発揮するのではなく、例えばマニュアルや規則に書いてあることをしっかり守ることが求められます。会社の期待通りに行動することが求められるわけです。その結果、職場では、「自分らしさ」を考えることや、ましてや「自分らしさ」を発揮する機会は本当に少なくなってしまいます。この意味で、組織というのは大変怖い側面を持っています。「朱に交われば赤くなる」というわけです。
皆さんが何か新しい企画を考える機会があったとしましょう。新しい企画なので、自由な発想で自分らしい企画を考えてよいかというと、必ずしもそうではありません。上司や周りの同僚が納得するような案を考えることが求められるからです。社内から異論・反論が起きないような答え、言ってみれば無難で、誰もが「確かにそうだよな」という企画案こそが、「良い」企画案とされてきました。そうした案を早く作ることができる人間が「できるヤツ」と言われてきました。そうした「良い案」を作らなければならないので、「自分らしさ」を考える暇などあるわけがありません。つまり会社には、「自分らしさ」を忘れさせる力が動いているといってもよいと思います。多くのビジネスパーソンが口ごもるのは、このようなわけがあるからです。
さて、今日なぜこの話をしているかというと、これからの時代は、これまでとは大きく状況が変わって、「自分らしさ」がとても大切になると思っているからです。
最近、新しいAIである、ChatGPTが大変話題になっています。皆さんの中にも使ったことがある方もいらっしゃると思います。ChatGPTは世界中の情報を集めて、論理的に分析した結果をわかりやすい日本語でアウトプットしてくれます。ChatGPTの強みを一言でいうと、誰もが納得する答えを出す力と言ってもよいと思います。そして、これからの時代は、誰もがこうしたAIの力を自由に使えるようになります。そうすると、これまで会社で求められてきた誰もが納得する企画案は、AIが作ってくれるようになるのです。
では、一体人間は何をすればよいのでしょうか。これを考えるためには、AIにはできないことを考えることが一番です。AIにはできないこととは何でしょうか?AIはなんでもできてしまいそうですが、実はAIは企画を作ったり、回答を出すことはできますが、それを実行したり、実現することはできません。
例えば、これからの外食産業を勝ち抜いていくためには、こういったカフェがよいだろう、という答えをAIは出すことはできますが、カフェを実際に作り上げていくのは誰でしょうか?それは人間です。そして、カフェを創るためには、多くの人がか
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/20
テーマに対する私の考えは、「組織の中に様々な国の人を受け入れて、一緒に働いて、議論をすることを通して、グローバルスタンダードな自己主張、リーダーの振る舞いを学んでいく」というものです。なぜそう考えるのかを順を追って説明します。
欧米、特にアメリカには「竹の天井(bamboo ceiling)」という言葉があります。欧米社会、特にアメリカ企業では、アジア系がリーダーに昇進しにくいという状況を表す言葉だそうです。少子高齢化が進んで、日本企業も日本人も、これからはどんどん海外で活動していかないといけないのに、アジア系が出世出来ない「竹の天井」があるというのは、困った問題です。
でも一口にアジア系といっても「竹の天井」によって出世が出来ないのは、東アジア系、つまり、日本・韓国・中国の人材だという事も、ごく最近分かってきました。
マイクロソフト・Google・スターバックス・シャネル・フェデックス、これらの企業に共通する特徴は何でしょうか。上場しているとか、世界でかなりの利益を出しているといった共通点はありますが、これらの企業のトップ(CEO)は、インド出身者です。マイクロソフトのCEO、GoogleのCEOがインド出身者というのは、最近ではかなり有名です。でも、アメリカンなイメージが強いスターバックス、フランスの高級ブランドのシャネルも、リーダーはインド出身者です。
アメリカの企業の中でも特に格付けの高い、スタンダード&プアーズ500社の過去8年間のCEOを調査した研究がありますが、インド系がCEOになる確率は、白人よりも高いそうです。ただその一方で、同じアジア系でも東アジア、つまり、日本・韓国・中国の東アジア系がCEOになる確率は、白人よりも低いそうです。
しかし、人的資本という観点では、アジア系は白人を上回っているということは、結構以前から知られています。アジア系は学歴が高い、所得水準が高い、失業率が低い、犯罪率が低いなど、アジア系の人々が優秀であることは、様々な調査で明らかになっています。でも、リーダーにはこれまで白人が選ばれてきました。ただし、最近はインド系のリーダー達の活躍もめざましいのです。ではなぜ、東アジア系だけがリーダーになりにくいのか。マサチューセッツ工科大学(MIT)のジャクソン・ルー助教授が詳しく調べています。どうしてだと思いますか。
ジャクソン・ルー先生達は、英語の流暢さには差が出ないような工夫をして調査をしています。つまり英語力以外の3つの要因を見ています。まず「偏見」、つまり民族差別です。これに注目しました。分析の結果、何とインド系は東アジア系よりも強い偏見を受けているという事が明らかになりました。多くの白人達は、インド系に偏見を持っているにもかかわらず、リーダーを選ぶ際には、東アジア系よりも、インド系を支持するということも分かりました。次に注目した第2の要素が「モチベーション」。つまり出来るだけ一生懸命働こうとするかということです。こういった仕事への意欲を調べたところ、東アジア系とインド系には、差が無いという事が分かりました。最後に注目したのが「自己主張」。これが大きく違っていました。「適切な時には自分の意見を述べ、みんなと
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/19
今回は、大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くかというテーマで話します。転換期にあるということなので、今後どう我々が生き抜いていくべきか中々将来見通せません。そうした中で、どういうふうに我々が進んでいくかということですが、ポイントが2つあると思います。
一つ目のポイントは我々よく知の深化と言うものです。掘り下げて深めるという意味の深化です。簡単に言うと、得意を伸ばすこと、やはり得意分野を持っている方や組織は強いと思います。例えば、日本のものづくりを源流とするリーン生産方式というものがあります。リーンというのは無駄を排した贅肉のないという意味です。ですので、例えば生産過程において余計な在庫を持ちすぎず、お客さまからの注文に対して滞りなく生産を回していくような生産システムのことをいいます。このデジタルの時代において、データから情報を引き出して生産の流れを制御する上ではリーン生産方式は非常に有効に機能すると私は考えています。ただ得意を伸ばす上で重要なポイントがありまして、それは得意とすることの根底にある本質を見極めることです。先程申し上げた日本の生産システムでいいますと、例えば、「かんばん」とか「かいぜん」とか「あんどん」といった言葉は既に英語化しているといっても過言ではないほど海外で通じます。但し「かんばん」にしても「あんどん」にしても生産管理するための手段に過ぎません。日本のものづくりの根底にあるのは生産の上流から下流に向かって付加価値を生むようなスムーズな流れをつくっていくことにあります。ですので「かんばん」や「あんどん」というのは手段に過ぎないわけですからそれそのものはどんどん変わっていきます。ただ一方で、スムーズな流れを作り込んでいくという本質自体はそうそう変わるものではありませんので、我々が伸ばすべきなのはその強みの本質となるスムーズな流れづくりという部分にあります。
もう一つのポイントは、得意を伸ばすということは重要ですが、一方で今得意なことにこだわりすぎるのもあまりよくない、そこで今後生き抜く上での第二のポイントとなるのが得意分野以外に目を向けていくことです。これ言いかえますと、知の探索というものです。新しい分野にこの知識を広げていこうという姿勢です。現在の経営学では得意を伸ばすこと、すなわち知の深化と、新たな可能性を探ること、すなわち知の探索、この両立を図ることが重要だと考えています。これをいわゆる両利きの経営といいます。
但し、自分の得意分野以外のことも全て自分で勉強して身に付けるというのはものすごく難しいことです。そこで重要となるのが2種類のネットワークです。一つ目はいわゆる社内のネットワークでして、社内には色んな得意分野を持った人達がいます。ですので、自分が不得意なことについてはそれを得意とする人に聴いていけばいいのです。そのときに誰が何を得意としているのか、これを知っていないと誰に助けを求めればいいのか分かりませんので、そこがポイントになってきます。このように誰が何を知っているのかを知っているということを、経営学ではトランザクティブメモリーといいます。このトランザクティブメモ
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/18
大きな転換期を迎えている今、私たちがこれからの未来をどう生き抜くかというテーマについて、リスクマネジメント、リスク学と学問分野では言いますが、これと企業倫理学の観点からお話していきます。私の研究は企業不祥事、特に産業事故の防止方法、簡単に言えば、企業や社会にとっての災難をどう防ぐかという内容になります。やはり災難を避けたいというのは人間の本来的な願いです。ですので、この研究分野はかなり歴史も長く、今でも多くの方が研究に取り組んでいます。
これだけ長い時間にわたって研究されていると、必然的に分析される企業不祥事や事故のケースというものは、時代の変化とか様々な社会の転換を踏まえたものになっています。例えば、企業不祥事で最近よく聞く代表格といえる個人情報の漏えいなどをみても、時代の変化や社会の転換が色濃く出ています。例えば、かつて個人情報の保護という意識そのものが低かった時代では、そもそも企業から顧客の名簿等が少し流出してしまったくらいでは企業不祥事にすらならなかった時代というものがあります。それが2000年以降、個人情報の保護の意識が高まり、これが企業の不祥事と認識されるようになった2000年代の初期は、この個人情報を会社の内部の人間が記録媒体や名簿そのものを持ち出して不祥事に至るというケースが主流でした。さらに時代が進んで2000年代の紛失や持ち出し事件を受けて、個人情報の保護または管理が厳しくなった2010年以降では、今度は外部から組織的に不正アクセスをして企業の個人情報の漏えい事故が多く発生するという状況になっています。そして、このような外部からの組織的な個人情報の流出を試みたアクセスが行われるようになってから、個人情報の流出する件数もかなり莫大となっています。
何が企業不祥事となるかということも含めて企業不祥事のケースは時代や社会によって変化しているので、どのように気を付ければいいのか、そして、どのようにそれに対応をすればいいのかも変わってくると言えます。ただし、面白い点が1つありまして、このように具体的な事例は異なるものの、不祥事の本質的な要因やメカニズムについては、あまり大きな変化はないのではないかと近年の研究は言っています。実際にほとんど変化がないと指摘する研究者もいます。確かに、過去数十年の企業不祥事の原因や要因を分析して調べてみると、必ず組織風土の問題という言葉やコンプライアンス意識の低さという言葉が時代を問わず出てきます。また、驚くべき事に100年以上前の企業不祥事や産業事故の発生メカニズムとほぼほぼ同じようなメカニズムで発生した現代の企業不祥事や産業事故のケースも少なくありません。例えば、利益の追求を最優先して安全を軽んじて結果として製品事故や産業事故に至るという発生メカニズムを持った企業不祥事のケースは、実は時代や社会を問わず確認する事が出来ます。ですので、やはり人間の本質というものは変わらない。そして、企業不祥事もやはり人間が起こすものなので、その本質的な要因やメカニズムには変化がないと言えるのかもしれません。
では、このような事実から大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くべきかといういただいたテ
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/14
今回は、大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くかという共通のテーマで話します。マーケティングの観点からいくと、今回のお話の重要なキーワードは、ブランド力と海外展開のこの2つだと考えています。21世紀になってからもう20年以上経ちます。これまでの20年間、世界規模で生活にしても政治経済にしても大きな変化が起こってきました。その間、色々な企業が競争を繰り広げて、新しい技術やサービスが普及してきました。ではクイズを出したいと思います。21世紀になってから、株式市場で最も高いパフォーマンスをあげた企業はどこだと思いますか。ヒントはニューヨーク証券取引所で上場しているアメリカ企業です。実は飲み物をつくっているメーカーで、モンスタービバレッジという米国企業です。モンスター・エナジーというドリンクをつくっている会社です。このモンスター・エナジーをつくっているモンスタービバレッジという会社ですが、カリフォルニア州のコロナという所を拠点としている企業です。この企業は2003年に株式公開して、現在元の値段から11万%も株価が上昇したそうです。これは今世紀に入ってから他の全てのアメリカ企業を上回っているそうです。しかも毎年少なくとも9%以上の売上を伸ばしてきています。エナジードリンクは競合がたくさんあります。レッドブルもありますし、日本だとチルアウトやリポビタンD、そんな競争の中でもお客さんはパーティをしたり元気になりたいと思ったりした時にモンスター・エナジーを選びます。
モンスター・エナジーから少し離れますが、第二次大戦後から同じくニューヨーク証券取引所で50年以上上場を続けている中で業績の良いベスト4の企業があります。それはコカ・コーラとエクソンモービル、あとはクラフト、今のクラフト・ハインツ、レイノルズ、今のブリティッシュ・アメリカンです。これらの長くビジネスを続けてきてかつ多くの利益をもたらしてきた企業には共通点があります。それはモンスター・エナジーと同じく、どの企業もブランド力を磨き続けてきた企業達です。つまり飲み物にしろ、食べ物にしろ、自分達の得意分野に集中して、品質とそれに基づいた消費者からの信頼を高めて消費者に対して確固たるブランドを築き上げてきた企業達です。
ウォーレン・バフェットという投資家の名前を耳にすることがあると思います。最近、日本の5大商社に大きな投資をしてよく報道されている人ですけれど、この人の長年のパートナーを務めたチャーリー・マンガーという伝説的な企業家がいます。このマンガーさんが言うのは、ブランド力のある企業とそうでない企業の違いというのは、他よりも10セント高くてもお客さんが選んでくれるかどうかだということだそうです。これはとても小さな差に見えますがとても重要です。というのも、今までご紹介した企業はブランド力の高さ以外に共通していることがあります。それはどの企業も海外に市場を広げる努力をしてきたということです。先程話した10セントの差、15円の差ですが、金額は確かにほんの僅かです。しかし、海外展開して自分達の商品を販売する市場がどんどん広がれば、そういった僅かな違いが積もり積もって大きな利益の差になっていき
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/12
私は今イギリスにいるので、ZOOMで繋いで話をしています。イギリスは湿度が低くて快適です。
今日は「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」というテーマを異文化コミュニケーションという立場からお話します。日本は今、技術的にも組織的にも色々な問題を抱えていますが、私の専門分野である異文化コミュニケーションの立場から、日本の伸びしろを左右出来るのではないかと思っています。「異文化交流の促進」が今後キーワードになるのではないか。日本は土地が狭い島国で資源が乏しいとよく言われます。そういう不利な点を今までカバーしてきたわけですが、昨今は色々と難しいところがある。そこで突破口になるのが、国際化、グローバル化、それを果たす為の異文化交流ではないかなという気がします。
どういうことかというと、イギリスに来て分かるのですが、イギリスは人種的にもそうですし、ビジネス的にも色々な幅があり、日本に帰ってみるとまだまだだなと思う事が多いです。例えばケンブリッジには色々な国の料理屋やスーパーマーケットがあります。韓国系のスーパーマーケットでイギリスの資本でOseyoというところがあって、大きな店構えをしていますが、日本食のスーパーはまだありません。人口10万人程度の町ですからなかなか難しいのかもしれません。そのかわりお寿司屋とかはイギリスの資本でだいぶ作られていますが、日本食はブームだと聞くわりに、日本から乗り込んできている企業は今まであまりありません。
今回コロナ禍が明けて久しぶりにイギリスに来てみたら、大阪資本の杵屋というところが日本風のうどん・お弁当店を出していて、ケンブリッジのように人口が少ない所にも来ているのだなと思いました。ようやく腰が上がったという事でしょうが、まだこれが当り前にはなっていないので、今後は海外展開がキーになるのではないか。そうすると異文化交流というものも鍵になるというストーリーではないか、と思っています。
ではどうしたらいいか、ということですが、一部の人だけ異文化交流が出来ればいいということではなく、山の頂を高くしようとすると、裾野も広くないといけないので、僕らがみんなで異文化交流や外国に対するマインドセットを変えていかないと、掛け声だけではなかなか突破できないと思います。そうすると我々が出て行く時の準備もそうですし、国際化というのは相互ですから、我々が受け入れる為にしないといけないことというのもたくさんあるわけで、そのあたりがどれくらい出来るかが鍵になると思います。
今日は細かいことを言う時間はありませんが、項目だけ挙げると、出て行く側としてはもっと海外に出なさいという話です。海外に出るための学生に出す奨学金を増額すること、あるいは企業が海外研修派遣にもっと力を入れること、企業が語学教育にお金を出すことです。具体的には、最近は多いですが、修学旅行は是非海外に行って、色々な社会見学に使って欲しいです。学生さんが1年ぐらい前から行き先の検討や調査を行い、自分達の手作りで関われるような修学旅行にしていくということから始めたらどうか、という提案です。
今度は住みやすい日本、受け入れ側を作るということですが、
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/11
今月のモーニングビジネススクールはスペシャルバージョンです。
「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」という共通のテーマでお話ししています。
テーマが大きいため、具体的に3つ取り上げます。一つは「労働力不足の時代」、もう一つは「人口減少の時代」、そして三つ目は「米中対立の時代」という3つの観点からこのテーマについて考えます。
まず「労働力不足の時代」について考えてみましょう。
この労働力不足の時代に私達はどう生き抜いていったらいいのでしょうか。バブルが崩壊してから日本経済は長期的に低迷していたため、労働力が余り「失業」の問題がありました。ただ、経済が低迷している間にも、大きな変化が少しずつ生じていたわけです。それは「少子高齢化」です。高齢者が長生きするため総人口は減少しませんが、現役世代が減少しています。つまり、使う人は減らないにもかかわらず、作る人が減っていくということがずっと続いていたわけです。10年程前にアベノミクスで景気が回復しましたが、突如労働力が不足するようになりました。景気が回復したといってもそれほど経済成長率が高くなったわけではありません。急に労働力が不足したことで多くの人が驚いたわけです。これは長い間に少しずつ労働力余りが減ってきていたことに誰も気付いていなかったことに加えて、アベノミクスによって突然労働力不足が露呈したためです。その後も景気は一進一退を続けていますが、少子高齢化は着実に進行し、10年前よりさらに労働力が不足しやすい経済になっているわけです。労働力不足は労働者にとっては素晴らしいことです。労働力が足りないわけですから失業してもすぐに次の仕事が見つかりますし、賃金も上がっていくだろうと期待出来るわけです。日本経済にとっても労働力不足はいいことです。省力化投資をするため、日本経済が全体として効率化していくわけです。全ての飲食店が自動食器洗い機を買えば、飲食業が効率的になります。もちろん、企業にとって労働力不足は辛い時代です。高い賃金が払えない企業は労働者がどんどん辞めてしまいます。経営者の方には効率的な経営を今まで以上に心がけていただく必要があり、積極的に賃上げをして、ライバルから労働力を引き抜いてくるといったことを心がけていただく必要があります。賃金が上がるということは、賃上げ分を売値に転化する企業が増えるでしょうから、消費者物価が上がる時代になりそうです。銀行預金はインフレが来ると預金が減ることはありませんが、預金で買えるものは減ってしまうため、「預金が目減りする」と言いますが、それは困るため資産を全部銀行に預金しておくのではなく、一部はインフレに強いもの、例えば株や外貨などを持っておくことも検討してみたらいいかもしれません。
次に「人口減少の時代」について考えてみましょう。日本の人口は確実に減っていきます。しかも大都市の人口はそれほど減少せずに地方の人口からどんどん減っていく傾向があるため、少数の高齢者だけが住む村が増えていく可能性が高いと思います。そうした村は、店の採算が取れずに閉店してしまったり、医師が不足したりと生活が不便になっていくことが懸念されます。一方
大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか
2023/09/07
本当に世の中が大きく変わるときに私たちが何をしなければいけないか。それは、変化に応じて私たち自身が変わり続けなければならないということです。自分達が変わるということは、学ぶということです。新しい情報を自分の頭の中に取り込んで、もしくは新しい今までしていなかった経験から新しいことを考えて、自分達の行動を変えていかなければなりません。
最近の例で言えば、本当に毎日気候変動の話やESGという言葉を聞かない日はありません。ビジネス業界も「環境」と言うようになりました。これは、20~30年前には全く無かったことです。環境の変化を理解し、企業行動を一社一社が変えていかなければいけないということを学び、私たちの行動が変わりつつある、変わってきた証だと思います。
こういうパターンで世の中に対応していく、もしくは出来れば今の状況を少しでも良くする方向に向かっていくことが、今後必要になってくると思います。ただ、冷静に考えてみるとこれは非常に大変です。一個人として考えてみても、例えばこれからは人工知能の時代です、生成AIが出て来たからChatGPT。デザインが重要。グローバル化だから英語は最低限必要でこれからは中国語も出来ないとねとか。あらゆることが次から次へと出て来たときに、とても一人では出来ません。
それぞれの人に、目の前の現実の問題があります。そうすると、そういうことがわーっとあれもこれもと言われると、やっぱり人間ってもう無理だなと思うと逆にやる気がなくなってしまうことがあると思います。でもその時に思い出していただきたいことは、あなたは決して一人ではないということです。例えば、英語は出来るけれど中国語は出来ないという人がいたら、中国語を使いたいときには中国語の通訳の人を連れてくればいいのです。最近は機械が同時通訳してくれるようなものも出来つつあります。テキストであれば、それこそChatGPTに英語を打ち込んで中国語に変換してもらうこともできるわけです。極論かもしれませんが、もはやビジネスのことだけを考えるのであれば、外国語を勉強するニーズは実は低くなってしまうかもしれません。AIの力を借りて、自分のやれることを広げていくこともできるわけです。
それゆえ、私は、やはりこれから先の大きな変化を乗り越えていくためのキーワードは、「人的ネットワーク」だと考えています。。時代が変化し、どんどんAIを活用する時代になってきたけれども、結局は人と人とのつながりに戻ります。例えば、アナウンサーという仕事は私には出来ませんが、そういうことをやりたければ「○○さんにお願いしよう」というネットワークがあれば、やれることの幅が広がります。中国語が出来ないのであれば、中国語のいい通訳を連れてくればまたそこでやれることの可能性は広がります。結局、世の中が変わり、どんなに複雑化しても、今ある課題を解決するために必要な人といかにつながって、お互いに信頼し合って良い物を作っていくことが出来るかということが大切なんです。例えば、会社単位でみると今までは全部自社でやろうとしていたことも、「あそこと組めば出来る」とここ10年くらいでスタタートアップと大企業のコラボや、オープンイノベーションなど、自分の得
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